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【欅坂小説】欅坂の道化師【2冊目】
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0001名無しって、書けない?(catv?)
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2018/02/07(水) 21:39:51.64ID:lF44R90tM
欅坂46のメンバーを登場人物とした小説を書いています。メンバー以外の人物はもちろん架空の人物です。前スレはまだ書き込めますが、長文が書けなくなった為に新しくスレを立ち上げました。

前スレ
http://itest.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1509967598/

保管倉庫
https://ameblo.jp/nyankozaka/
0166名無しって、書けない?(大阪府)
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2018/03/10(土) 23:16:49.18ID:tIiUiE5d0
乙です
鳴さんがカッコよく見えてきましたw
フィリップ・マーロウみたいな男の美学が伝わってきます

>>165
もしかすると、ニャンコ先生とは顔の好みが同じかもしれません
なーこちゃんは美人と評価されることが少ないですが、
よく見ると綺麗な鼻筋をしてて、メイク次第でいい方向へ化けるじゃないかと期待してます
0167名無しって、書けない?(庭)
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2018/03/10(土) 23:19:52.97ID:dugsw8oUa
鳴滝はちょっと俺と似てるかも?

ハードボイルドなとことか手品出来るとことか
0168名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/11(日) 17:09:50.14ID:X57LsecuK
今年も311がやって来ましたね
虹花のブログを読んで心を新たにして久しぶりに黙祷しました

という保守
http://o.5ch.net/13iuu.png

今日の絵にはほんのちょっとだけ仕掛けがあるけど大したことではありません
0169ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/11(日) 17:58:29.75ID:Mjybj4jYM
>>166
フィリップ・マーロウは目標ですね(^_^)

なーこは確かにメイクで変わると思います。
あとは年齢を重ねる毎に、大人の魅力も身につけていい女になるでしょうね。
0170ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/11(日) 18:03:59.10ID:Mjybj4jYM
>>167
マジですか!
私は不器用なので手品は無理!
0171ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/11(日) 18:06:02.38ID:Mjybj4jYM
>>168
あの日からもう7年なのか、まだ7年なのか。
いろいろと考えさせらるところは未だにあります。
イラストの仕掛けをこれから解いてみますね。
0172ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/11(日) 18:07:28.05ID:Mjybj4jYM
「君は……君と同じ金色の瞳を持つマグスって奴を知っているんだろう?」

ひとつの確信と共に、鳴滝がそう問いかけた。

「マグス?……知らなぁい。……同じ目をしている人なら知ってるけど」

僅かな沈黙を挟んで語られた彼女の言葉に、
鳴滝の目にに、再び狂気にも似た覇気が宿っていた。

「そいつの名前は?」

間髪入れずにそう問いかけた鳴滝だったが、彼の耳に当てたスマートフォンは長く沈黙したままだった。
その沈黙についに耐えきれなくなった鳴滝は、彼女の金色の瞳へと目を向けた。

「おじ様が、さっきの手品のタネ明かしをしてくれたら教えて、あ・げ・る」

視線を合わせるのと同時に、東村芽依が鳴滝へと条件を突き付けていた。

「そいつは出来ない相談だな。何故なら……」

「何故なら?」

今度は意図的に、東村芽依は鳴滝の言葉をなぞっていた。

「その上から目線が、誰かさんみたいで気に食わねぇ……からかな……」

「誰かさんって、あの可愛い相棒さん?」

「さぁな……」

「意地悪ね。そんな意地悪さんに、あたしからも聴きたい事があるんだけど。聞いてくれる?」

「何だよ?」

そう言った鳴滝は、東村芽依の金色の瞳を凝視したまま問い返した。
0173ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/11(日) 19:02:01.31ID:bEMGNHdCM
「おじ様、クロウの事を知ってるんでしょ?」

悪戯な笑みを浮かべた芽依が鳴滝へと更に問い返す。その挑戦的な小娘の表情に、鳴滝は右の口角のみを上げた苦笑いで答えた。

「忘れたいが思い出せないな」

「やっぱり……そうなんだ……」

鳴滝の言葉を受けて、彼女は彼女なりの確信を得たらしい。その芽依の視線が鳴滝から前方へと移った瞬間、動きを止めていた彼女の乗る赤い軽自動車が再び静かに動き出した。
鳴滝がその進行方向へと目を向けると、そこには心配そうな顔をして鳴滝を見つめる尾関梨香の姿があった。

「ねぇ、おじ様もこっち側においでよ。あたし達、良いコンビになれそう」

その時、鳴滝の耳に当てたスマートフォンから芽依の声が響いた。

「悪いな。俺の相棒は俺が決める」

「この子の何が良いの?」

そう問い返した芽依の乗る車は、既に尾関梨香の横で動きを止めていた。

「そいつの良さは、今の君じゃ分からないさ」

「妬けちゃうなぁ……」

そう言った芽依は、自らが座っている助手席側の窓を僅かに下へと降ろした。そのモーター音に、鳴滝を見つめていた尾関梨香の視線が東村芽依の存在を捉える。

「ねぇ。あの人、あたしが貰ってもいいかな?」

「何言ってるの?」

金色の目をしたままの芽依の突然の問いかけにも、尾関梨香は怯む事なくそう言い返していた。

「あなたより、あたしの方がお似合いって事よ」

「そう。じゃあ、いいよ。だだし、返品不可だから」

「え?いいの?」

おそらくは想定外だったのだろう。尾関梨香の言葉に、東村芽依の瞳の色は金色から黒へと変わっていた。
0174名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/11(日) 19:34:17.41ID:X57LsecuK
>>171
更新乙です

仕掛けが解けたらさすがに怖いっす(笑)
因みにサイコ〜とサイコをかけたわけではありません(笑)
0175名無しって、書けない?(大阪府)
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2018/03/11(日) 22:13:38.90ID:sTxO6gxJ0
>>168
山居倉庫の東側に星印がありますね
ブログに掲載されているマップの位置関係から推察するに、その場所は土門拳記念館に一致しますから、それが仕掛けの一つでしょう
星印で思い当たるのはミシュランガイドの星数で、調べたところこの記念館は星2つでしたから、これは多分関係ありません
最近のチワンさんは、植田正治に纏わる作品をお書きになられてましたから、写真にも造形が深い
この星印は土門さんに対する個人的なリスペクトを示したものではないかと思われます

鳴滝さんに負けじと、でっち上げ推理を拵えてみましたw
絵そのものに仕掛けがあるのなら、絵心のない僕はお手上げですw
0176名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/11(日) 22:42:10.05ID:X57LsecuK
>>175
すごいですね(笑)さすがです

植田正治さんのほうはまだなんですが、土門拳記念館には1回行ったことがあるんです
あの仏像写真の実物を巨大に引き伸ばして展示されていて
それを見ていると土門氏の「仏像はね、走ってるんだよ!」という名言がまさに感覚として素直に入ってきて、ひたすら圧倒されます
建物もモダンで綺麗ですし、ぜひおすすめですよ

で、なぜこっちには行ったことがあるかというと
実はそこの町で私は生まれたんです

本当に幼いうちにまたよそに引っ越してしまったので、当時の記憶も全く無いんですが
大人になってから行ってみたら、不思議なことに何か空気が違って感じるんですよね
やっぱりふるさとってことなのかなあって思ったものです

以上解答終わり(笑)
続き頑張ってください(笑)
0177ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/12(月) 03:30:49.22ID:yA+4LDlMM
>>175
見事な名推理です!
参りましたm(_ _)m
>>176
元画像との違いで、星マークまでは気が付いたのですが、記念館と何の関連があるのかまでは
、全く分かりませんでした。

「仏像は走っている」深いですね。
0178ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/12(月) 03:32:04.82ID:yA+4LDlMM
「いいよ。けど、あの人は探偵だよ」

「だから、何?」

「あなたは探偵になれるの?」

「探偵なんて、あたしにだって出来るわ」

「探偵舐めるなよ」

少しばかり鳴滝を意識させる尾関梨香の言葉に、東村芽依は苦笑いを浮かべた。

「芽依。行くよ」

二人の会話を遮るように、軽自動車のハンドルを握る加藤史帆が言い放つ。その彼女の瞳には、サイドミラーの中で急かすようにライトをパッシングさせる車があった。

「じゃあね。探偵ちゃん」

皮肉を含んだ言葉を残し、芽依を乗せた車は駐車場から出て、道の先に拡がる闇へとテールランプの赤だけを残し消えて行った。
その姿を見送る尾関梨香の横へと、白い乗用車が止まった。

「乗って」

クリスに代わり助手席へと座っていた守屋茜の声がした。その声に素直に従い後部座席のドアを開けた尾関梨香の視線の先には、腕を組んで座る鳴滝の姿があった。
尾関梨香がその隣へと座るのと同時に、車は走り出す。

「あの女と、何を話してたんですか?」

シートベルトを締めながら、尾関が鳴滝へと問いかけた。

「手品の話しをしてたんだよ」

「手品って……あの人形を燃やすやつですか?」

「ああ、そうさ。モナリザの忘年会でやってやろうと思って練習してたんだよ」

「悪趣味です。それに、まぐすって誰ですか?」

尾関梨香が口にしたその名前に、守屋茜が耳を傾けるように顔を動かした。それに対し、鳴滝は深い溜め息をひとつつき、窓の外へと目を向けた。
0179名無しって、書けない?(千葉県)
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2018/03/12(月) 20:20:56.24ID:V3m8gNdMC

0180名無しって、書けない?(庭)
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2018/03/12(月) 20:24:31.34ID:5nbACVHXa
>>179
勘九郎兄さんやー!
0181ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/12(月) 20:38:12.64ID:EYDPhP8xM
只今、帰宅(^_^)

>>179
ウオォ!もう職人の域ですよねww
色使いが素晴らしい
0182ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/12(月) 21:11:31.67ID:FyKzmd9kM
沈黙した鳴滝の答えを待つ間に、四人を乗せた車はいつしか市街地へと入っていた。

「もうすぐ武家屋敷通りです」

ハンドルを持つクリスが、助手席の守屋茜へと次の指示を仰ぐかのように語りかけた。その守屋茜は、そこでやっと後部座席の鳴滝へと顔を向けた。

「私達はこのままホテルに向かうけど、あなた達はどうする?」

「とりあえず、その武家屋敷通りに着いたら適当なところで降ろしてくれ」

守屋茜の問いかけに、沈黙していたはずの鳴滝が即座に答えを返した。

「泊まる所は決めてあるの?」

「あ……」

守屋茜の言葉に、尾関梨香の顔が引きつった。その表情から全てを察した鳴滝は、呆れたような苦笑いで守屋茜を見た。

「まぁ、観光シーズンでもないから、いくらでも部屋は空いているだろ」

「大丈夫ですかね?こんな時間に……」

先程までの強気な態度から一転し、尾関が小声で呟いた。

「どうとでもなるさ。夜通し張り込みする案件に比べりゃ、何て事ないだろ?」

「で……ですよね……」

ホテルの予約を忘れた負い目もあってか、尾関は反論する事も出来ずに、鳴滝の言葉に無理矢理に同意していた。

「ここが武家屋敷通りです」

その時、目の前に現れた信号機から右にハンドルを切ったクリスが、ルームミラー越しに鳴滝を見た。

「今日はありがとう。せっかくの休暇を無駄に遣わせて申し訳なかった。この埋め合わせは、何かの形で必ず返すよ」

あのショッピングモールの駐車場での奇行からは、全く想像も出来ない様な鳴滝の紳士的な言葉で、彼に返す言葉に戸惑ったクリスが助けを求めて守屋茜へと目を向けた。
0183名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/12(月) 23:04:16.07ID:mCMjTW2rK
更新乙であります

>>181
実はようやくお絵描き機能での色の増やし方に気が付きまして(笑)
ここまで来るのに2年半かかっているという(笑)
0184ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/13(火) 00:19:23.73ID:v387bF2jM
>>183

((((;゚Д゚)))))))
0185ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/13(火) 19:53:46.60ID:iqiqq2xrM
とりあえず保守

なーこ……なんだか顔が白いぞ……

https://i.imgur.com/SBm0fAY.jpg
0186ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/13(火) 20:23:30.80ID:iqiqq2xrM
「勿論、きっちり返してもらうわ。諭吉さんでね」

「何で俺んとこの諭吉さんには、みんな羽が生えてるんだろうな」

「ジェットエンジン搭載してるよりはマシでしょ?」

「とりあえず、レンタカー代とガソリン代はこっちに回してくれ」

「冗談よ。今回は貸しって事にしておくわ」

「逆に高く付きそうだ」

鳴滝と守屋茜のやり取りを、クリスは複雑な表情で聞いていた。あの駐車場での彼を見ていながら、何故に普通に会話出来るのだろう?
あの人形を一瞬で灰に変えた炎が、手品などではない事を守屋茜も気が付いているはずだ。いくら元相棒とは言え、ここまで寛容になれるものだろうか?
それらの疑問が、クリスを一層無言にさせていた。
そのクリスが見守る中、鳴滝はトランクから尾関梨香と自らの荷物を取り出し、彼女へと手を振った。その顔は子供の様に無邪気な笑顔を浮かべている。

「宿泊先が決まったらメールしておいて。朝に迎えに行くから」

助手席の窓から顔を出して、守屋茜が尾関梨香へと指示を出した。

「はい。いろいろすいません」

「気にしないで。お互いの為だもの」

深々と頭を下げた尾関へと、守屋茜は笑顔でそう答えていた。

「そっちは、どこに泊まるんだ?」

「コンカナ王国って所よ。昼間に行った鬼岳の近くらしいわ」

両手に荷物を抱えた鳴滝の問いかけに、守屋茜も即座に答える。それが当たり前かの様に。

「そっか。俺が言えた義理じゃないが、今夜はゆっくり休んでくれ」

そう言った鳴滝の顔はどこか苦笑いにも見えた。何故なら、その時の彼の脳裏には、欅の葉っぱでの長沢菜々香の顔が一瞬だが過ぎっていたからだ。
0187ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/13(火) 20:59:03.28ID:RDOVA/j4M
寝落ちしないように、ベランダで書いてます。
(´Д` )寒くない。春だなぁ……
0188名無しって、書けない?(庭)
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2018/03/13(火) 21:05:49.81ID:TBE+Aqopa
>>187
執筆のためにそこまでなさるニャンコ先生に敬意を表しますm(__)m
0189ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/13(火) 21:36:23.52ID:v387bF2jM
守屋茜達の車を見送った鳴滝と尾関は、当てもなく武家屋敷通りと呼ばれる道を歩き出した。
街灯が照らし出すその通りは、両脇に並び立つ石造りの塀以外には特に歴史を感じさせるものでは無かった。昼間であれば、また趣きも違うのだろうが。

「何処ですかね?全く分からないんですけど」

初めての土地である為か、尾関が戸惑いながら鳴滝へと問いかけた。

「Google先生に聞いてみるか」

初見の土地であるのは鳴滝も同じだった。
立っている者は親でも使えと言わんばかりに、鳴滝は手元のスマートフォンの画面の上に指を這わせた。

「確か、この辺のはずなんだが……」

スマートフォンの画面が照らし出す鳴滝の顔は、困った様に眉間に皺を寄せている。

「探偵が迷子って……笑えない」

そう呟いた尾関梨香の目の前で、鳴滝が不意にすぐ側の闇へと身構えた。その緊張感に、尾関も即座に身構える。

「お待ちしておりました」

身構えるその二人へと、穏やかな女の声が届いた。その声の主へと目をやった尾関の口が開いたまま動かなくなった。
まさに開いた口が塞がらないとはこの事だろう。
その声の主は、石造りの塀の隙間に開いた門の中の闇に立っていた。
淡い鶯色の着物を身に纏い、真っ直ぐに腰まで伸びる黒髪の中に浮かび上がる白い肌。その中にあって、穏やかな優しさを湛える微笑み。
江戸時代どころか、平安の時代へとタイムスリップしたかの様なその光景に、尾関はただ立ち竦むしかなかった。

「貴女は?」

その雰囲気に惑わされる事なく、?そう問いかけたのは鳴滝だった。

「私が……川口玲子です」

囁く様なか細い声でありながらも、全てを包み込むかのような柔らかなその声に、尾関は警戒を解いていた。
0190ニャンコ坂46(茸)
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2018/03/13(火) 21:55:05.52ID:SBnWpmamd
>>188
いやいやいやwwww
ぬくぬくとしてたら疲れから直ぐに寝ちゃうって理由だけですから。
そんな敬意を表される程の高尚な事ではありませんってww
0191名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/14(水) 00:45:00.64ID:QOMxitK6K
ベランダで執筆のうえ更にアメブロまで更新乙です
http://o.5ch.net/13kze.png
0192ニャンコ坂46(茸)
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2018/03/14(水) 19:27:17.52ID:QuKg9LH+dPi
>>191
菅井様も大人っぽくなって来ましたね
0193名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/14(水) 19:51:21.62ID:QOMxitK6KPi
>>192
でも…>>107
0194ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/14(水) 20:24:45.68ID:5Ek8K5d0MPi
>>193
それは地雷ですぜ!旦那ww
0195ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/14(水) 20:29:43.72ID:5Ek8K5d0MPi
大人の時間に颯爽と現れるキティちゃん……
う〜ん。マニアには堪らないでしょう。
が!どうフォローしていいのやら……
0196ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/14(水) 20:30:40.66ID:5Ek8K5d0MPi
「お待ちしておりました……とは? 」

一方の鳴滝は警戒を解く事なく、即座にそう問い返していた。

「秋元市から来た探偵が、シスター長濱の話しを聞きに来るだろうと連絡がありました」

「どなたからですか?」

笑顔を絶やさず彼の問いに答えた川口玲子へと、鳴滝は更に問い返した。

「堂崎教会で受付をしている女性からです」

その言葉に鳴滝は目を閉じて暫しの間沈黙した後、目の前に立つ着物姿の麗人に笑顔を見せた。

「試しているんですか?私を……」

その鳴滝の言葉の意味が分からず、尾関梨香は背後から彼の顔を窺い見た。

「試すとは……どう言う事でしょうか?」

相変わらずの笑顔で、今度は川口玲子が問い返した。その笑顔が今は不自然に思えて、尾関梨香は再び警戒するように鳴滝の影へと身を寄せた。

「堂崎教会の受付の女性へは、フリーライターとしか伝えていません。私が探偵である事は彼女は知らないはずです」

笑顔を見せながらも、そう語る鳴滝の声には人間らしい抑揚は無かった。
その状態の鳴滝についてよく知る尾関は、敢えて静観していた。
鳴滝の声に抑揚が無くなる時……それは右手で顔を覆う時と同じなのだ。
つまり、彼の思考がフル回転している証しだった。ここで何かしらの言葉を挟んで邪魔をすると、後でこっ酷く叱られるのだ。

「あの子を軽くあしらっただけの事はありますね。探偵と言う肩書きは伊達ではない……恐れ入りました」

そう言いつつ、川口玲子は鳴滝へと会釈していた。

「あの子とは……平手友梨奈と受け取ってもよろしいでしょうか?」

「はい。しかし、こんな場所では何ですから、狭いですが家へとお上がり下さい」

そう言った川口玲子は、鳴滝と尾関を誘うように敷地内の家屋へと一人で歩き出した。
0197ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/15(木) 03:42:44.62ID:nePP8cqjM
その誘いに抗う事なく、鳴滝もその足を進めていた。彼の背後に立つ尾関梨香も、その影を追うように敷地内へと足を踏み入れる。
あっさりと鳴滝の推理を受け入れた川口玲子という女性の長い黒髪に、彼女のこれまでの半生が映し出されているように思えて、闇夜の中ではあったが、尾関は目を凝らしてその後ろ姿を追っていた。
石塀の中には、小さな家庭菜園を傍らに携えた平屋建ての昭和を感じさせる家。武家屋敷とまではいかないが、古き良き時代の片鱗がそこにはあった。

「どうぞ、お上がり下さい」

川口玲子の言葉に誘われるまま、鳴滝は磨りガラスの引き戸の奥へと足を踏み入れる。無論、尾関梨香もその後に続く。
晩秋の冷えた空気に晒されていた尾関梨香の身体に、暖かな空気と共に食欲をそそる香りが漂って来た。

「お昼も召し上がっていらっしゃらないご様子ですので、質素ではありますが夕食をご用意させて頂きました」

それはまるで、鳴滝達がこの島へと足を踏み入れてからここまでを見ていたかの様な言葉だった。

「しかし……」

「初対面の人間に、何故にここまで?とでも仰りたいのでしょう?」

穏やかな威圧。そう表現すれば良いのだろうか。柔らかな物腰でありながら、川口玲子の言葉のひとつひとつに不思議な力が宿っていた。

「ええ……いや……まぁ……」

自らの考えを見透かされたかのように、彼には珍しく鳴滝は動揺していた。それは、やはり尾関梨香が初めて目にする彼の姿だった。

「敵視など致しておりません。でなければ、招き入れはしないでしょう。そうではありませんか?」

「ええ……」

やはり、この川口玲子という女は本当に鳴滝の心を読んでいるのではないか?彼の背後でその様子を見ていた尾関梨香にはそう思えた。
何故なら、彼女の語り口は鳴滝そのものだったからだ。例えるなら、女鳴滝。それしか思い浮かばない。

「さぁ、ご遠慮なく」

「では、お言葉に甘えて」

しかし、あくまで客をもてなす側として振る舞う川口玲子に、鳴滝は素直に彼女に従っていた。
0198ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/15(木) 04:22:31.29ID:n+V/65OCM
玄関を上がって招き入れられた部屋には、中心にあるテーブルの上に刺身が盛り付けられた大皿が置かれてあった。

「おお……」

尾関梨香の口から、思わずそんな感嘆の声が漏れる。

「せっかく西の外れの島までお越し頂いたのですから、地元のお魚でもと思いまして」

その尾関に対しても、彼女は笑顔で穏やかに言葉を綴った。

「美味しそう!」

「もちろんですとも。獲れたての新鮮なお魚を捌いたものですから。お刺身はお好きですか?」

「はい!三度の飯より大好きです!」

「良かったわ。喜んで頂けたようで」

すっとこどっこいな尾関梨香の言葉に、川口玲子の顔にも自然な笑みが溢れていた。

「早速ですが、平手友梨奈と長濱ねるの件についてお話しを伺いたいのですが」

その女二人の和やかなやり取りに、この訪問の本題を忘れそうになりながらも、鳴滝がそう口を開いて、二人の間を割いた。

「そう急がなくても。つい先頃の小説でもありましたよね?謎解きはディナーの……」

「なるほど。なるほど」

世間では、大事な事ほど二度言うらしいが、この鳴滝においては困った時に使う言葉だった。それを知る尾関は、傍らで人知れず笑みを浮かべていた。

「お刺身だけではと思いまして、長崎ならではの麺料理もお出ししますので、それまではこちらのお刺身をお召し上がり下さい」

まるで、どこかの旅館の仲居のように畏まって頭を下げた玲子へに対し、鳴滝と尾関も少し遅れてその頭を下げた。

「うわっ!ぷりぷり!」

玲子が奥の部屋へと姿を消した後に、早速、その刺身を口に頬張った尾関が口籠もりながらそう言った。
0199ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/15(木) 04:40:36.74ID:n+V/65OCM
「大事な事だから二度言った」は、三年半ほど前に、とあるゲームアプリのチャットで、私が最初に使ったという事は誰も知らない……。
0200ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/15(木) 05:31:14.27ID:ptpFZZQLM
「お前は犬か!」

その尾関へと、鳴滝がそう言い放つ。

「何がですか?」

「見ず知らずの人間が差し出した物を、そう簡単に口にするな」

「だって、お腹空いてたから」

「お前って奴は……」

次々と皿に盛られた刺身をその口に運ぶ尾関を見ながら、鳴滝は溜め息混じりの言葉を返す。
だが、鳴滝自身も幾らかの後悔の念は否めなかった。仕事に没頭すると、食さえ忘れてしまう自分自身の悪い癖を自覚していたからだ。
その刺身に舌鼓を打つ尾関を放置して、鳴滝は部屋の中を見渡した。
テレビに本棚。それに付随するかのように置かれた装飾品。どこの家庭にもあるかのような光景ではあったが、その中にあるひとつの写真に鳴滝は目を止めた。

「平手友梨奈……か?」

幾らか色褪せた写真の前に顔を寄せて、鳴滝は自問自答するかのようにそう呟いていた。
写真に写るのは、川口玲子とおぼしき女性と、その周囲に座る五人の幼い少女達。その中の一人に、鳴滝は平手友梨奈の面影を見出していた。
いや、平手友梨奈だけではない。その他の四人についても、その面影を辿る事が出来た。
長濱ねる、上村莉奈、渡辺梨加、そして……長沢菜々香。

「くそったれ……」

自らが推理した最悪の事実を裏付ける証拠を目の前にした鳴滝は、ただ目を閉じた。

「さぁ、お刺身だけでは足りないでしょう?本場のちゃんぽんをどうぞ」

湯気の立ち昇る大きめのお椀を尾関へと差し出した後、川口玲子は写真の前に立つ鳴滝へと目を向けた。

「宿命は変えられません。けれど、運命は変えられます。違いますか?」

そう問いかけた川口玲子へと、鳴滝は閉じた瞼を開いて彼女を見た。

「では、私と貴女との出会いは、運命ですか?それとも宿命ですか?」

問い返した鳴滝の言葉に、彼女は穏やかに微笑んだ。

「勿論、宿命です」

一点の曇りなく答えられた言葉に、鳴滝も彼女と同じく穏やかな笑みを浮かべた。

「では、従う他にはないでしょうね」

その鳴滝の言葉から暫しの沈黙を挟み、川口玲子は鳴滝へと顔を向けた。

「彼女達の運命を……一緒に変えて頂けますか?」

「お任せ下さい。それこそ鳴滝探偵事務所の得意分野です」

穏やかな笑みを失った川口玲子の顔に、再び笑みを浮かべさせたのは、鳴滝のその言葉だった。
0201ニャンコ坂46(茸)
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2018/03/15(木) 07:13:09.45ID:nl+J08Qwd
眠い。クソ眠い。
けど、仕事っす!
0202名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/15(木) 17:08:05.86ID:FiwW3VtDK
お疲れ様です保守
http://o.5ch.net/13lof.png
0203ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/15(木) 22:16:35.86ID:WYeIaJy0M
>>202
保守ありがとうございます!
0204名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/16(金) 11:31:32.50ID:Q6PkyUs2K
ひそかに漢字欅自撮りTVシリーズのコンプリートを狙いつつ保守
http://o.5ch.net/13mi5.png
0205ニャンコ坂46(茸)
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2018/03/16(金) 20:04:25.45ID:8e0eForHd
>>204
またまた保守ありがとうございます!
コンプしちゃって下さい

私は昨日から風邪ひいてしまい
グロッキーです(´Д` )
それでも仕事ちう
寝たい
0206名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/17(土) 07:38:40.18ID:gxYrZqoxK
やっぱり先日のベランダで執筆がたたったんですかね
お大事にしてください
http://o.5ch.net/13nzd.png

コンプリートへ向けてこれで12作目
描きにくいのが残っていくのでなかなか厳しい…
0207ニャンコ坂46(茸)
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2018/03/17(土) 12:58:17.48ID:SKscLPZgd
>>206
原因はベランダかぁ(´Д` )やっちまったなぁ
喉が若干やられたままですが、熱も下がって
無事復活しました。

コンプリート頑張って下さい!
0208ニャンコ坂46(茸)
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2018/03/17(土) 12:58:53.15ID:SKscLPZgd
「彼女達は、今どこに?」

「近くに居ります」

やっと、出されたちゃんぽんに口をつけた鳴滝が、合間に玲子へと問い、彼女はお茶を出しながらそう答える。
それが尾関梨香には不思議な光景に思えて、じっとその二人を観察していた。まだ会って一時間も経ていないにも関わらず、ずっと昔から知り合いのような。
不躾な鳴滝だが、玲子は玲子で丁寧ながらもその言葉には遠慮がない。

「近くとは?」

「お食事中にするお話ではありません」

尚も問う鳴滝を、ピシャリと玲子が諌める。
それはまるで悪戯小僧が母親に怒られている姿にも思えて、尾関は堪え切れぬ笑いを悟られぬように鳴滝から顔を背けた。

「ですよね」

鳴滝は鳴滝で妙に納得したらしく、ひたすら麺を口に押し込んでいた。

「お嬢さんは、尾関梨香さんでよろしかったかしら?」

忙しく動き回っていた川口玲子が、着物を覆っていた割烹着を外しながら尾関の前に座った。その言葉に、自分が名乗っていなかった事に気付き、尾関は背筋を伸ばした。

「はい。尾関梨香、ぴちぴちの二十歳です」

尾関は、自分でも何故にそんな事を言ったのか分からない。突然、名前を呼ばれた事と、お嬢さんと呼ばれた事にも焦っていたのかもしれない。

「ぴちぴちじゃなくて、ぷくぷくの間違いだ。はい、やり直し!」

当然の様に鳴滝から煽りが入った。だが、今回だけは、それが尾関には助け船にも思えた。初対面の、しかも歳上の女性の前で、ぴちぴちは失礼だったかもしれないと少しばかり彼女も焦っていたからだ。

「尾関梨香。ピカピカの二十歳です!」

やってしまった。鳴滝の煽りに、ついついいつもの調子で言い返してしまった。妙な沈黙がその場を包む。

「こいつの得意技は、自分で自分の墓穴を掘る事なんです。既にお気付きでしょうが」

その沈黙を破ったのは鳴滝のその一言だった。だが、その言葉に、玲子は右手で口元を覆いつつ笑い出した。

「本当に面白い子ですね」

「こいつから面白さを取ったら、ただの狸ですけどね」
0209ニャンコ坂46(茸)
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2018/03/17(土) 13:36:28.44ID:SKscLPZgd
その鳴滝の言葉に、尾関は返す言葉もなく黙り込んだ。それは、自らの発言による恥ずかしさからと言うわけではない。

どう言葉にすれば良いのか。目の前にいる鳴滝と玲子の間にある目に見えない共通する何か……とでも言えばいいのか。

自分とは何かが違う感覚で語り合っているような。尾関には、そんな気がしてならなかったのだ。

「デザートをお出ししまょう。鳴滝さんは召し上がられますか?」

やっと、ちゃんぽんのスープまで飲み干した鳴滝へと玲子が問いかけた。

「それが最後の関門であるとするなら、是非にでも」

「関所はこれが最後です」

素直に他人の好意を受け入れられない彼の性格を熟知している自分ならまだしも、初対面の玲子には失礼なのでは?と、冷や汗をかく尾関の予想の斜め上の言葉を玲子は返して来た。

「ありがとうございます。頂きます」

その鳴滝の言葉に、尾関は目を丸くした。
何故なら、彼は甘ったるいものが苦手なのだ。その彼に、砂糖の塊の様なデザートを認めさせるとは……。

「直ぐにお出し致します」

それだけ言い残し、玲子は奥の部屋へと姿を消した。

「大丈夫ですか?」

そこで、すかさず尾関が鳴滝へと小声で問いかけた。

「何言ってんだ?お前」

鳴滝はやはり常套句で返す。

「だって……甘いものは苦手じゃ?」

心配する尾関に構わず、鳴滝は右手の親指を立てた。

「ハニートラップは大好きだ」

「最低……」

そんな二人のやり取りに構わず、玲子はお盆に乗せた何かしらを運んで来た。

「私の得意なデザートです。お口に合えば良いのですが……」
0210ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/17(土) 18:50:16.42ID:tIfuTTVbM
そう言って、玲子が二人の前に差し出したのは、ココアパウダーがふんだんに振りかけられたガトーショコラであった。

「レイコの……ガトーショコラ……」

「いきなり呼び捨てかよ」

「あ、いえ……すいません」

思わずそう口にしてしまった尾関へと、これまた思わず口にしたような鳴滝の合いの手の如きツッコミが入った。にも関わらず、尾関は鳴滝にではなく川口玲子に対して向き直っていた。

「お気になさらず。さぁ、どうぞ」

まるで小さな子供をあやすかの様に、かの川口玲子の顔には笑顔が溢れる。
これが長濱ねるや平手友梨奈が子供の頃に見ていた世界なのか……そんな思いの中で、尾関はガトーショコラを口に含んだ。

「美味しい……」

それが尾関の素直な言葉だった。おそらくは冷凍されていたのであろうが、程よく溶けたその食感と甘みとが、舌の上で解けて広がる。先に出されたちゃんぽんで火照った口内に、それはちょうどよい刺激だったのだ。

「うん。こいつは……」

甘いものが苦手な酒呑みの鳴滝でさえ、このデザートは口に合ったらしい。

「お気に召して頂けたようで何よりです」

それは穏やかな時間だった。だが、それだけに、尾関は敢えてゆっくりと味わっていた。この後に知る事になるであろう哀しい現実に心構えする為に。
0211名無しって、書けない?(庭)
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2018/03/17(土) 19:27:55.57ID:nJXhE8m6a
快気祝いの連続投稿乙でありますm(__)m
0212名無しって、書けない?(大阪府)
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2018/03/17(土) 19:38:28.45ID:LBsrVknA0
>>210
ここで乃木坂ネタですかw
あの回はなぁちゃんの棒読みがおもしろかったですね
0213ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/17(土) 19:50:41.46ID:MNt14DPxM
>>211
ありがとうございます!
まだ頭がクラクラしていますが、
それで逆にハイテンションになって
後先考えずに書き進めるパワーにww
0214ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/17(土) 19:51:52.64ID:MNt14DPxM
>>212
分かってくれる人がいて嬉しいです!
大阪さん、なかなかのマニアですねww
0215ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/18(日) 07:33:10.38ID:XZjdkRKfM
ボンボンボンと時を告げる音がした。
その音を数えながら尾関梨香がそちらへと目をやると、そこには今時珍しい柱時計があった。時刻はちょうど九時になったところだ。

振り子の左右の動きに催眠をかけられた様に、尾関はまだ知るはずもない川口玲子と平手友梨奈、長濱ねるの過去へと思いを馳せていた。

「今日はどこへお泊りですか?」

その虚ろな目の尾関へと、玲子が問いかけた。

「それが……」

「良ければ今夜は、こちらにお泊り下さい。時間を気にしていては、ゆっくりとお話しも出来ないでしょうし」

鳴滝と同じく、尾関の一言で全てを察した玲子が鳴滝へと申し入れていた。

「ありがたいです」

言葉少なではあるが、鳴滝には珍しく素直に玲子の厚意を素直に受け入れていた。

「さて、何からお話しすれば良いのか……」

綺麗に片付けられたテーブルの上には湯呑みが三つ。並べられた湯呑みに対するひとつの湯呑みを手にした川口玲子が、躊躇いながらそう口にした。

「まず、あの五人は、平手友梨奈、長濱ねる、上村莉奈、渡辺梨加、そして長沢菜々香で間違いありませんね」

急かす訳ではないだろうが、川口玲子の背後にある写真を指差しながら、鳴滝が本題のひとつへと繋がる問いを投げかけた。

「はい。確かに彼女達です」

「つまり、彼女達は慈愛院という施設にいた子供達だと……」

「ええ。彼女達がどの様な状況からあの施設へと来たのかまでは、私の口からは語れません」

「勿論、そこまでは望んでいません。私が知りたいのは、何があったかだけです」

そこで玲子は一度目を閉じた。背筋を伸ばして座る凛とした姿と長い黒髪。綺麗に整えられた眉に薄化粧。日本人特有の清楚な美しさに、鳴滝はいつしか魅入られていた。
0216ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/18(日) 07:34:01.29ID:XZjdkRKfM
だが、次の瞬間、鳴滝と尾関は衝撃に言葉を失った。

「慟哭を鎮めて生きる。それが、この九年間の私だったように思います」

再び目を開いてそう語った玲子の瞳は金色へと変わっていたのだ。間近で見るその瞳に、二人は呼吸さえ忘れたかのように動け出せずにいた。

「驚かれたでしょう。ごめんなさいね」

尾関へとそう言いつつ笑顔を向けた玲子の目は、瞬時に元の黒へと戻っていた。

「まず、この目の秘密からお話しした方が良いでしょうね」

「ご存知なんですか!」

食いつきそうな勢いで鳴滝が身を乗り出した。その彼へと、玲子はゆっくりと頭を縦に振った。尾関梨香はその間、ぽかんと口を開けたまま彼女を見ている。

「はい。存じ上げております」

「是非、お聞かせください」

そう言った鳴滝は、スーツの内ポケットから取り出した手帳とボールペンをテーブルの上に置いた。

「この島の沖に、いくつもの潜水艦が沈んでいるのをご存知ですか?」

「いえ……」

「第二次世界大戦終結後、GHQによって沈められた日本軍の潜水艦が二十四隻あるそうです。しかし、その海域とは違う場所で、自らの意思で海底で眠りについた潜水艦があります」

「それは?」

「当時、日本の統治下にあった台湾から、ある任務を遂行する為に、この島へとたどり着いた潜水艦です」

「その任務とは?」

「軍事機密の輸送……」

そう予想外の展開に、尾関梨香はただ呆然と二人の会話を聞いていた。ただひとつ、彼女が予感出来きたのは、自分達が踏み込んでは行けない世界へと足を踏み入れようとしている事だけであった。
0217ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/18(日) 07:42:56.55ID:XZjdkRKfM
「軍事機密……」

そう呟いた鳴滝がその顔を覆おうとした右手を、尾関梨香が左手で掴んで止めた。それが彼女に出来る最高の反抗だった。

「大日本帝国陸軍軍事機密……第404号」

その二人に構わず、玲子は淡々とその名を告げた。そこで、鳴滝は僅かに首を傾げた。

「何故、そこまでご存知なのですか?」

「ある場所に隠されていたそれを、私が最初に見つけたからです」

鳴滝の問いに、玲子は即座にそう答えた。

「ある場所とは……まさか……」

「慈愛院の敷地の一角です」

「それは……その軍事機密とは、一体どの様なものだったのですか?」

流石の鳴滝も、今回ばかりは戸惑っている様だった。単なる女子高生の家出から、殺し屋、ついには大日本帝国陸軍の機密にまで話が及ぶとは想像も出来ないのは当然だろう。
むしろ、尾関梨香の方が落ち着いていた。
彼女は素直に玲子の言葉を受け入れていたからだ。
難しく考えても仕方がない。それはある意味、開き直った者の強味とも言えなくもない。

「私が最初に見た時は、一センチ角の黒い立方体でした。しかし、手の平に乗せると、青へと色を変えながら溶けてしまったのです」

「溶けた?では、もうそれ自体は無くなってしまったのですか?」

「いえ。溶けただけで、液体状のまま私の手の平の中で動いていました」

「動いた?……」

疑問に次ぐ疑問の連想に、鳴滝は目を見開いて固まった。
0218ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/18(日) 07:50:29.99ID:XZjdkRKfM
ここから先は、SPECみたいな能力者バトルを取り入れてみようかと思います。
東村芽依、加藤史帆、渡辺梨加以外は決めていないので、欅坂メンバーで似合いそうな能力案があれば募集します。
0219名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
垢版 |
2018/03/18(日) 08:09:59.25ID:LCBhaZhGK
更新お疲れ様ですm(_ _)m
楽しみです

ちなみにアメブロのほうのイラストのタイトルが若干違っているような…まあ、そう見えなくもないのかな?
0220ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/18(日) 08:16:06.86ID:XZjdkRKfM
>>219
あれ?違いました?
0221名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/18(日) 08:26:01.55ID:LCBhaZhGK
>>220
>>123でほめていただいた時と名前が違うんで(笑)

これは例によって似てない(笑)
http://o.5ch.net/13oxz.png
一応14人クリアで残り3分の1です
0222ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/18(日) 08:31:31.45ID:XZjdkRKfM
>>221
ごめんなさい!
思いっきり間違ってましたww
全然別人の名前だった。
何で気づかなかったんだろう

コンプリート順調に進んでますね
どんどん可愛くなってるし
0223ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/18(日) 18:38:00.86ID:sK4ooTBDM
驚愕する鳴滝の隣で、尾関梨香はあっけらかんとした表情で玲子の話しに耳を傾けていた。その彼女を見た玲子は、安堵したかのように微笑みを見せた。

「黒い物質は、私の鼓動に合わせて脈打つように動いていたのです。まるで生き物のように」

その玲子の言葉で、鳴滝の頭の中に真っ先に浮かんだのは磁性流体と呼ばれるものだ。その物質も同じような動きをするが、その動きは磁場を発生させる磁石によるのであって、玲子の手にしたものとは別物だ。

「その黒い物質と、玲子さんの目とどういう関係があるんですか?」

考え込む鳴滝に代わり、尾関梨香が素朴な疑問を投げかけた。

「私の目がこうなったのは、その黒い物質を触ったからなの」

そう答えを返す玲子の瞳は、一瞬だけ金色へと変わり再び黒へと戻っていた。

「つまり、金色の瞳を持つ者は、その物質に触れたものであると?」

右の人差し指をこめかみに当てながら、鳴滝が目を閉じたまま問い返す。

「そう言う事になります。そして、この金色の瞳は、誰にでも見えるものではないのです」

「と、言いますと?」

「詳しくは断言出来ませんが、ある条件を満たした人間のみが見えるようです」

「試された事があるんですか?」

その問いに、玲子は沈黙した。その沈黙にこそ、彼女が抑えて来た慟哭の意味があるように思えて、鳴滝は静かに彼女の言葉を待った。
0225名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/18(日) 18:54:03.60ID:LCBhaZhGK
更新乙です
秘密が徐々に明かされる展開にドキドキします
http://o.5ch.net/13pit.png

これで残り5人まで来ました
0226ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/18(日) 19:23:09.54ID:4xuwTGYgM
>>225
小池美波ww
似てるww
0227ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/18(日) 19:28:24.21ID:4xuwTGYgM
暫しの時を挟み、立ち上がった玲子は振り向き様に写真立てへと手を伸ばした。引き寄せた写真を見る彼女の横顔はどこか寂し気で、そこから鳴滝はおおよその見当をつけていた。

「つまり、彼女達で試したと?」

その鳴滝の言葉に、一瞬抗議を含む鋭い視線を見せた玲子だったが、写真を手に鳴滝の前に正座し、彼を見据えた。

「当時の入所していた子供達は、下は三歳から上は十八歳の二十一人でした。その中で、私の瞳の色の変化に気が付いたのは、この五人だけだったのです」

「それから……どうされたんですか?まさか……彼女達にも?」

「はい。黒い物質に触れさせました」

「何故そんな事を……得体の知れない危険なものかも知れないのに」

「彼女達に希望を持って欲しかったのです」

「希望?」

繰り返された言葉に、鳴滝と玲子は互いの目の奥を探るように見つめ合ったまま黙り込んだ。
その二人を、やはり尾関梨香も黙って見つめる。この時の彼女には、若干だが余裕が生まれていた。未知である事に依然変わりはないが、金色の瞳の謎も少しだけ彼女なりに理解出来た。
例えてみれば、幽霊だと思っていた磨りガラスの向こうので揺れる白い影が、どこからか飛んで来たビニール袋だったみたいなものだ。正体さえ分かればなんて事はない。
尾関は自分にそう言い聞かせていた。無論、そんな単純な事ではないのも理解はしているが。
とにかく、尾関は目の前の鳴滝と女鳴滝のやり取りを心のどこかで楽しんでいた。
0228ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/18(日) 19:59:46.24ID:4yMmidQLM
「説明するまでもなく、あの施設にいた子供達は、それぞれの家庭の事情により集まって来た子供達です」

「わかります」

語り出した玲子へと、鳴滝も神妙な面持ちで返す。

「施設に入るまでは、劣悪な環境の中にいた子供もいます。産まれて来た意味さえ、親の愛さえ知らない子も」

「そうだと思います」

玲子の言葉にまるでレールを敷くかのように、鳴滝が言葉を繋げていく。

「だから……せめてあの五人の子供達には、自分を信じて生き抜く力を身につけて欲しかったのです。御理解頂けないかとは思いますが」

「金色の瞳を持つ事が、何故に自分を信じる力になると?」

「あの黒い物質……四〇四号から得られるものはそれだけではありません。様々な特殊な力を得る事が出来るのです」

そこで鳴滝は沈黙した。だが、それは驚愕によるものではなかった。それは、隣でその横顔を見た尾関梨香にも感じ取れた。彼は何かを知っているのだ。
それは、あのショッピングモールの駐車場で口にした『マグス』と呼ばれる存在と関係しているのかもしれない。
尾関梨香自身にしても、きっと昨日までの彼女なら、今の玲子の話しなど鼻で笑い飛ばしていたかもしれない。これまでの案件で対峙して来たインチキ霊能者達に向かうように。
しかし、この島でのたった一日が、彼女を変えてしまった。非日常が彼女の中で日常の一部へと変わりつつあったのかもしれない。

その時、鳴滝のスマートフォンが振動を始めた。取り出した鳴滝の顔が一瞬曇る。

「誰からですか?」

「ああ、モナリザの岡ママだ。申し訳ないのですが、少しお時間を頂きます」

尾関をちらりと見た後、鳴滝は立ち上がって玲子へと頭を下げた。
0229ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/18(日) 20:44:26.36ID:4yMmidQLM
「お待ち下さい」

スマートフォンを片手に玄関へと向かおうとした鳴滝を、玲子が呼び止めた。

「お仕事のお電話なら、それなりにお時間もかかるかもしれません。念のためにこれを」

そう言って玲子が彼に手渡したのはこの家の合鍵だった。

「お借りします」

再び頭を下げて、鳴滝は急ぎ足で出て行った。その様子から、電話の相手が岡ママなどではない事を尾関梨香は気付いていた。
もし、本当に岡ママであれば、即座に切っていた筈だ。それに気付きながらも、何故に尾関梨香は後を追わなかったのか。

彼女は足が痺れて動けなかったのだ。自分の不甲斐なさに歯軋りしつつ、尾関は足の裏を手で押さえていた。

「ゆっくり脚を伸ばして下さい。鳴滝さんが戻って来るまではいいじゃありませんか」

「は……はい」

声を詰まらせなが、尾関は苦悶の表情を浮かべていた。それを見た玲子にも、最初の穏やかな笑みが戻る。

「怖いでしょう?私のような人間は」

「いえ……全然……怖いのはそこじゃなくて……」

「そこじゃなくて?」

「何て言うか……上手く言葉に出来ないんですけど……あ、やっぱりいいです」

前に伸ばした両脚を手で摩りながら、尾関梨香は伏し目がちにそう言っていた。

「きっと尾関さんは寂しくなったのね」

その意外な言葉に、尾関は目を丸くした。

「え?玲子さんの持つ特殊な力って、心を読む事ですか?」

「まさか……同じ女だからこそ、分かる事もあるんですよ」

そう言いつつ、玲子は尾関の湯呑みへとお茶を注ぎ込む。脚の痺れに悶える自分と違い、玲子のそのしなやかな所作に、同じ女と呼ばれた事にどこか恥ずかささえ感じてしまっていた。
0230ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/18(日) 21:04:58.92ID:4yMmidQLM
「きっと尾関さんが怖がっているのは、鳴滝さんが、どこか自分の手の届かない世界へと行ってしまいそうな事なのね」

「まさか!そんな事ありませんて!へい!」

動揺から尾関の言葉がべらんめぇ口調になっていた。

「大丈夫……大丈夫ですよ」

落ち着いた玲子の声に、尾関は心が穏やかになっていくのを感じていた。

「確かに、彼は何か他の人とは違うようですね」

「やっぱり……」

少しばかり肩を落としたように見えるその尾関へと、玲子はそっと湯呑みを差し出した。

「彼の持つ力は、本来、人間に備わっている第六感の強いものだと思います。広い意味で言えば、霊能力と言ってもいいのかしら」

「はぁ……」

語り出した玲子の話しの意図が読めず、尾関は思わずそう口にしていた。

「それに対して、黒い物質に触れた私達の力は超能力と呼ぶべきね」

「霊能力と超能力って、違うものなんですか?」

「そうねぇ。分かり易く例えれば……」

その頃になると、玲子の語り口も鳴滝のを前にしている時から比べれば、かなり親近感を憶えるまでに柔らかくなっていた。

「発現する力をお水に例えれば、私達の力はこれと同じね」

玲子がそう言ってテーブルの上に白いポットを置いて見せた。
0231ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/18(日) 23:17:31.60ID:Vktb8u0qM
「ポット……ですか?」

痺れの治った脚で正座し直した尾関は、少し前のめりになりながら問い返した。

「そう。私達の力はこのポットの中のお水と一緒で、一度に使える量には限りがあるの。勿論、人によってポットの大きさは違うのでしょうけれど」

そう言った玲子は、意味あり気な苦笑いを浮かべた。

「じゃあ、霊能力の方は?」

「それちらは水道のお水みたいなものかしら。ほぼ無限と言っても過言ではないでしょうね」

「霊能力、最強じゃないっすか!」

この時、玲子は理解した。この尾関梨香という人間は、興奮した時にべらんめぇ口調になる事を。

「そうでもないの。むしろ、その逆かもしれない」

「何でですか?力を使いたい放題じゃないですか」

「本物の霊能力者。そう呼ばれる人達は、蛇口のひとつでしかないの。元栓を止められれば、ただの飾りでしかないわ」

そう言って、憂いるように目を伏せた玲子の表情を見た尾関梨香の中に、彼女なりのひとつの仮説が湧き上がった。

「ひょっとして……玲子さんは元々……ですか?」

仮説を立証させるべく言葉を発した尾関梨香だったが、肝心の一言を言いそびれてしまっていた。

「そうなの。私も鳴滝さんと同じような人間だったわ」

玲子のその言葉により、尾関梨香の仮説が立証された。そして、同時に彼女の心に突き刺さっていた疑問の棘も消えた。
この家に来てからの鳴滝と玲子を結ぶ、目に見えない何かの繋がり。それが、たった今、ようやく分かったのだ。
だが、尾関は葛藤していた。何故なら、それを認める事は、自分と鳴滝の間に越えられない壁を自ら築き上げてしまうかのように思えてならなかったからだ。
0232名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
垢版 |
2018/03/19(月) 10:22:39.46ID:8+mvDOutK
昨日は怒涛の更新乙でした

こちらもコンプリートまで残り2人になりました
http://o.5ch.net/13pz2.png
0233ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/19(月) 21:16:41.31ID:7JZ8wr9gM
>>232
コンプリートまで、あと一歩ですね(^_^)
楽しみにしています!
0234名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
垢版 |
2018/03/19(月) 21:25:08.08ID:8+mvDOutK
>>233
すいませんw
連投になっちゃうからここには書きませんでしたけど
しましたw

ラスト↓
http://o.5ch.net/13qkh.png
0235名無しって、書けない?(庭)
垢版 |
2018/03/19(月) 21:30:38.62ID:dzN8qTJCa
めっちゃ深い展開になってきてるじゃないっすか!?
0236名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
垢版 |
2018/03/20(火) 12:51:09.60ID:jYPrTr2hK
アメブロも更新乙です
http://o.5ch.net/13qjo.png
0237ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/21(水) 09:54:30.29ID:kLQ1gHAFM
>>234
>>236
コンプリートお疲れ様でした!
偉業を成し遂げましたねww

>>235
さらにややこしく
なります
0238ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/21(水) 19:24:15.76ID:7jXZY4ySM
「大丈夫……大丈夫ですよ」

尾関の葛藤を見抜いたのであろうか。
川口玲子が再びその言葉を口にした。

「尾関さんの一番の武器は、その素直さだと思います」

「そ……そうっすか……」

いきなり何を言い出すのか?と戸惑った尾関の口から出た言葉はそれだった。

「その素直さがあれば、鳴滝さんをも超える事が出来ますよ」

「でも、私は勘が鈍いと言うか、よく怒られてます」

そう言た尾関は溜め息をひとつつき、肩を堕としてうな垂れた。

「では、第六感を鍛える方法を伝授しましょう。我流ですが、それでもよろしければ」

「鍛えれるものなんですか?第六感って」

「うな垂れているよりかは、いくらか前向きではありませんか」

眉を潜めた尾関梨香へと、玲子は呆れ顔でそう進言していた。

「ダメ元でやってみます!」

玲子の言葉に何かが吹っ切れたのか、尾関が声高に宣言する。

「ダメ元で……ですね。では、こちらへ」

彼女の失言に苦笑いで答え、玲子は尾関を誘うように、縁側の廊下を奥へと進んで行った。尾関もすかさずその後を追う。
前を歩く玲子の後を追いつつ、その長い黒髪の放つ漆黒の妖艶さに惹き込まれそうになった尾関の前に、照明の灯りと共に現れたのはタイル貼りの小ぢんまりとした浴室だった。
0239ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/21(水) 19:48:36.17ID:JyV1FMRoM
「ここで……第六感?」

何かしらの道場のような部屋を想像していた尾関梨香にとっては、拍子抜け以外の何物でもなかったようだ。

「生活に活かせるものは、やはり普段の生活の中からしか生まれないものですよ。第六感なんて、言うほど特別なものでもないのですから」

今や尾関梨香の師匠となった玲子のその顔からは、笑みはいつしか消え去っていた。その変化に気付いた尾関は、ただ黙って彼女の動きへと目を向ける。
その尾関の目の前で、玲子は浴槽に波々と張られた湯気立つお湯で手の平を濡らし、シャンプーの雫を一滴垂らして泡立てた。

「さぁ、手を出して」

玲子のその言葉に差し出された尾関の手の平の上には、ひと塊りの真っ白な泡が乗せられた。

「その泡を両手で軽く押してみて下さい。互いの手の平が触れないように」

玲子に言われるがまま、尾関梨香は挟んだ泡を両手で押していた。細かな泡から僅かな弾力を感じる。

「今度は少し離して」

ゆっくりと手を離すと、引っ張られる感覚が手の平に伝わる。

「それが気のイメージです。その感覚を憶えておいて下さいね」

そう言うと、玲子は尾関の手の泡をシャワーで洗い流した。

「次はこの浴槽のお水の表面に手の平を乗せてみて下さい」

事務的に繰り出される玲子の指示に素直に従い、尾関は微かに温もりを残す水の表面へと両手の平を当てた。
0240ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/21(水) 20:15:00.01ID:G7blQxlnM
「では、目を閉じて水を感じて」

目を閉じて意識を集中させた手の平に、緩やかな水のうねりが伝わって来た。
そのうねりに手の平を任せていると、指の先から徐々に水と一体化していくような不思議な感覚に襲われて、尾関梨香は思わず水面から手を上げてしまった。

「この水面の感覚が、練り上げられた気の感覚と近いものです。憶えておいて下さい」

「あの……」

流石の尾関も疑問の声を上げた。

「さっきから気の感覚と言ってますけど、それが第六感と関係あるんですか?」

「ええ、もちろんですとも。第六感を高める為に最も必要なものはイメージする力。そのイメージする力に必要なものは、素直な心です」

尚も事務的に、玲子は尾関へと語る。その彼女の前で尾関は首を傾げた。

「よく……分からないんですけど」

その尾関の言葉に、玲子はその奥を覗き込むかのように彼女の瞳を真っ直ぐに見据えた。

「ひょっとして……鳴滝さんは、たまに何もない場所を見つめていたりする事はありませんか?」

「確かに!猫みたいに、何もないところをじっと見てたりします」

唐突な問いではあったが、尾関にはいくつも思い当たる節があり、ついついそう即答していた。

「見てみたいと思いませんか?彼が見ている世界を」

意味あり気な玲子の問いかけに、尾関は一瞬戸惑った。それを見てしまったら、もう逃れられない。何からどう逃れられないのかさえ分からないが、彼女の中の何かが激しく警鐘を鳴らしていたのだ。
0241ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/21(水) 21:05:15.65ID:paCvcXkFM
「怖いのならここまでにしましょう。第六感など無くても、人は生きて行けるのですから。でも……」

尾関梨香の戸惑いに気付いた玲子が、寂し気にそう呟いた。

「でも……何ですか?」

尾関は堪らず、その玲子が言いそびれた言葉の続きを求めていた。

「ここから先の彼にとって、貴女は足手まといになるだけです。互いが心を痛める前に、
自ら身を引く決断も必要になるでしょう」

「納得出来ません!いきなり何を言い出すんですか?」

「これから貴方達が踏み込もうとしている世界は、言わば魔界。この国の法律でも手出し出来ないのです。ましてや、その法律に従う警察は言うに及ばず」

重みを帯びた玲子の声に、尾関は次の言葉を失い、ただ目の前の玲子の目を見つめ返した。

「頼れるものは己のみ。他人の心配などしている暇などないのです」

「それは極論です」

玲子の静かな威圧に怯みながらも、尾関が何とか言い返した。

「果たしてそうでしょうか?己を持たぬ者達が、いくら寄り集まったところで何かを成し得るとは思えません」

玲子の声に、更に深みが増して行く。その声に呑み込まれそうになりながらも、尾関は必死に抵抗していた。

「私は私。それの何が悪いんですか?」

「利己主義と個人主義は違うのです」

「ますます意味がわからない!」

そこで尾関がついに感情を露わにした。

「個を持たぬ者達の集まりは脆いのです。物言わぬ大衆(サイレントマジョリティ)に、何かを変える力など無いのです」
0243ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/23(金) 04:26:57.69ID:3rFXVbd4M
「それぞれが自己主張ばかりしていたら、纏まるものも纏まらないじゃないですか!」

それでも尾関梨香は喰い下がった。もう、引くに引けない。今日、会ったばかりの玲子に、幾度も危機を一緒に乗り越えて来た鳴滝との時間を、全否定されているような気がしてならなかったのだ。
全てを悟ったかのような彼女の態度が、いくらか癪に触った事もあるが。

「自己を確立しなさい。まず、己が何者であるかを知りなさい」

「急にそんな事言われたって、出来るわけありません」

「出来ないではなくて、そうしようとしないだけでしょう?」

狭い風呂場で、女二人が哲学的な論争を交わす。それは側から見れば何とも滑稽に思えた。しかし、当の本人達は大真面目に睨み合っている。

「だって、学校ではそんな事教えてくれませんでしたし」

「当然です。個を無くす為の教育ですもの」

「とにかく!」

そこで尾関がついに声を荒げた。

「私は私のやり方で、鳴さんとやって行きます!」

その尾関梨香の言葉に呼応するかの様に、玲子の瞳があの金色へと変わっていた。

「あなたに何が出来るの?」

何処かで聞いた言葉と何処かで見た瞳。
そうだ。あの煉瓦造りの教会で、ライフル女に言われた言葉。
あの時、何も言い返せなかった自分への後悔と、再び答えるべき言葉を見出せない自分への絶望感が尾関を包み込んだ。

「目を閉じて」

不意に差し向けられた玲子の声に、尾関は大人しく従っていた。

「何が見えても、目を開けないで」

その言葉と共に、尾関の額に玲子の人差し指が当てられた。

「何?……これ?」

漆黒の空間に光り輝く青い星々。あるものは小さく、またあるものは大きく光を放つ。それはいつか見た宇宙の写真のような。その中において、一際輝きを放つ星があった。
0244ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/23(金) 20:28:04.57ID:/JqTXcsvM
「中心で輝く星の色は?」

尾関の中に拡がる宇宙の奥から、玲子の声が響いた。

「黄色……」

「それが貴女自身の力を示す色です」

「これが私の力の色?」

「尾関さんの中に眠っている力です。それを活かすか眠らせたままにしておくかは、貴女次第……」

そう言った玲子が尾関の額から指を離すと、尾関が見ていた星々は瞬時にその光を消していた。

「何故、あんなものを私に見せたんですか?」

不可思議な世界を垣間見てしまった興奮を抑えつつ、尾関は努めて冷静に玲子へとそう問いかけた。

「百聞は一見にしかず。口でいくら説明しても、信じて頂けないでしょう?」

「信じる信じない以前に、頼んでもいないんですけど」

「余計な事でしたかしら?」

売り言葉に買い言葉。不満そうに眉をひそめて抗議する尾関梨香に、いつしか玲子も語気が強くなっていた。

「何の力か知りませんけど、私には必要ありませんから」

「そうですか。そこまで仰るなら、これ以上は干渉する事は避けましょう。但し……」

大人しく引き退るかと思われた玲子が、最後に含みを持たせた眼差しを尾関梨香へと向けた。

「鳴滝さんは、命を落とす事になるでしょう。貴女が変わらなければ……」

「どう言う事ですか?」

「それが彼の運命と言う事です」

「そんなの、無茶苦茶な屁理屈ですよ!」

「どう捉えようと、それも尾関さんの自由です。貴女が菅井友香と出逢った事も、運命の歯車のひとつでしかなかったのですから」

感情を露わにする尾関梨香とは対照的に、淡々と、そして機械的に川口玲子はその口から言葉を紡ぎ出す。その抑揚のない語り方が、考え込む鳴滝と何処かが似ていて、それが更に尾関の感情を煽っていた。
0246ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/24(土) 19:45:19.56ID:gNtkL5BSM
>>245
こちらこそ、保守ありがとうございます!
( ̄^ ̄)ゞ
0247ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/24(土) 19:45:44.43ID:gNtkL5BSM
「他人の運命を勝手に押し付けないで下さい!それに、鳴さんは玲子さんが思っている程、弱くはありませんから」

「そうね。彼は強いわ。けれど、彼がこれから相手にしようとしているのは、人でありながら人ならざる者なのです。彼の力をもってしても敵うかどうか」

腰に手を当てた臨戦態勢の尾関に対し、玲子はいつしか落ち着き払っていた。その態度が益々どこか鳴滝に似ていて、尾関もついつい声を荒げていた。

「そんなに強い相手なら、私がいくら頑張ったって敵いっこないじゃないですか」

「そうではありません。尾関さんだからこそ出来る事があるのです」

「その、私だからこそ出来る事とやらを教えて頂きましょうか?」

この問答が無意味だと知りつつ、尾関はどうにも後には引けなくなっていた。

「では……まず、その猫背を治す事から始めましょうか」

「あ……はい」

予想の斜め上からの指摘に、尾関は思わず胸を張って直立していた。

「綺麗ですよ。女性の猫背はみっともありませんからね」

「以後、気を付けます。あ、いや、そう言う事ではなくて……え?そこですか?」

直立不動のままで自問自答する尾関梨香を見て、玲子は口元を手で隠して笑顔を見せた。

「この人間世界には、男性か女性しかいません。そして、貴女は女性です。まず、自分が女性である事を自覚して下さい」

「そんな事……知ってます」

玲子のペースに引き込まれている事を感じて抗いつつも、今の尾関にはそう答えるしか出来なかった。

「自らが女である事を自覚した女性に、勝てる男性なんていません。第六感より女の勘。
それこそが尾関さんの武器であり、女性にしか出来ない事なのです」

幾らか謎めいてはいたが、その玲子の言葉は尾関にも何となくではあるが理解出来た。
尾関流に言えば、つまりはこう言う事だ。
女、舐めんなよ。その一言であった。
0248名無しって、書けない?(庭)
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2018/03/24(土) 20:10:34.38ID:XI2wFzERa
やべえ、ぐうたら探偵物語だと思っていたら壮大な世界観を孕んだ物語に目眩を覚えます

ちなみに僕も昔気功やってて手から気を出せます

体の中に気を回す修練てイメージする力が鍛えられるせいか妄想体質になってしまいましたがw
0249ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/25(日) 18:24:18.37ID:cTdmAiSCM
>>248
気功やってたって何気に凄いww

ぐうたら探偵をこれからどうするか悩み中
0250名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/25(日) 18:45:06.19ID:jeETyd8+K
自分は昔、自立訓練法をやってたから身体の皮膚温を微妙に上げられたぜ←もう多分無理
http://o.5ch.net/13wzd.png
0251ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/25(日) 22:15:17.67ID:GByffqgtM
>>250
チワンさんまでww
0253ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/26(月) 19:14:13.03ID:bujv163HM
少し時を戻し、川口邸を出た鳴滝はスマートフォンを耳に当てたまま歩き出していた。

「よぉ、芽依ちゃん。電話待ってたよ」

「誤解してるんじゃないかと思って。あの紙人形は、あたしがやったんじゃないから」

スマートフォンから響く声は、東村芽依のものだった。

「ほう……」

鳴滝はそう言うと、スーツのポケットから取り出したペン型のライトで足元の一点を照らしてしゃがみこんだ。

「信じてないみたいね」

「いや、そう言うわけじゃない」

鳴滝がじっと見つめているのは、地面に刻まれた二本の細い轍。おそらくはバイクのものだろう。

「あと、マグスって奴も本当に知らないから」

「だろうな」

敷地の奥へと続く二本の線は途中で途切れていたが、鳴滝はその先の闇へと足を進めた。

「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」

「ああ、聞いてるよ」

芽依の問いかけに気の無い返事をしつつ、
鳴滝が見つけたのは川口邸の裏手に隠れるようにして立つ離れの一軒家だった。

「とにかく、あたしはおじ様を敵に回すつもりは、これっぽっちもないからね」

「ビンゴ!」

手にしたライトが照らし出した離れの軒下に、青いビニールシートを被ったバイクを発見した鳴滝が思わずそう口にしていた。

「ビンゴ?何言ってるの?」

「ああ、いや、こっちの話だ。それより、そんな事を言うためだけに、わざわざ電話して来たわけじゃないだろう?」

そう問い返しつつ、鳴滝は離れの一軒家の玄関らしきドアの前に立った。
0254ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/26(月) 20:08:34.56ID:74PLCKMjM
「それがさぁ、おじ様達のいる家の前の道に、変な奴等がうろついてるんだけど。気付いてないかと思ってさ」

「変な奴等? 」

「男が三人。見た感じ地元の人間みたいだけど」

芽依の言葉に、鳴滝は離れの一軒家の玄関に背を向けて速足で歩き出した。

「日焼けの仕方と、筋肉のつき方からして漁師かな。ちょっとふらついてるから、多分酔っ払い」

「近くにいるのか?」

「あたし?そっちから見えない離れたところにいるよ」

芽依の言葉を聞き終える前に、鳴滝は敷地から外の道へと一歩足を踏み出していた。

「この暗がりでも、そこまで見えるのか?」

「あたしには『見える』の」

見渡すと、確かに向かいの石塀に寄りかかる様に男三人が並んで立っていた。
中央に立つのは五十代前後の男で、この寒空の下にも関わらず、上は白いティシャツ一枚しか身につけていない。
ボディビルダーとは違い、必要最低限の無駄の無い筋肉は真っ黒に日焼けして、ティシャツの白をより一層際立たせている。
その右隣に立つ男は、髪を金髪に染めて眉毛もあるのか無いのかわからぬほど細く剃っている。だが、まだ幼さの残る顔付きから、まだ十代なのかもしれない。
そして左隣りの男は、中央に立つ親分らしき男に負けず劣らずの筋骨隆々な体格で、黒い短髪の下の表情は、他の二人とは違い落ち着き払っている。

「化け物屋敷のお客さんって、あんたね?」

中央の親玉が、にやけた顔で鳴滝へとふらふらと歩み寄って来た。漂って来たのは独特な香りを放つ酒の匂い。おそらくは芋焼酎だろう。九州と言う土地柄を考えれば、別段不思議でも無いのだが。

「化け物屋敷とは?」

「とは?……あんた、東京から来たとね?」

鳴滝の口調を揶揄う様に、親玉の男が問い返して来た。

「まぁ、その近くかな」

「そんな遠かとこから、何ばしに来たとね?」
0255ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/26(月) 20:43:29.21ID:QGnB5XpeM
「何をしに来たか?その前に、あんたらこそこんな所で何をしてるんだ?」

酔っ払い相手に如何なものかと思いつつ、鳴滝も少し強気で問い返す。

「おいたちは、化け物屋敷に珍しく余所者が入って行ったって聞いたけん、見に来ただけたい!」

「だから、その化け物屋敷ってのは何なんだよ?」

「あんた知らんとね?ここに住んどるおなご(女)は、目の色が夜になると金色になる化け物っちゅう女たい」

「それが……どうした?」

横暴な態度の男に対し、鳴滝は鼻の頭が触れそうになるまで顔を近づけて問い返していた。

「あんたん為ば思うて言うとると。あの女に関わるとろくな事なかったい!はよ、逃げない」

「はぁん?」

その声を上げ時には、既に鳴滝は親玉の襟首を掴んで引き寄せていた。

「あんたが、彼女の何を知ってるってんだ?」

「のぼせ上がんな!あの女のせいで、子供達が死んだと!あんおなごは化け物たい」

「化け物化け物って……勝手に決めつけるんじゃねえぞ」

そう言い終わる前に、鳴滝は渾身の力で親玉を投げ飛ばしていた。

「なんや!きさん!(貴様)」

そう叫んで最初に殴り掛かって来たのは、金髪の例の若い男の方だった。鳴滝はその彼の右手拳を左手の甲で受け流し、右の手の平で彼の顎を打ち抜いた。
気を失なって崩れ落ちる金髪の奥で、残る一人は腕を組んで鳴滝を見据えていた。

「かかって来いよ」

彼には珍しく、鳴滝が先に挑発していた。
その言葉を受けて、残る短髪の男が左足を軸に右脚の蹴りを繰り出した。その脚を両腕で受け止めた鳴滝へと、間髪入れず男の左拳が襲いかかる。
それを間一髪かわした鳴滝へと、背後から細い包丁の刃が差し向けられた。
0256ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/26(月) 21:08:26.46ID:aTM0SEWhM
「余所者が、偉そうにすんな」

そう言い放ったのは親玉の男だ。その黒い腕の先に握られていたのは、魚を捌く為の柳刃包丁と呼ばれる刃物だった。

「やれんのかよ?魚は捌けても、人を捌いた事ねぇだろうが」

喉元に刃物を突きつけられても尚、鳴滝は強気にそう言い返す。

「やってやろうやんか。覚悟せんかい」

その言葉とほぼ同時に、細い包丁の刃先が鈍い金属音と共に砕け散った。

「痛っ!」

包丁から伝わった衝撃に、自らの右手を抑えつつ、親玉の男が踞る。
何が起こったか、見当もつかず呆然とする短髪の男の前で、鳴滝だけが笑みを浮かべていた。

「化け物なんて勝手にレッテル貼って忌み嫌う前に、てめぇらの無知を恥じろ!」

そう叫ぶと同時に、鳴滝は目の前で立ち竦む短髪の男の顎を右肘で下から打ち上げる。不意打ちを喰らった男は、そのまま背後へとまるで棒切れの様に倒れ込んでいた。

「お前……俺を殺す気か?」

まだ通話状態のままにしてあったスマートフォンを耳に当てた鳴滝が言った。

「ちゃんと包丁だけを狙って撃ち抜いたんだから、褒めてよね」

その鳴滝のスマートフォンから、そんな東村芽依の声が響いた。

「いや、危な過ぎるだろ?手元が狂ったら俺に弾が当たってたぞ」

「あたし、絶対外さないから」

その芽依の言葉に、鳴滝は苦笑いで溜め息をひとつ漏らし、側で踞る親玉の後頭部へと止めの蹴りを繰り出していた。
0257名無しって、書けない?(広西チワン族自治区)
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2018/03/27(火) 12:36:48.91ID:NH5jXNxKK
めいめいが凄腕すぎて感動w
http://o.5ch.net/13yru.png
0258ニャンコ坂46(茸)
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2018/03/27(火) 18:02:20.96ID:BG8sFQdtd
>>257
すずもん、カッコいい!

めいめいの凄腕の謎をこれから解き明かす予定
0259ニャンコ坂46(茸)
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2018/03/27(火) 18:02:45.74ID:BG8sFQdtd
「芽依ちゃん、君はなかなかの策士だな」

「何のこと?」

「ちょっと待ってろ」

そう言った鳴滝はスマートフォンを内ポケットへと入れて、気を失って道に横たわる男達を石塀へと引きずり寄せていた。

「こいつらをけしかけたのは君だろ?」

再びスマートフォンを耳へと当てた鳴滝の言葉はそれだった。

「どうしてそう思ったの?」

「君が、こいつらを漁師だと言ったからさ」

川口邸から出た表の道路を、鳴滝は右へと向かって歩き出した。刃物が砕けた飛んだ方向から推測して、狙撃ポイントはそちら側になる。
芽依の使用するライフルの射程距離から考えると、そう遠くない場所に彼女達はいるはずだ。

「それだけの事で?」

「それはこちらのセリフだな。あの身なりだけで、彼等を漁師だと普通は判断出来ない」

「何となくそう思っただけよ」

「それに料理人ならともかく、その辺の漁師が柳刃包丁みたいな長い刃物は持ち歩かないさ」

「飲み屋で借りて来たんじゃない?」

「包丁は料理人の命だぜ。ましてや酔っ払いに貸したとなると、下手すりゃ殺人幇助になりかねない」

「それはそうかもね」

電話の向こう側の東村芽依は、あっけらかんとしている。その姿を探すべく、鳴滝は一人通りを歩く。

「それに『どうしてそう思ったの』なんて言い方は、答えを知っている人間のものだからな」

「おじ様、細かい事を気にするんだね」

「運が悪い事に、俺はその細かい事を気にするのが仕事の探偵なんだよ」

そう答えつつ鳴滝が歩く武家屋敷通りの先は少しばかり下り坂になっており、石畳が終わった所で信号機が待ち構えていた。
0260ニャンコ坂(catv?)
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2018/03/28(水) 19:46:54.28ID:6fu2qOKwM
とり
0261ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/28(水) 20:04:33.06ID:Z1BerneZM
「そこにいたのか」

信号機の先に続く道路の路肩に停められている赤い軽自動車を見つけた鳴滝が呟いた。
跳ね上げられたハッチバックドアの中で、長い銃身のライフルを構えた人影が何とか確認出来た。

「おいおい、何丁のライフルを持ってるんだよ?」

助手席の背もたれに寄りかかり、荷台で東村芽依が抱えているライフルは昼間のものとは明らかに違う形をしていた。

「TPOで使い分けてるの」

「何者なんだよ、君らは」

そこで鳴滝の進行を阻むように、信号機が青から黄色、そして赤へと変わっていた。

「探偵なら、自分で調べたら?」

「金にならない仕事はしない主義なんでね」

「そのうち嫌でも知る事になるかもよ」

そう言った東村芽依がハッチバックのドアを閉めるのと同時に、軽自動車のブレーキランプが点灯した。

信号機は未だに赤。鳴滝はスマートフォンを耳に当てたまま、交差点の一角で立ち竦んでいた。

「何故、俺を試す」

鳴滝のその問いかけに、芽依からの返答は無かった。そして軽自動車は走り出す。

「クロウは本当にこの島に来てるのか?」

走り去る車のテールランプを見ながら、鳴滝は尚も問いかける。

「来てるよ。今も何処からか見てるかも」

そこで、やっと芽依の声が返ってきた。
0262ニャンコ坂46(catv?)
垢版 |
2018/03/28(水) 20:53:33.40ID:X3eC4tqqM
「そのクロウが現れた時、君らはどうするつもりなんだ?」

「そんなの決まってるじゃない」

芽依がそう答えた時には、彼女達の乗る車は突き当たりの角を右へと曲がって姿を消してしまった。
ようやく青へと変わった信号機へと背を向けて、鳴滝は尾関梨香が待つ川口邸へと向けて坂道を登り始めた。

「殺し屋の殺し屋たるクロウを殺して名を挙げるつもりか?」

「まさか。クロウを仕留める。それがボスの命令。ただそれだけ」

「そんなに簡単に仕留めれる奴じゃないだろう」

「あたし達なら出来るわ」

「何故、そう言い切れる?」

「あたし達は最強だから」

そこで鳴滝は足を止めて、道の先へと目を凝らした。彼が端へと寄せた男達の姿が無い。
目を覚まして逃げ帰ったのか、それとも……
最悪の予感に鳴滝は走り出した。
川口邸の前に辿り着いた鳴滝の前に、石畳の奥から、金髪の若い男が投げ飛ばされたように転がり出た。
反射的に鳴滝は男のこめかみへと蹴りを入れ、石畳の奥へと目を向けた。
通りの脇に立つ街灯の淡い光の中に立つひとつの人影ある。だが、それはあの男達のものではない。

「探したぜ、平手友梨奈」

そこに立つのは、紛れもなく鳴滝がここまで追って来たその本人だ。ライブハウスで着ていた赤いジャケットを羽織り、闇の奥から鳴滝を見据えていた。
そして、その背後から長濱ねるも姿を現した。こちらも無表情に鳴滝へと目を向けている。

「殺してないだろうな?」

平手友梨奈の両脇に横たわる二人の男に気付いた鳴滝が、揶揄うように問いかけた。

「殺す価値さえないよ」

それが鳴滝が初めて聞いた平手友梨奈の声だった。
0264ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/29(木) 19:41:06.60ID:lcuI+9I/MNIKU
「なんだよ、そのやりきった感満載のドヤ顔は」

男二人をいとも簡単に打ち倒す腕に感心しつつも、その見下すような眼差しが鳴滝の癪に触ったらしい。

「別に」

前髪を右手で掻きあげて、平手友梨奈は首を傾げながらそう言った。十代の子供にありがちな反抗的な態度に、鳴滝は苦笑いを浮かべる。
これが尾関梨香だったら、その鼻を摘んでやるところなのだが。

「とにかく、俺は敵じゃない。菅井友香もな」

「だから、なに?」

「だから……もう逃げ回るな」

「僕は逃げてなんかいない」

確かに、ただ逃げ回っているわけでもない。実際、鳴滝に襲いかかって来たのだから。

「ああ、そうだ……」

そこで鳴滝は、何かを思い出したような声を上げた。

「ほら、忘れ物だ」

鳴滝はそう言うと、内ポケットから取り出したハンカチに包まれたダガーナイフを平手友梨奈へと差し出した。
だが、彼女は直ぐには受け取ろうとしなかった。ジャケットのポケットへと両手を入れたまま、鳴滝の真意を探るかのように彼の目を見つめていた。

「昼間の続きをやるかい?」
0265ニャンコ坂46(catv?)
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2018/03/29(木) 20:44:41.27ID:7F7LR+aKMNIKU
鳴滝の意味深な言葉と同時に、平手友梨奈は右足でダガーナイフを持つ彼の手を蹴り上げた。
反射的に後ろへと下がった鳴滝の目の前で、宙を舞うナイフを平手友梨奈が受け取り、その切っ先を彼へと突き出す。
鳴滝は向けられたナイフを持つ平手友梨奈の腕を、弧を描くように左手で掴み取り、右手を添えて身体の回転を加えて捻り上げた。
堪らずナイフを離した平手友梨奈だったが、自らも身体を回転させて鳴滝の拘束から逃れつつ、彼の右足へと蹴りを打ち込んだ。
衝撃に膝から崩れ落ちるかと思われた鳴滝だったが、彼はその体重移動を利用して引き寄せた平手友梨奈の襟首を締め上げた。

「憶えておけ。本物の殺し屋ってのは、道具なんて持ち歩かない」

掴まれた左手を背中へと回され、動きを封じられた平手友梨奈の背後から鳴滝が低い声で囁いた。

「現場にある物で遂行するんだ。その方が足がつかないからな。だが、究極の殺し屋ってのは……」

そこまで語った鳴滝は、左手の人差し指と中指を彼女の喉元へと当てた。

「己自身が凶器だ」

平手友梨奈は目を見開いた。それは彼の言葉によるものではない。背後から伝わる氷のような彼の殺気によるものだった。

「やめなさい!」

川口玲子の甲高い声が響いた。

「何をしているんですか!」

「教育的指導を兼ねた実戦訓練です」

「そんな指導は必要ありません!」

飄々と答えた鳴滝の声に、川口玲子の整った眉が吊り上がった。
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