「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」の原作翻訳本を読み始めて仰天した。人名表記が間違っている!!!

ぼくは「ノーツ」を訳したときに著者のエレノア・コッポラ女史と電話で話し、登場人物すべての正確な発音を確認した。何らかの事情で著者に確認できなくとも方法はいくらでもある。
ジョン・ル・カレは、そういうことに協力してくれる作者だ。ル・カレと確認を取れなくとも、英国人でル・カレ作品のファンならば必ず正しい発音を知っている。

菊池光訳の「ティンカー、テイラー」に登場する「パーシイ・アレリン」は「パーシイ・アラライン」である。例え日本語に置き換えられても、原作の持つ名前の響きは作者の意図に近い形で表記されなければいけない。
殊に、ル・カレは英語の美しい文体と響きにこだわる作家だからだ。「トビー・エスタヘイズ」も違う。正しくは「トビー・エスタヘーゼ」である。「ピーター・ギラム」も「ピーター・グィラム」とすべきだ。

ギャガが配給する「裏切りのサーカス」の字幕は、翻訳の間違いを是正し、映画での発音をきっちり踏襲しているだろうか。

この菊池翻訳本は名前の発音だけではなく、ピーターが「師匠」であるジョージ・スマイリーにタメグチをきく致命的なミスがある。
「彼らはおれを、首斬人(スカルプハンター)の責任者にしたのだ」とか「どういう意味なのだ」などとピーターは冒頭でスマイリーに言うのだ。これらは正しい話し言葉にもなっていない。

ピーターが「おれ」と言い、リッキー・ターが「わたし」と言う。人物の背景がまるでわかっていない。当然ながら、サーカスのトップ・ホンチョたちの洗練された毒のある会話の面白さも伝わらない。感覚がずれまくっている。

原田真人が偉そうに

4流映画監督の癖に