外国人材活用の条件(上) 低生産性企業の温存 避けよ
安里和晃 京都大学准教授
ttps://www.nikkei.com/article/DGXKZO42299930R10C19A3KE8000/
 また斡旋料以外にも、農村ブローカーへの支払いや、日本語教育・研修名目の費用徴収、受け入れ企業の接待費用
(ベトナムなど)が加わるため、労働者負担が100万円を超える事例も珍しくない。そして皮肉にも、労働者の斡旋料負担が
高いところほど、礼金や歓待を受ける受け入れ企業の人気が高い。外国人材を受け入れている台湾でも全く同じ現象が
起きている。

 この10年間、技能実習生を受け入れている企業のうち、7割以上が何らかの労働基準関連法令に違反している(厚生労働省
調査)。違反が常態化している現状は、技能実習生が経営の苦しい業態や国際競争力の乏しい業態に多く雇用されていること
を示す。つまり労基法を犯さなければ維持できない業態なのである。
 外国人を雇用する企業の一部は「国際競争力の低下→資本集約化を抑えた低賃金雇用→国内労働者の忌避と外国人の
雇用→一層の資本集約化の忌避」といった悪循環に陥っている。米国ではこうした状況を「スエットショップ化」と呼び、劣悪な
労働環境と搾取的な雇用を形容する。
 前述の聴取票によれば、失踪した技能実習生の7割は低賃金が原因だ。つまり高い斡旋料と低賃金が失踪と犯罪を生み
出す社会環境要因となっている。スエットショップ化を防止して生産性を高めるという経済的観点からも、人権の観点からも
評価できない。
 なお、台湾やシンガポールでは、外国人労働者を雇用する際に、雇用主は雇用税を支払わなければならない。あえて外国人
雇用を高コスト化することで、搾取的雇用を防止し、生産性向上に向けた企業努力を優先させている。
(続く)