「いやあれはまじで奥さんでしたって。」
後輩、秋穂匠は力説した。
「まじかよ。」
内心の震えを隠して秋穂に訊く。

「あの俺、友達と新宿にいったんすよ。その、帰りに裏の通りで。最初は気づかなかったんですけど信号待ちで近くに来た時に声聞いたんです。今日は楽しかった。って。奥さんの声特徴があるから、すぐにわかって。黒いニットのセーターきた男と一緒でした。背が高めの。」

「...まじか。」
「はい。まじですよ。ほら。」
秋穂はiPhoneの画面を見せてきた。
そこには黒い服の男と由依が
楽しそうに横断歩道を渡る姿があった。
「お前、とったの?」
「はい。」
「普通そんなことする?」
「いやだって証拠無いと、先輩信じてくれないでしょ?それに馬鹿なまでに純粋な先輩を裏切るなんて赦せないっす。」
黒ホッピーを飲みながら秋穂は言った。

「もうこうなったら先輩も不倫するしかないっしょ。」
強か酔って秋穂は言った。
「あのな。」
「あー。先輩相手いないかー。」
秋穂は爆笑する。
秋穂は笑い上戸だった。
「いるわ。それくらい。」
僕は秋穂の喉仏を指で強く押しながら
言った。