人間にまで値札 外国人労働者拡大の危うさ
堤未果 国際ジャーナリスト
2018年11月15日
ttps://webronza.asahi.com/politics/articles/2018111400002.html

 「安倍政権としては、いわゆる移民政策をとる考えはありません」
 総理の言葉と裏腹に、日本政府は今、明らかに「移民政策」を猛スピードで推し進めている。
 2018年11月13日。衆議院本会議で外国人労働者の受け入れ拡大を目指す「入国管理法」の審議が開始された。

 ニュースを多角的に見るもう一つの方法は、資金の流れを見ることだ。
 法案骨子によると、外国人労働者と直接雇用契約を結ぶ企業のほか、政府が税金から予算を入れ、支援計画の
作成・実施を国から請け負う「登録支援機関」なるものがある。例えば、こうした一連の移民拡大政策を主導している
政府有識者会議(国家戦略特区会議、経済財政諮問会議、規制改革会議など)の主要メンバーである竹中平蔵氏が
会長をしている総合派遣ビジネスの株式会社「パソナ」もその一つ。登録支援機関である同社のグローバル人材部門は、
アジア10カ国22拠点で外国人向けの就職相談窓口を精力的に展開している。
 ニュースを点でなく面で見る三つ目の方法は、世界の動きと照らし合わせることだ。2018年12月に発効予定のTPP11や、
日本政府が締結を目指すRCEPなどの国際条約を前倒しで検証すると、何が見えるだろう?
 TPPの最大目的は、締結国ブロック内での「人・モノ・カネ」の自由な移動だ。2015年4月。かつてクリントン政権で
政策顧問を務めた共和党の政治評論家リチャード・モリスは、TPP条約を「大量移民をもたらす条約」だとして警鐘を
鳴らす論考を発表した。
 「TPPの条文の中には、移民規制を無効化し、締結国間の労働者に自由な移住を認める内容の項目が盛り込まれている。
 高度人材が中心になるかのように書かれているが、よく読むとそれ以外の労働者の移住も認められるような解釈も可能だ。
 批准すればEU創設時と同じパターンで、米国議会は無制限の移民流入に歯止めをかけられなくなる。そしてあっという
間に1920年代以前に逆戻りしてしまうだろう」
(続く)