Voice 2019年3月号
外国人労働者の導入はなぜ誤りなのか 墓田 桂
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 新制度が対象とするのは、介護、建設、ビルクリーニング、宿泊、外食などを含む14業種である。労働条件に課題の
ある業種と重なり合う。こうした業種には次第に日本人が寄り付かなくなり、代わりに外国人が仕事を担うようになる。
仕事を奪い合うというよりも、日本人労働者が外国人労働者に置き換えられていく。産業のあり方も変わるだろう。
   …(略)…
 新資格との関連では、外国人労働者の滞留も考えておかなければならない。特定技能一号の労働者が在留資格の
失効後にも日本に滞留するとしたら、安価な労働力が提供され続けることになる。労働市場のみならず、社会の分極化
も進んでいく。日本にとって望ましい流れではない。
 移民がもたらす経済的な影響を考える上で、ジョージ・ボージャスの『移民の政治経済学(We wanted workers:
Unraveling the immigration narrative)』は示唆に富む。

 移民政策が勝者と敗者を生むという指摘は的を射ている。移民政策は雇用市場のグローバル化にほかならない。
そこには「棄民」という側面さえも見い出せる。国内産業を持続させるためとはいえ、国は自国の労働者を犠牲に
しながら、労働市場を開放し、安価な労働力を外国から調達する。移民導入に伴うさまざまな費用は国民に回って
くる。恩恵を受けるのは安い労働力を手にした経営者と所得が増える移民の側だ。多くの国民は割を食う。
 改正入管法に伴う措置にもこうした負のパターンが見てとれる。
 外国人労働者の生活支援として、行政の多言語化ワンストップ型の相談センターの増設など、さまざまな措置が
とられる予定である。約224億円が計上された。外国人労働者を導入する以上は必要な措置であるに違いない。
だが、その費用は国民の税金で賄われる。目的税化して、恩恵を受ける雇用者に負担させるという発想は政府には
なかったようだ。…(略)…
   …(略)…
(続く)