軽くみた少子化、対策の好機を逃す
平成の30年 高齢化先進国(6)
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 2004〜06年に内閣府参事官として国の少子化対策を担う増田雅暢氏は81年に厚生省に入省。当時は少子化担当ではなかったが
「今振り返れば牧歌的な対策。人気歌手を動員し、キャンペーンを張れば出産が増えると少子化を軽くみていた」と指摘する。
     …(略)…
 最初のベビーブームは終戦直後。このとき生まれた団塊世代が結婚・出産の適齢期を迎えた70年代前半に第2次出産ブームは
起きた。そしてその団塊ジュニア(71〜74年生まれ)が適齢期を迎えればやがて3度目のブームが来ると踏んでいた。
 将来推計人口では出生率の見通しが甘く、00年代前半まで下方修正を繰り返す。甘い期待は外れ、平成に入って間もなく、
バブル経済が崩壊。経営難に陥った企業は新卒採用を絞った。学校を卒業しても正社員になれず、若者世代の非正規化が進んだ。
 団塊ジュニアはそのあおりを真正面から受けた。中京大学教授の松田茂樹氏は「非正規雇用だったり正社員であっても収入が
低かったりした男性は結婚できなかった。雇用劣化が未婚化を促し少子化に拍車をかけると当時の政府は見抜けなかった」と説明する。
 出生率低下に歯止めがかからず、政府も90年代後半にようやく本腰を入れる。
     …(略)…
 企業の両立支援が整い、出生率も05年の1.26を底に回復傾向を示した。ただ、いまだ待機児童が解決できていないなど積み残された
課題も多い。出生率はここ数年は横ばい。出産数の減少はさらに深刻だ。…(略)…
 増田氏は内閣府参事官(少子化担当)を務めた2004〜06年に「団塊ジュニアが出産期にいる10年までが最後のチャンス」と政府内を
説いて回った。
 だが財政再建や高齢者向け施策が優先され、少子化対策に十分な財源を確保できなかった。「子どもを産み育てられる年齢層が
格段に減った今、保育の無償化など思い切った施策を打っても手遅れ。適切な時期に有効な手立てを打たなかったツケは未来に回る」