『ねるちゃんの麦わら帽子』(3)

「なぜ食べ物をお供えしなかったのだ!」
暗闇のなかで、ナイフの光がはっきり見て取れた。大根ではとても太刀打ちできない。
一瞬にして目が覚めてきた。白くぼんやりと見えていたものは、麦わら帽子だった。

「わしらは毎回楽しみにしておったのじゃぞー!」
「ごめんなさい、家計が苦しくって。あなたたちにあげる食べ物がもうないの」
「嘘つけ。じゃあその右手の大根はなんだ!」
「これは…これはダメなの」
病気のお母さんのために買った大根だった。聞く所によると、万病に効くらしい。
お金がないのも、この大根が高価なためであった。

「その大根を渡せ。さもないと、お前を石にしてしまうぞ」
「ダメ!私なんか石になってもいいから、この大根だけは持って行かないで」
「じゃあ、石になってもいいんだな」
「うん、いいよ」
ねるは目をつぶった。
地蔵はナイフを捨てた。そして言った。
「よく言った。それでこそ仏だ」

ほとけーず誕生の瞬間であった。


大根ねるちゃんと、ほとけーず
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