ある二人の男が立って話している。訥々と喋っているのか、のべつまくなしと話しているのかはわからない。二人の名はわからないが、男だ。特徴はあるのかも知れないが、模糊としてわからない。なぜ男とわかるのかも、わからない。
男たちの立っている、埃に煤けた無表情な道には、無機質な壁がそびえ立っていた。頑強で、高く、それでいて灰色で無機質な壁。悲しみだとか喜びだとか、そうしたものを一切排斥したような壁だ。
壁のわきには、暗渠へと続く用水路が流れている。水は澄んでいるとも汚れているともつかないが、灰色に映った。
おおよそ、この壁の辺りには澄明な光やら赫奕とした光もないし、莞爾と笑う人間もいなければ、それを磊落に笑う人間もいなかった。
男の背の高い方が喋った。
「この壁に色を塗ったらどうかな?」
低い方が続く。
「いや、どうなのだろう。この場に色は似合うのか」
「わからないけれども、何となくね」
男たちもまた、色のないという形容が似合った。道行く人々も色がない。無表情だ。顔に色がないといっても誇張でないように、皆なにかを目指して歩いている。歩いていないのは、二人の男だけだった。