「海よ」

---------耳元で、しきりに風が鳴っている...
まだ冷たく、たっぷりと潮を含んでいる………
...波は音を立てて砕け、そして勢いよく退いていく…

白く細かいしぶきが眩しく光る......
辺りには人影もなく、広い入り江の波打ち際を低く飛んでいた
カモメが遠くに見える灯台の方へ飛んでいく…

一面に輝いた海が、キラキラと霞んでいるように見える静かな海…
そんな海は色んな顔を見せる。。。
晴れて風もないのに、海岸に大きな波を打ち寄せる。。。

夕暮れ近くになると、斜の光線を受けた静かな海は、
色の褪せた鈍い光沢を放つ...

... 遠くに見える灯台......
ずんぐりと黒く、ちょうど鐘をすっぽりと伏せたような形をしている。

日が沈み… 薄い残照の中に青みが流れる... 鐘の取っ手の部分にオレンジ色の
ライトが灯り、それがゆっくりと回り始める… 灯台の回る灯りが夕暮れの中、
辺りを照らし始めていた.........

... 思春期の頃、泣きたい時は、いつも夕暮れの海に向かって語りかけていた...
そんな私も、まだ幼なかった頃は、夜の海がとても怖かった...

いつの間にか、そんな海の声を怖がらなくなったのは
いつ頃からだろうか...