「最愛」
 
...あの頃は今とは違い、まだ携帯とかスマホがない時代。
ポケベルさえ一般に普及する前の時代は1984年頃だった...

私は横浜港に来ていた。大好きだった貴方があの人と乗り込む船が出航する横浜港。
みなとみらい地区は祝日ということもあってカップルや家族連れなど多くの

人々で賑わっていた。貴方があの人と二人でクルーズ船で船旅に出ることを
私にこっそり友人が教えてくれた...

貴方とあの人が乗船する豪華客船クルーズ号は船内の部屋の電話にメッセージランプが
点灯し伝言を受け取れる仕組みになっていることを知る。一番好きな貴方。
貴方以外には考えられない... そして、私は覚悟を決めた。

−−−−−−−−− メッセージをお願いします ーーー

「ワタシハ他ニ好キナ相手 沢山イマス ダカラソノ方ヲ 
                          幸セニシテアゲテクダサイ」

        ・・・ 今、出てゆくあの船に ・・・

豪華客船の出航... 次々と船内から紙テープが投げ込まれる −−−
船とデッキと岸壁を結ぶ色とりどりの紙テープ---------

デッキの正面の客船ターミナルのテラスには多くのお見送りの方々がいた。
−−− 貴方とあの人の姿を確認した! −−− 

誇らしそうな貴方と愛されても相応しいと思える綺麗なあの人が...
---------私は物陰からこっそりと見つめていた。

私の心は張り裂けそうだった。二人の姿をつぶさに見てしまったからか、
---------涙が止まることなく頬を伝わった...

大好きな貴方があの人と仲良く楽し気にしているシーンは私には耐えられなかった。
彼と過ごした時間が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇って来る−−−

あの人がデッキに出て、潮風にそよんでいるうちにそっと点いたブルーのメッセージランプ…
――――――――― " 貴方の落ち着かない行動を見て分かった! " ―――――――――
      −−− 送った伝言は電光掲示板に灯されたようだった −−−

−−−豪華客船クルーズ号は汽笛を鳴らし………
         多くの人々に見送られ、ゆっくりと...
                 港をは離れ出航していった −−−−−−−−−