ドロンがまずはじめに宝石展の警備詳細をギャバンに教えるわけだ。でも、それとはまったく違った方向で犯罪が進む。
 ムショ仲間から情報を聞き出し、わざわざ脱獄までして教えに来たドロンの立場が、ハイジャックに変更となった時点で全くなくなっている。

 脱獄の成功には切手で報酬、ギャバンとドロンの契約が成立だ。だがその後がいただけない。
 情報の提供には情報に基づいた犯罪の成功、これがただの契約から一歩進んで、互いの利害関係を明確にするための本来あるべき図式である。
犯罪が成功すれば、計画はどうでもいいというわけではない。
 事前にドロンの警備情報があった。→しかし独りで決行は不可能だ。→そこでギャバンに力を借りる→だからこそ成功する。
という、ドロンとギャバンの立場は完全に利害で一致しなければならない。
 この利害関係が、ハイジャックという全く異なった犯罪を挿入する事で、どうにも狂ってしまっている。
 この作品の脚本は、こうしたところで微妙に破綻してしまっているのではないだろうか。
そしてまたそこがこの作品をして名作になれない要因ではないだろうか。
 
 まあ、決してつまらない作品ではないし、モリコーネの音楽もいい。吹き替え音源もよくぞ残ってくれていたと思う。
DVDは買って良かったが、まあ・・・・なんというか惜しいんだよ。
 同じ監督なら、やっぱり「地下室のメロディ」の方が段違いでいいんだな。
こっちは、前述の利害関係という部分でも、ラストに至るまでの息をも付かせぬ展開という部分でも、脚本が完璧だった。