迫る中国「シャープパワー」(複眼) クライブ・ハミルトン氏/周永生氏/高原明生氏
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■人・カネ テコに政策誘導 オーストラリア チャールズ・スタート大学教授 クライブ・ハミルトン氏

 中国共産党は2000年代半ばからオーストラリアの政財界に影響を及ぼし始めた。まさに「静かなる侵略」を地で
いくように、ほとんどの豪国民はつい最近まで中国の干渉に気付きもしなかった。
 先鋒(せんぽう)となったのは、中国本土から豪州に移住したビジネスマンらだ。彼らは中国政府とのビジネス
で得た豊富な資金を用い、豪州の政治や経済界の要人に近づいた。大学やメディアの有力者も影響を受けた。
社会の意思決定に携わるエリート層が、同盟国の米国と関係を強めるより、中国の歓心を買うことの方が豪州に
とって重要だと公の場で主張し始めた。
 中国は目立たぬよう、自国に有利な政策を引き出す。トランプ米大統領周辺との不透明な関係を指摘される
ロシアとはそこが異なる。ロシアは自国の「敵」とみなしたクリントン氏を罰し、米国内に分断を巻き起こした
かっただけで、長期の戦略はない。
 一方、中国は豪州や米国に不安定を引き起こす意図はない。むしろ安定した民主主義の中で、数十年単位で
強い影響力を行使しようとする。そのため中国の干渉を認識するのに時間がかかる。

 この1年間で豪政府が導入した政策は評価できる。6月には外国政府の代理人としてロビー活動を行う際、
登録を義務付ける法案が可決された。中国は「他国に内政干渉などしていない」と主張しているので、こうした
動きに文句を言いにくい面もあり、目立った報復は起きていない。
 日本も同様の法律を検討すべきだろう。ただ、どれだけ法整備を進めてもグレーな部分は残る。中国は数年
かけて状況を見極め、違法にならない範囲でできることを進めてくる。日本や豪州など民主主義国家は、
その動きを白日の下にさらすだけでなく、より団結して立ち向かうべきだ。

(続く)