毎日新聞

時の在りか
愛とは被曝し合うこと=伊藤智永

 原発の西45キロ、滝桜で知られる三春町で生家の禅寺を継ぐ芥川賞作家、玄侑宗久さん(61)。震災から7年かけて書き下ろした最新作「竹林精舎」(朝日新聞出版)は、古里でもない福島の放射線量が高い山寺に、20代の男女が移り住むまでの恋愛物語だ。

 もちろん若者たちも苦悩する。行きつ惑う小説の中ごろに

 「愛し合うって、被曝(ひばく)し合うことだよね」

 というか細いつぶやきがあり、読後も余韻を引く。

https://mainichi.jp/articles/20180303/ddm/005/070/027000c