【欅坂小説】欅坂の道化師【2冊目】
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
欅坂46のメンバーを登場人物とした小説を書いています。メンバー以外の人物はもちろん架空の人物です。前スレはまだ書き込めますが、長文が書けなくなった為に新しくスレを立ち上げました。
前スレ
http://itest.5ch.net/test/read.cgi/keyakizaka46/1509967598/
保管倉庫
https://ameblo.jp/nyankozaka/ 「ですよね」
その言葉と共に鳴滝は平手友梨奈の拘束を解いた。だが、彼女は立ち竦んでいた。魂を抜かれたように。
「こんな時間に近所迷惑です!」
「いや、これには事情がありまして……」
頭を掻きながら言い訳を始めた鳴滝に構わず、川口玲子は背後に控えていた尾関梨香からバケツを受け取り、足元で気を失っている男達へとその中の水をぶちまけていた。
「ここで何をしているんですか!不法侵入です。警察を呼びますよ」
奇声を上げて目を覚ました男達へと、川口玲子の喝が飛んだ。
「ちっと待てって!おいたちも訳がわからんと。もう来んけん、直ぐ帰るけん」
そう言って慌てて立ち上がった親玉の男の前で、鳴滝は拾い上げたダガーナイフを手に不敵な笑みを浮かべた。
「オプションで銃刀法違反も付けてやろうか?」
「それはおいたちのもんやなか!違うて!」
「じゃあ、あの包丁は誰のだよ?」
「ごめんて!見逃してくれ」
手を合わせて懇願しながら通りへと出た親玉の男に続き、短髪の男も逃げるように後に続いた。まだ気を失ったままの金髪の男を抱き抱えるようにして、男三人は去って行った。
「なんだか……疲れたな」
その後ろ姿を見ながら鳴滝が呟いた。
「お話しする事はまだありますが、今夜はこれでお休み下さい。お風呂も準備してありますから」
先程の般若のような顔から一転し、川口玲子は穏やかな声でそう鳴滝へと勧めた。
「しかし……」
振り返って平手友梨奈と長濱ねるを見た鳴滝が訝しげに言葉を切った。
「この子達は、もう逃げも隠れも致しません」 「逃げ隠れはしないでしょうが、襲って来られるのは御免です」
その鳴滝の視線は、立ち尽くす平手友梨奈へと向けられていた。
「あれは……サプライズだから……」
「いや、あれはサプライズとは言わない。トラップって呼ぶんだよ」
鳴滝の視線に俯いた平手友梨奈へと、鳴滝のツッコミが入る。
「どっちだって同じだよ」
「本物のナイフ使ったサプライズは、もう殺人未遂と変わらない」
「僕は……殺し屋なんかじゃない」
その平手友梨奈の言葉が沈黙を呼んだ。晩秋の冷たい風がその場にいる者達の高揚を下げながら吹き抜けて行く。
「何処で誰に訓練されたんだ? 」
鳴滝が不意に問いかけた。
「僕が……父親と呼んでいた男だよ」
「父親?」
そこで鳴滝は説明を求めるように川口玲子へと視線を向けた。だが、彼女は目を閉じて沈黙を貫くのみだった。 アメブロも合わせての更新乙です
てちこ登場にドキドキです
最近欅坂板でのお絵描きのモチベが下がり気味でしてなかなか貢献できずすまんです
ひらがなちゃんの番組が始まってもあまり変わらないようなら引っ越しも考えております(笑) >>268
チワンさんのイラストのファンの私としては
チワンさんが引っ越してしまうのは寂しいので
がなちゃん達には頑張ってもらわないと(´ー`) 沈黙する玲子に代わり平手友梨奈が口を開こうとしたその時、彼女の頭を鳴滝の手の平がそっと押さえ込んだ。
「本当に辛かった事は、そう簡単に誰かに話せるものじゃない。だから、今は無理をするな。話したくなった時に聞かせてくれ。ただし……」
そう言った鳴滝は、平手友梨奈の両肩を掴んで彼女の顔を覗き込んだ。
「これだけは信じてくれ。俺は君達を守るためにここまで来たんだ。どんな奴が相手だろうと、俺がぶっ飛ばしてやる」
「僕は一人でも……」
彼の言葉に反論しようとした平手友梨奈の頬を、鳴滝は両手で押さえ込んでいた。
「一人きりじゃ、大人にはなれないんだよ。自分以外の誰かとの関わりの中でしか、人は成長出来ないんだ」
目を丸くした平手友梨奈を見て、鳴滝はやっといつもの彼らしい悪戯な笑みを浮かべた。
「ガキはガキらしく、大人に甘えておけ」
「僕はガキじゃない!」
鳴滝の手を振りほどき、平手友梨奈が叫ぶ。
その彼女の前で、鳴滝は腕を組んで尚も笑みを浮かべていた。
「俺に勝てたら、ガキじゃないと認めてやる」
挑発するかのような彼の言葉に、平手友梨奈が再び身構えた時、その横を尾関梨香がつかつかと鳴滝の前へと進み出たと思われた瞬間、鳴滝は膝から崩れ落ちていた。
「これ以上、話しをややこしくしないで下さい!」
「お前、自分が馬鹿力だと、いい加減に自覚しろ!」
鳴滝を沈めたのは、尾関梨香の得意技である渾身のローキックだった。 「高校生相手に大人気なく挑発するような人間に、手加減する必要は無いと思いますけど?」
「力加減も出来ない女に諭されているかと思うと、なんだか悲しくなって来るよ」
「自分だって、女子高生相手に本気出してたじゃないですか」
「本気?あれが俺の本気だと思ったのか?ちゃんちゃら可笑しいぜ。ぺったんこ狸君」
「ぺったんこ狸?何ですか、それ?」
そこで尾関は眉を顰めて首を傾げた。
「自分の胸に手を当てて、よく考えてみろ」
鳴滝のその言葉を受けて、尾関梨香は素直に自らの左手を胸へと当てた。
「それが全ての答えだよ。ぺったんこ狸君」
シャーロック・ホームズを気取りつつ、尾関梨香をワトソン君に見立てた鳴滝が、その右手の人差し指を立てていた。
「おりゃ!」
気合いの声と共に、尾関のローキックが再び炸裂したのはその直後だった。
「てめぇ!同じ所に何度も蹴りいれんな!」
そう叫んだ鳴滝は、既に左脚を押さえて崩れ落ちていた。
「セクハラおやじへの正当な制裁です」
鳴滝の前で仁王立ちした尾関が腕を組んで言い放つ。
「探偵が事実を伝えて何が悪い」
「真実は違います。私は着痩せするタイプなんです!」
腰に両手を当てて胸を張った尾関を、鳴滝は寂しげな表情で見上げた。
「うん……まぁ……そう言う事にしておこう」 「何ですか?その哀れむような目は?」
膝を着いて踞る鳴滝を上から目線で尾関が煽る。それでも尚、鳴滝は哀し気に尾関を見上げていた。
「言いたい事があるなら、はっきり言ったらどうですか?」
その彼の煮え切らない態度に、堪らず尾関が答えを急かした。
「ロッククライマーでも躊躇しそうな断崖絶壁だなぁ……と、そう思っただけさ」
「せいっ!」
鳴滝が語り終わる前に、尾関の気合いの声が重なった。再び繰り出されるであろう彼女の蹴りに、両腕を交差して身構えた鳴滝の予想を裏切り、尾関が繰り出したのは頭上から振り下ろされた鉄拳だった。
「いっ!……」
言葉にならない声と共に、彼は頭を抑えて完全に崩れ落ちていた。
「もう、それぐらいにして下さい」
その二人の攻防を、呆れた声で川口玲子が止めに入った。
「鳴滝さんは不謹慎過ぎます。いくら部下とは言え、体型をどうこう指摘するのは女性に対して余りにも失礼です」
「おっしゃる通りです。以後、慎みます」
玲子の正論に、抗う言葉を今の鳴滝には見出せなかったようだ。
「尾関さんも、暴力に訴えるのは謹んで下さい。自らを女性と主張するのであれば」
「すいません……」
尾関梨香も返す言葉もなく目を伏せた。
その一連の流れを、平手友梨奈はただ沈黙と共に見守っていた。彼女をそうさせていたのは、あるひとつの疑問からだった。
玄関から中へと入った川口玲子に続き、長濱ねると鳴滝が後を追う。
その鳴滝に続き歩き出した尾関の肩を、平手友梨奈が背後から引き留めた。 「ちょっと……いいかな?」
自らの疑問の答えを得るべく、平手友梨奈は控えめに尾関へとそう問いかけていた。
「どうしたの」
自らの上司たる鳴滝の命を狙い、彼にも引けを取らない体術を持つ平手友梨奈の声に、尾関梨香は戸惑いながらも何とかそう答えていた。
「何故?」
「何故って、何が?」
彼女の意図が読めず、尾関は素直にそう問い返していた。
「何故、君の蹴りはあの人を倒せるの?」
「そんな事聞かれも……ただ思い切り蹴ってるだけだから」
「怖くないの?」
「何が?」
「あの人が」
「大丈夫だよ。だって鳴さん、女子供には手を挙げない人だし。だから、こっちはやりたい放題!」
そう言った尾関は、ついついいつもの調子で親指を立てた右拳を突き出していた。
「でも……さっきは僕を抑えつけたよ」
「あれは私もびっくりしたな。初めて見たかも。でもさ……」
尾関は笑顔を浮かべた。自分でも何故だか分からない。ただ、笑顔が湧き上がって来たのだ。
「それって友梨奈ちゃんの事、子供とは見てないって事じゃない?ちゃんと一人前と認めてるんだと思う」
「そうかな……」
「きっとそうだよ。でなきゃ、本気で向き合ったりしないよ」
俯くように目を伏せた平手友梨奈に、尾関は励ますかのようにそんな言葉を投げかけていた。
「本気で……向き合う?」
「そう。あの人ってさ、口は悪いけど根は優しいんだよね。それだけに不器用って言うか……何て言ったらいいんだろう?素直じゃないって言うか……」
「何となく……分かった」
困り顔の尾関へと、平手友梨奈が初めて笑顔を見せた。その彼女の笑顔に、尾関梨香も笑顔で応える。
「正直に言うとさ、友梨奈ちゃんが羨ましいよ……。私は何も出来なくて……格好悪いよね」 >>275
そんな時を耐えてこそ、本当の物語が生まれて来るんでしょうね
作家は天職でないと勤まらない
つくづくそう思いますな
ところで、ずっと気になってたのですが、タイトルの『欅坂の道化師』にはどんな思い込められているのでしょうか
包み隠したようでありながら、とても素敵なタイトルですので、気になります >>276
ありがとうございますm(_ _)m
物語りを書く人間にありがちな「これでいいの?」的な底無し沼にはまりかけてます。ラストまで知っている書き手だからこそ陥る罠なんですが。
「欅坂の道化師」の意味は、すっかり存在感をなくした守屋エージェンシーの立花涼介が解き明かしてくれます。それまでのんびりとお待ち下さい。 「格好悪くなんかないよ。あの人を追い込めるんだから」
今度は平手友梨奈が尾関梨香を励ます側に廻っていた。
「私には手加減してるからね」
尾関の笑顔は、いつしか苦笑いへと変わっていた。
「僕はそうは思わないな」
真剣な顔付きで平手友梨奈が言った。その表情に、尾関も自然と真顔になっていた。
「どう言うこと?」
「あの人……ただの格闘技の経験者ってだけじゃないよね?」
平手友梨奈の問い掛けに、尾関梨香は声を詰まらせた。目の前に立つ彼女の瞳を見つめたまま沈黙するしかなかった。
答えようにも知らないのだ。鳴滝の過去を。
「自慢する訳じゃないけれど、僕だってそれなりに訓練はして来た。それでも、あの人には敵わなかった」
「それは、ほら、同じ探偵でも鳴さんの場合は厄介な案件ばかりに首を突っ込む人だから」
苦し紛れに何とかそう答えたものの、尾関自身もよく分からない答えだと感じて、その戸惑いから視線を平手友梨奈から庭の花壇へと向けていた。
「そうだよね。型にはまった動きじゃないから、実戦で鍛えて来たんだと思う。だからこそ……」
何かを言いかけて沈黙した平手友梨奈に、尾関梨香は無意識に彼女へと視線を戻していた。
「尾関さんの打撃を防げないのが見ていて不思議だった。何故だろう?って……」
尾関梨香の視線に応えるように、平手友梨奈が語り出した。
「きっと尾関さんの打撃は、あの人でも予測出来ないんじゃないかな?」
「いやいや、ただ本気を出す程の相手じゃないからだよ。弱い者イジメはしない人だから」
平手友梨奈の推測に、照れ隠しではなく本気で尾関は困り果てていた。そこまで深く考た事など無く、本能の赴くままにローキックを繰り出していたのだから。 >>278
モチべ低下の中ご苦労様でありますm(__)m >>279
保守ありがとうございますm(_ _)m
絶不調でございます…… 「尾関さんは弱くない」
あの鳴滝に対し、強さにおいては及ばずとも遠からず。そんな平手友梨奈のその言葉に、尾関梨香は彼女の目を見つめて硬直していた。
「だって……あの人が認めて側に置いている人なんだから」
続けて語られた平手友梨奈の言葉に、尾関はますます動揺していた。
「認められてなんかいないよ。あの人、私の事を狸だって言ってるし。聞いてたでしょ?」
「狸は化ける。あの人はそう言いたいだけなんだと思う」
動揺にあたふたする尾関梨香を鎮めたのは、平手友梨奈のその一言だった。
「化ける?」
自分より年下の平手友梨奈の大人びたその言葉に、尾関梨香は即座にそう問い返していた。
「尾関さんの可能性。あの人はそれを誰よりも知っているのかも」
「そんな大袈裟な。鳴さんは、そこまで繊細じゃないから」
度重なる動揺からようやく自分を取り戻しかけた尾関が、上から目線で平手友梨奈へそうと言い放った。
「繊細だからこそ、素直になれないんじゃないかな?」
すぐさま返された彼女の言葉に、尾関は目を見開いた。
そんな事は尾関自身もよく分かっている。だが、それをこの短時間で見抜いた平手友梨奈と言う少女の感受性の強さと存在感に、尾関は自身を失いかけていた。
とても敵いっこない。自分より年下の彼女だが、きっと自分の想像も出来ない程の修羅場を見てきたのだろう。その想いが強くなればなる程、何故だが鳴滝が遠い存在になって行く気がして尾関は目を伏せて俯いていた。
「尾関さんが羨ましいよ」
不意に投げかけられた平手友梨奈の言葉に、尾関は無言で彼女の顔を見た。
「もう少し早くあの人に会えてたら、僕も変われたかもしれないな」
「何言ってるの?友梨奈ちゃんはまだまだこれからじゃない」
彼女の意図を理解出来ぬまま、尾関は即座にそう言い返していた。 「そうかな……未来が見えないんだ……僕には……」
その彼女の言葉に返す言葉が見つからず、尾関も黙り込んだ時、川口邸の玄関のドアが勢い良く開かれた。
「なんだ。狸とカワウソが喧嘩しているのかと思ったら、お前達だったのか」
そこに玄関から顔を出したのは鳴滝だった。
「カワウソって……」
「ちょろちょろとすばしっこいところとか似てないか?あと、顔もそれっぽいだろ?」
呆れ顔の尾関へと、隣に立つ平手友梨奈を指差しながら鳴滝が呟いた。
「失礼ですよ!」
「仕方ないだろ。俺は繊細な男だから」
「ひょっとして……話しを聞いてたんですか?」
そう言って尾関梨香は眉間に皺を寄せた。
「色気の無いガールズトークだったな」
「最低……」
「文句は中で聞くから、さっさと中へ入れ。風邪ひいちまうぞ」
鳴滝の進言にも女二人は彼の顔を見つめたまま動こうとしなかった。だが、その瞳の奥に秘めた思いはそれぞれに違っていた。
「あのなぁ……」
今度は鳴滝が呆れ顔で一歩外へと踏み出した。
「どんな金持ちでも過去には戻れない。
お前と俺とで積み重ねて来た時間を奪う事は出来ないんだ。それとも、簡単に超えられる程の薄っぺらい関係だったのか?」
尾関へとそう語った鳴滝は、その目を平手友梨奈へと向けた。
「未来なんて見えなくて当たり前だ。だからこそ希望って言葉があるんだ。それに、出逢いに早いも遅いもないんだ。変えられない過去に拘るより、変えていける未来を信じて馬鹿やってる方が、よっぽど楽しいぜ。だろ?」
僅かに平手友梨奈の顔に笑みを確認した鳴滝は、再びひとり玄関の中へと入った。
「分かったらさっさと入れ。小動物コンビ」
それだけ言い残し、彼は奥の部屋へと姿を消した。 どうも続きが書ける気がしないので、板違いと知りつつ、いつだったかに約束したヤクザ屋さん関係の経験談を書いてみます。
まずは超ライトなものから。
過去に、修羅の国と呼ばれる九州の福岡で仕事をしていた時のお話し。
新規のお客様で、どこからどう見てもヤクザ屋さんだと分かる人がいました。
人相の悪さに加えて、ブランド物のスーツを粋に着こなしたその人は虎キチと言う類いの人間で、阪神タイガースが試合で負けた翌日は頗る機嫌が悪い人だったのは記憶しています。
まぁ、それは可愛い部類に入りますが、ある日、訪問した最中に彼の携帯に電話がかかって来ました。
「はぁ?自殺した?」
彼の衝撃的な返答に、私は直ぐにでも帰りたかったんです。でも動けない。
「馬鹿野郎!鑑識が来るまで中に入るな、ボケ!」
鑑識?え?どう言うこと?
唖然とする私に、彼がやっと自分の身分を明かしてくれました。
「ワシ、京都府警のモンや。詐欺師追っかけてここまで来たんや」
おいおい……どっちがヤクザ屋さんが見分けつきませんって……。まぁ、確かにそのマンションはウィークリーだったので、違和感は感じてましたけどね。
「怪しい奴おったら連絡してや」
そんな事言われても……。
怪しい奴なら幾らでも知ってはいましたが、それでもお客様。人命に関わる証拠を出せない限り、そうそう簡単に情報を提供なんて出来ません。
いわゆるオレオレ詐欺の元締めのヤクザ屋さんを追いかけて、福岡まで来ていたらしいです。大変な仕事ですよね。警察って。 これも福岡での経験談。
私のいた業界では、ヤクザマンションと呼ばれる物件がありました。
とにかくヤクザ屋さん入居率が高いマンションがあったのです。
そのマンションの一室に居を構えるヤクザ屋さんが私の顧客だった時がありました。
「なぁ?このシミ落ちるかいな?」
ある日、そのヤクザ屋さんが私にブルゾンの袖口についた食べこぼしであろう茶色いシミを見せて来ました。
「さぁ……どうでしょう?」
そう答えつつ、私は呆然としていました。
何故なら、そのブルゾンを差し出したヤクザ屋さんのスウェットが、血まみれだったからです。
彼自身は怪我などしていない様子だったので、その血はおそらくは返り血。
「この服、気に入っとるとやけど」
「クリーニング屋さんに相談された方が良いかと……」
「それもそうやな」
床に敷かれた虎の皮製の敷物の上で頷くヤクザ屋さん。
それから一ヶ月以上、連絡が取れなくなりました。留守電にメッセージを残すも、返答無し。
ついに殺られたか……そう思っていた時、ヤクザ屋さんから連絡が来ました。
「おいは何もしとらんとに、サツが……」
要約すると、この一ヶ月以上は鉄格子の中にいたそうです。
いやいや……あれだけの返り血を浴びるって、傷害事件起こしてるやろ……。
意味がわからない。血まみれなのに、袖口の小さなシミが気になるなるなんて……。
不思議な人達ですよね。ヤクザ屋さんって。 これもまたまた福岡でのお話し。やはり福岡は修羅の国。
ある年の師走。お得意様から、アルバイトの話しを持ち掛けられました。二時間で一万円。仕事内容は大掃除。
特にその日曜日に予定も無かったので、のほほんと承諾。
迎えにに来たお得意様の車に乗り、連れて行かれたのは監視カメラだらけの建物。
その建物の玄関前に立つヤバそうな人に、お得意様が一礼。
「こいつはうちに入った若い衆です」
は?と思いつつ、私も頭を下げました。
対するヤバそうな人は何か言っていましたが、それは憶えていません。
その後、建物の中に入ると、もっとヤバそうな連中がうじゃうじゃ。
うん。ここって組事務所だよね。そう気付いた私でしたが、事実はその上を行っていました。菱形のマークで有名なあのヤクザ屋さんの福岡における本拠地だっだのです。
そりゃあ、ヤバそうな奴がいたって当たり前。後悔先に立たず。取り敢えず、隅に置いてあったパーテーションの後ろに隠れましたとも。なるべく関わりたくない……。
次々に入って来る親分と、その度に一斉に頭を下げる他の組の若い衆。
最悪なシチュエーション。そして更に最悪な事に、若頭らしき人に発見される私。
「そん所で何しとるんや?」
その一言と共に、若い衆の最前列へと引き出される私。
今現在はどうかは知りませんが、当時は若い衆はジャージやスゥウエットの様な服しか許されていなかったらしく、それなりの地位にいる人間しかスーツを着れないそうで……。その時の私は、ジーンズにブルゾン(MA1)……ヤバい……。
最前列で取り敢えず頭を下げながら、どうしたものかとお得意様に視線を向けると、奥の応接用のソファーで踏ん反り返るお客様。
騙された……そう思うも、既に後の祭り。
ならば楽しもう。なかなか経験出来ない事ですしね。そう開き直って、成り行きに任せていると、小さな親分が入って来ました。
私は背の高い方ではないのですが、その私よりも背が低い。そのヤクザ屋さんが、若い衆を引き連れてご登場。
その親分さんは、いわゆる経済ヤクザ屋さんと言われる人で、商売をしながら凌ぎを上げる人らしく、それなりに有名な人だと隣の若い衆が教えてくれました。 「だから、何?」
反抗しつつも、それを言葉に出来ない小心者の私はただ流れに身を任せるのみ。45度の最敬礼で親分衆を迎えつつ、逃げ場所を探す私。まさにカオス。
そして始まる大掃除。私は逃げるように二階にある広間へと逃げ込みました。しかし、それが大失敗。
縦長の窓を拭いていると、入り口からドスの効いた怒声。
「きさん!(貴様)」
その声に我に返って、私が見下ろした足元には、あの菱形のマーク。
終わった……グッバイ、俺の人生…… 。
その私の予想を遥か斜め上から、叱咤する声が……。
「この靴は、誰のもんや!」
その彼の手にした靴を見て、私は銷沈。
俺の靴やん……。
覚悟を決めた私に、ヤクザ屋さんの意外な一言が。
「俺と同じ靴やんか!」
いやいやいや……そんな事で怒鳴るなよ……。諦めから悟りを開いた私は、
「俺のです……」
咄嗟にそう答えてしまいました。
「こいつは安かばってん、軽くて良かとよ」
確かにね。履きこごちは良いけどさ……。
そんな事でいちいち怒鳴る事かよ……。
あの人達の価値観は、ちょっと違う。
それでも、そこからただひとつ分かった事は、自分達がヤクザ屋さんと一括りにする世界でも、違うものは違う。 いやいや、面白い…て言うたら不謹慎かも知れへんけど、スベらない話にも参加できそうなクオリティですやん←みぃちゃんに怒られるエセ関西弁 >>290
保守ありがとうございます!
私も迷走してます。 そして島に来てから二日目の夜が明けた。
いつもより早起きした鳴滝は、縁側に座り、足元に生えたクローバーを見つめていた。
「おはようございます。何してるんですか?」
少し寝ぼけ眼の尾関梨香が、黄色のパジャマ姿でのそのそと現れた。
「命の洗濯だよ」
「朝から何言ってるんですか」
そう言いつつ、彼女も鳴滝に並んで縁側に座る。晩秋の冷たい空気が、眠気を覚ますのにはちょうど良い。
見上げた空は、ムラなく塗り込められた折り紙のように、雲ひとつ無い青一色だった。
「なぁ、尾関……」
空を見上げる尾関梨香とは対照的に、視線を下に向けままの鳴滝が彼女へと問いかけた。
「何ですか?」
「世の中のクローバーが全部四つ葉になったら、人はどうするんだろうな」
「五つ葉のクローバーを探すんじゃないですか」
興味無さげにそう言った後、尾関はあくびをして目を擦った。
「きりが無いな。幸せ探しってやつは」
「何でそんなにセンチメンタルになってるんですか?」
鳴滝の意外な言葉に、尾関は怪訝そうに彼の横顔を見た。
「俺だって、たまにはセンチになるさ」
「似合いませんから。てか、センチなおじさん程、面倒くさいものはないですよ」
まだ完全に眠気が消えていない尾関は、ついつい本音を漏らしていた。
「お前、たった今、世の中の全おじさんを敵に回したぞ」
「誰も聞いてませんて。アイドルの生放送じゃあるまいし」
「まぁな……アイドルならともかく、お前じゃな……」
「なんか、今、カチンと来たんですけど」 「気にするな。世間一般論だ」
してやったり顔の鳴滝が、尾関梨香へと飄々と言い放つ。
「どこの世間の一般論ですか?」
不満を露わにした尾関は追求の手を緩めない。
「帝国データバンク調べだ」
「そんな下らないデータを集めるような企業じゃありませんから」
やっと尾関はいつもの調子を取り戻し始めていた。
「そんな事より……お前、少し痩せたんじゃないか?」
「えっ?そうかな?」
鳴滝の想定外の問いかけに、尾関は自らの腰に両手を当てていた。
「勿論、社交辞令だけどな」
「そう言うと思ってましたよ。本当に馬鹿のひとつ憶えって奴ですよね」
「成長したな……ぺったんこ……」
弟子の成長に泪ぐむ師匠のように、遠い目をした鳴滝が呟いた。そこに狸と言う言葉は消えていた。
「ぺったんこは辞めてください!まだ、狸の方が幾らかマシです!」
「了解だ。狸くん」
不毛な争いながら、勝利を確信した鳴滝が上から目線で言い放った。
「面白い……」
その時、二人の背後からそんな呟きが聞こえた。振り返ると、そこに立っていたのは既にあの赤いジャケットを羽織った平手友梨奈だった。
「おはよう……少しは眠れたか?」
「いつもよりは……」
「そっか……」
自らの問いに答えた平手友梨奈の言葉に、鳴滝は寂し気な表情と共にそう返していた。
「少し歩きませんか?」
「おっ!いいね。行くか」
彼女の予想外の提案が余程嬉しかったのか、鳴滝は直ぐに立ち上がって背伸びをしていた。
「じゃあ、私も……」
そう言って立とうとした尾関の肩を、鳴滝が右手で押さえ込んだ。
「野暮だな。少しは気を遣え」 その鳴滝の声は戯けていたが、尾関梨香が見上げた彼の瞳は真剣そのものだった。
「まるで散歩の時間になった飼い犬みたいですね」
以心伝心。この時ばかりは、尾関梨香にも鳴滝の瞳の奥の意図が読み取れた。それだけに、彼女は彼女なりの精一杯の嫌味で彼へとそう言い返していた。
「ワンワン」
尚も戯けつつ、鳴滝は尾関の頭をぐいと強く掴んで、平手友梨奈と共に玄関へと消えて行った。
「やはり、貴女しかいないのね」
その意味不明な言葉に尾関が振り返ると、そこには川口玲子の姿があった。
「どう言う意味ですか?」
「貴女なら、定められた彼の宿命さえ変えてしまうかもしれない」
尾関の問いに、即座に玲子が答えを返す。
「宿命?……」
それでも理解出来ない尾関は首を傾げる。
「鳴滝さんにとっての四つ葉のクローバーは、尾関さん、貴女だと言うことです」
「クローバー……私、雑草ですか?」
「雑草魂。それも捨てたものではなくってよ」
まるで意味を理解していない尾関に対し、川口玲子は苦笑いでそう応えた。
「さぁ、鳴滝さん達が帰って来るまでに朝食の準備を終わらせましょう」
そう言った玲子は、未だに戸惑う尾関へと背を向けた。
「私もお手伝いします!」
「では先に着替えて下さい。パジャマ姿で作るお料理は、味が落ちます」
厳し目に言い放たれた玲子の言葉に、すっかり目を覚まされた尾関は背筋を伸ばして直立していた。 俺も昔、ベンツに当て逃げしようとして事務所に連れてかれたんですけど
「素人だ許してやれ」とか言って助けてくれた若頭補佐の人が頭にめっちゃ分かりやすいヅラ乗っけてて・・・
助けてもらっときながら、頭に乗っけちゃうような器量じゃ補佐で終わる人なんだろうなと思いましたね
ニャンコ先生の小咄読んでそんなことを思い出しましたm(__)m 相変わらず絵で貢献できなくて申し訳ないです
今日は今日で高畑勲監督の訃報を受けてこんなの描いてるし
http://o.5ch.net/14adh.png >>296
いえいえ。保守に協力して頂けるだけでありがたいですm(_ _)m
しかし……どんどん上達してますね!
びっくりしました。
高畑監督が亡くなられたのはとても残念ですが、彼の子供である作品は残り続けるので、その意味では本当に幸せな人だと思います。 真面目に小説書くのは、やはり板違いなのかと思いつつ続きを投下。
私はアイドルオタには向いてないのかも。 やわらかな暖かさを含んだ朝日を横顔に受けながら、鳴滝慎吾と平手友梨奈は肩を並べて歩いていた。
どことなく昭和の匂いのする民家の間の小道を共に歩きつつ、鳴滝は平手友梨奈の言葉を待っていた。
だが、彼女は昔を懐かしむかのように周囲の景色へと目を向けながら無言で歩みを進めているだけだ。
その二人の前を、一匹の黒猫が時折こちらの様子を覗い見ながら、しゃなりしゃなりと道の脇を通り過ぎて行った。
それは、ごくありふれた日常の風景。
通り過ぎる車のエンジン音。遠くから聞こえて来る犬の鳴き声。何処かの店が開店を知らせるシャッター音。
静寂とはかけ離れてはいるが、それさえも穏やかな日常の証しなのだ。
そのゆっくりと流れる穏やかな時間に、この島に初めて訪れたにも関わらず、いつしか鳴滝もいつか見た過去の風景を懐かしむ様な穏やかな顔になっていた。
「ねぇ……」
彼の意識を過去から呼び戻したのは平手友梨奈の呼びかけだった。
「ん?」
彼女の問いかけの本題を促す様に、鳴滝はそれだけ言って平手友梨奈へと顔を向けた。しかし、彼女はやはり少し俯きながらではあるが、真っ直ぐに前だけを見て歩いていた。
「探偵さんのお父さんって、どんな人だった?」
名前ではなく探偵さんと呼ばれた事に少し寂しさをを憶えつつ、鳴滝は胸の前で大袈裟に両腕を組んで見せた。
「さぁ、どんな人なんだろうな」
戯けた声ながら、どこか寂し気に言い放たれた彼の言葉で、平手友梨奈はやっと鳴滝の顔へと目を向けた。
「実はさ、俺は父親どころか、母親の顔さえ知らないんだ」
あっけらかんと語られた鳴滝の告白に、平手友梨奈は返す言葉が見つからず、再び前を見て黙り込んでいた。
「物心ついた時には施設にいて、親はいなかったけれど兄弟はいて……いや、もちろん血の繋がりはないんだけどさ」 「ごめんなさい……」
それまでの大人びた表情から、歳相応な女の子らしい表情へと戻った友梨奈の口から、囁やく様なその言葉が漏れ出ていた。
「謝られると余計に辛いぞ。それは君が一番よく分かっているはずだろう?」
戯けた声から一転し、諭す様な声に変わった鳴滝の表情に、友梨奈はただ彼の目を見つめ返すので精一杯だった。
「この事は、尾関には内緒にしておいてくれ。あいつは……ほら……人一倍感受性が強いと言うか、直ぐ情に流されると言うか……とにかく面倒くさい奴なんだ」
平手友梨奈の戸惑いを察したのだろう。鳴滝はいつもの彼らしく、飄々と語り出していた。
「うん。分かってる」
「だろ?面倒くさいんだよ……同情されるのは」
「それは違うと思う」
尚も飄々と語る鳴滝に、平手友梨奈は凛とした表情で向き直った。
「尾関さんは……本当に優しい人なんだと思う」
続けて語られた平手友梨奈の言葉に、鳴滝は立ち止まって彼女を見据えた。
「だからこそ……だろ?」
「だからこそ……だよ」
語尾の一文字を変えたのみの平手友梨奈の返答だったが、鳴滝の思考を止めるのにはそれで充分だった。
「だからこそ、曝け出してもいいんじゃないかな?自分の事……。でも、それを一番分かっているのは探偵さんでしょ?」
鳴滝の止まった思考を再び動かしたのも、やはり平手友梨奈の言葉であった。
「負けたよ……君にはお手上げだ」
「これで一勝一敗だね」
そこで、やっと平手友梨奈が笑みを浮かべた。 「はぁん?引き分けになっただけだろ。次は俺が勝つ。ひれ伏せ!」
川口邸の縁側での尾関梨香と同じく、両手を腰に当てた鳴滝が踏ん反り返る。
「高校生相手に本気を出してる時点でどうかと思うけど……」
その鳴滝に、控えめながらも平手友梨奈が本音を吐き出していた。
「勝負に社会人も高校生も関係ない。弱肉強食が世の常だ!」
本気なのか冗談なのかわからないテンションで、鳴滝は尚も目の前の女子高生に自信満々に言い捨てた。
「悪いけど……僕は、まだ本気出してないから」
「じゃあ、見せてもらおうか。君の本気ってやつを……」
それまでとは明らかに違う真顔になった鳴滝の言葉に、平手友梨奈は即座に身構えていた。
再び一触即発の雰囲気が訪れるかと思われたが、それを阻止したのは他ならぬ鳴滝の笑顔だった。
「不思議なもんだな。億単位で人間がいるこの世界で、同じ境遇にいた俺達がこんな島国の、さらに辺境のこの島で一緒に歩いているんだからさ」
「全然、不思議じゃないよ。玲子さん風に言えば、宿命。と言うより、神様の御導きってやつなのかな……」
その時、港の方角から出航を知らせるフェリーの汽笛が響いて来た。その音こそが港町の港たる所以なのだと平手友梨奈が再認識している最中、彼の声が聞こえて来た。
「神様……ひょっとして君もクリスチャンなのか?」
「うん。僕のいた慈愛院を運営していたのがカトリックの団体だったから」
「じゃあ洗礼名は?ちなみに俺はヨハネ。黙示録を書いたあのヨハネだ」
「僕はジャンヌ」
「ジャンヌって、あのジャンヌ・ダルクか?」
「そうだよ。珍しいでしょ?」
自慢気に語る平手友梨奈に、鳴滝は困惑した表情で目を細めていた。
「君はジャンヌ・ダルクの最後を知っているのか?」 アメブロもスピンオフなども交えながら更新乙です
いよいよ『ひらがな推し』、始まりましたね
でも録画して満足してまだ見てないという(笑)
なんか溜まりそうな予感(笑)
という保守 続きを書いていたら寝落ちしてました……
ひらがなちゃん達の番組はYouTubeで観ましたよ。
MCのオードリーも最初だったので、探り探りやっている雰囲気がありましたが、面白かったです。チワンさん残留決定ですねww 「ジャンヌ・ダルクは異端の罪で火炙りの刑になったんだよね。それぐらいは僕だって知ってるよ」
鳴滝の問いかけに、平手友梨奈は即座にそう答えを返した。
「その通りだ。では、その罪状は何だったか知ってるか?」
「さぁ。異端は異端でしょ?」
続けられた彼の問いに、平手友梨奈は首を傾げた。
「罪状はいくつかあったが、そのうちのひとつは男装の罪なんだ。信じられるか?男物の服を着たから。ただ、それだけの事だぜ」
「今の世の中じゃ考えられないよね」
いつしか鳴滝の話しに引き込まれていた平手友梨奈は、当たり前の様に彼に同意していた。
「実は今でもそれほど変わってないんだ。昔さ、神父達の会合に出くわした事があって、その話しを聞いてたんだが、そりゃあ酷かった」
「どんな風に?」
「当時、東アジアのある国がハリケーンで甚大な被害を受けた年があって、被害者が救援を求めていた。それを知った若い神父が彼等の為に街角で募金活動を始めたんだ。でも、他の地位の高い神父達は激怒したんだ。勝手な事をするなって」
「どうして?若い神父さんは間違ってないよね?」
「面子さ。お偉いさんの意に反した事をしたってだけで、その若い神父は潰された。実にくだらない。その時、俺は……神を捨てた」
真剣な面持ちで語る鳴滝に、平手友梨奈は返す言葉が見つからずに俯いた。 「ジャンヌ・ダルクは英雄じゃない。犠牲者なんだ。君はくだらない常識の犠牲者になるなよ。きっと君の姉さん達だって、そんな事は望んでいないと思うぞ」
その鳴滝の言葉へ平手友梨奈が言葉を返す代わりに、遠くから汽笛が再び鳴り響いた。
「結婚する時は教会の神父の前で永遠の愛を誓い、葬式の時はお寺の坊さんの前で冥福を祈る……」
汽笛がなり終わるのを待っていたかの様に、鳴滝が脈絡もなく語り出した。
「世の中そんなもんさ。節操が無い。彼等にとっては教会も寺もファッションの一部でしかないんだ。実にご都合主義な見せかけだけの美しさ。反吐が出そうだ。しかし、それさえも常識だとして疑いもせずに従うお利口さんな自称『常識人』の群れ……笑えて来るよ」
いまひとつその鳴滝の語る意味が理解出来ないままに、平手友梨奈は彼から目を離す事が出来ずにいた。
「俺達には親がいない。でも、それを言い訳にしたくはない……。そうだろ?親は居なくても、君には姉妹の『絆』はあったはずだ。
血の繋がりは無くても、寄り添ってくれる心が……」
「うん。僕には……いるよ……」
「だったら……胸を張って立て。俯くな。常識人ぶった馬鹿な大人達なんか放っておけ。君の人生は君にしか築けない。この世に産まれて来た以上、向き合うしかないんだ。この現実と。でも、それを乗り越えた時に、君が存在している理由がわかるはずだ」
高校生の平手友梨奈には、鳴滝のその言葉は余りにも哲学的で理解するには早過ぎた。しかし、その彼の真剣な眼差しだけは受け入れるに値するものだと感じていた。
「きっと、キリストが今のバチカンを見たら怒り出すと思うぜ」
鳴滝が悪戯な笑みを浮かべて、右手の人差し指を立てた。その仕草がどことなく学校の先生みたいだなと思いつつ、平手友梨奈は彼の声に耳を傾けた。
「豪華な装飾品や財産は全て売り払って、貧しい人々に分け与えなさい!ってさ」
「そうかもしれないね」
それはどうかと思いつつ、平手友梨奈は相槌を打った。
「クリスマスだって大人が馬鹿騒ぎする日じゃない」
「それはいいんじゃない?」
流石にそれには彼女も反論する。
「クリスマスってのは、いつも泣いている子供が笑顔になる。そんな奇跡が起こる日だ。と、俺は……ん?何でこんな話しをしてるんだ?」
そんな鳴滝が妙に可笑しくて、平手友梨奈は満面の笑みを浮かべた。
「いいね。その笑顔。一緒に笑い飛ばしてやろうぜ。このクソッタレな世の中を」
そう言って突き出された鳴滝の拳に、平手友梨奈も自らの拳を重ねていた。 >>307
純朴さと猥褻さが同居する感じが畑中純を彷彿とさせますな 保守ありがとうございます
>>307
本当に誰だろう…… 奇妙な風が吹き抜けた。
その風は、鳴滝慎吾と平手友梨奈が拳を合わせた二人の間を渦を巻きながら、瞬きするよりも早く通り過ぎた。
「伏せろ!」
その正体にいち早く気付いた鳴滝が、平手友梨奈の肩を掴んで地面へと押し付ける。
「狙撃だ」
何事かと目を丸くする平手友梨奈にそれだけ伝えると、鳴滝は道路脇の縁石越しに民家の間の僅かな隙間から遥か彼方へと目を向けた。だが、狙撃者らしき影を見出せない。その時、焦る鳴滝の背後から聞き覚えのある若い女の声がした。
「どいて!」
アスファルトにへばりつく鳴滝と平手の間に、ゴルフのクラブケースを手にした東村芽依が割って入って来た。
「M24……特殊部隊?」
クラブケースを構えた東村の姿に唖然とする鳴滝と平手の間で、狙撃者を見つけたのであろうか。彼女は謎の笑みを浮かべてそんな独り言を呟いた。
よくよく見ると、東村芽依が構えているクラブケースは長身のライフルを偽装したものだった。
「顔を出しなさいよ……」
そのケースの中程から突き出た引き金に指を掛けながら、自らも狙撃者と化した東村芽依が囁く。
「見えるのか?スコープも使わずに」
この状況における違和感を、鳴滝はそのまま口にした。彼が言うように、彼女の手にしているライフルには、狙いを定めるスナイパーライフルには必須のスコープが装着されていなかった。
「私には『見える』の……」
そう答えた芽依の瞳は、既にあの金色へと変化していた。
「なるほど……」
聞き覚えのあるその彼女の言葉に、鳴滝は全てを察して東村芽依が銃口を向ける先へと目を向けた。
「どう言う状況なんだ?」
「幌付きのトラックの荷台から狙ってる」
鳴滝の問いに即座にそう答えた芽依だったが、引き金に指をかけたまま微動だにしない。
「ついに自ら動き出したか……」
「違う……あいつはクロウじゃない」
隣で溜め息に呟やかれた鳴滝の言葉を、芽依が即座に否定した。 「その根拠は?」
「クロウは仲間を持たない。でも、このスナイパーはチームで動いてる。まるで……自衛隊みたい……」
「怖い事言うなよ……」
鳴滝は思わず苦笑いを浮かべていた。
「あとはSAT……かな」
「どっちも御免だ」
鳴滝がボヤくのと同時に乾いた破裂音が響き、銃身から弾き出された薬莢が彼の鼻の先をかすめて飛んで行った。
「仕留めたのか?」
「挨拶しただけ。逃げて行っちゃったけどね」
クラブケースに装着されたバンドを肩に掛け立ち上がった芽依が、あっけらかんと言い放った。
「また助けられたな……しかし、君は何処にでも現れるんだな」
鳴滝も身体についた埃を両手で払いながら立ち上がり、尚も伏せたままの平手友梨奈へと右手を差し伸べた。
「猟犬のピンチだもの。助けるに決まってるじゃない。世話の焼ける仔犬ちゃんもいるしね……」
そう言いつつ、東村芽依は揶揄うような笑みを浮かべて平手友梨奈を見た。
その挑発に、平手友梨奈も獣のような鋭い視線を返す。
「あなたに……何が出来るの?」
尚も挑発を続ける芽依へと向けられた平手友梨奈の瞳が、彼女の前で金色へと変わっていた。
「へぇ……あなたもキャリアなんだ……」
平静を装いつつも、芽依の顔には明らかに動揺の色が現れた。
「心配しなくていいよ。僕は弱い者いじめはしない主義だから」
その芽依の表情に、今度は平手友梨奈の顔に笑みが浮かんでいた。
「弱い者いじめ?随分と自信があるみたいね」
一触即発の雰囲気の中、鳴滝がその間へと割って入った。
「なんでお前ら直ぐに喧嘩腰になるんだよ?カルシウム足りてないだろ?魚を食え、魚を。運良くここは島だ。魚なら幾らでもある。骨ごと食って頭を冷やせ」
呆れ顔の鳴滝に構わず、東村芽依と平手友梨奈は互いの目から視線を外そうとはしなかった。 更新乙です
>>309
wwww
この絵は忘れてください(笑)
ちなみにヒントは書かれてます(笑) >>312
保守ありがとうございます!
>>313
星野みなみだったんですね(笑)
可愛い…… >>314
ヒントは絵に描かれた「いたずら」という文字で、写真集のタイトルです(笑)
これもその中のカットらしい
やっぱり可愛い子や美人を描くのは難し…おや?誰か来たようだ アメブロは短編も含めて(最近はメイン?w)更新乙です
最近はお絵描きの軸足が完全に48G側になっちゃってましてm(_ _)m
今もけやかけけやおしは録画中なんですが、やはり見ない可能性もw >>316
保守ありがとうございますm(_ _)m
ひらがな推しは観てみて下さい。
結構、面白いですよ
欅坂の道化師の更新も頑張りますので >>317
理佐ちゃん至上主義者の俺がひらがな推し見て齊藤京子に惹かれてビンゴを予約してしまった・・・ >>319
ひらがな推しのきょんこにけやかけ卒アル回のただただ睨む理佐ちゃん以来の衝撃を感じてしまったのですm(__)m 「いい加減にしとけよ」
彼女達の一触即発の雰囲気に、流石の鳴滝もその語気を強めていた。
その雰囲気を察したのだろう。加藤史帆がハンドルを握る赤い軽自動車が、東村芽依に乗れと言わんばかりに彼女の直ぐ横へと車体を寄せた。
開いた助手席のドアから後部座席へとクラブケースを乱暴に投げ込み、東村芽依は助手席のシートへと滑り込んだ。
「じゃあね、子犬ちゃん」
去り際の挑発を東村芽依は忘れていなかった。
「認めたくはないが、彼女に助けられたのは事実だ」
走り去る車を睨みつける平手友梨奈へと、鳴滝が背後からそう語りかけた。
「君は、僕は殺し屋じゃないと言ったよな?」
その彼の問いに、平手友梨奈は鋭い目を向けたのみだった。
「だったら、彼女と張り合うな」
「でも……」
「言いたい事は分かる。だからって、直ぐに挑発に乗るな。それが大人だ。君はガキじゃないんだろう?」
再びの問いかけに、平手友梨奈は黙り込んだ。
「玲子さんは言ってたぞ。『彼女達に希望を持って欲しかった』ってさ……」
東村芽依が残した薬莢を拾い上げて、彼はそれを東の空に輝く朝日へとかざした。
「君の持つ能力が何なのか知らないが、それを人殺しに使うな。人を生かす為に使ってみろよ。自分以外の誰かに希望を与える事が、君の希望にもなるような気がしてるんだ」
優しくも哀しく。鳴滝の言葉に、平手は俯いて両の手の拳を握り締めていた。 「今の世の中は結果が全てだ。そこに至るまでの努力と言うプロセスさえ、所詮は自己満足でしかないんだ」
「そんなの間違ってる!」
平手友梨奈が声を荒げて鳴滝を睨んだ。
「間違ってなんかいないさ。資本主義のこの国では、それが全てなんだ」
冷酷な鳴滝の言葉より、さらに冷たい彼の視線に友梨奈は息を呑んだ。
「だが……人生においては違う」
例によって例の如く、平手友梨奈がイメージする教師そのままに鳴滝は右手の人差し指を立てていた。
「例え、どんな辛い過去であっても、それはこれからの君を支える大切なプロセスだ」
右の眉を上げつつ、謎の笑みを浮かべた鳴滝が彼女へとその顔を寄せた。
「その価値は誰にも測れない。君が姉と慕う彼女達以外にはね」
彼女達。彼の口から漏れ出たその単語に、平手友梨奈の脳裏にいくつかの顔が過ぎっては消えていった。
「いつか彼女達が、『平手友梨奈は私の妹です』と、胸を張れるような存在にならなきゃな」
「そんなの……無理だよ」
そこで、やっと平手友梨奈が言葉を発した。
「無理だと?何言ってんだ、お前?」
そう言った鳴滝は、右手の中指で平手友梨奈の額を弾いていた。いわゆるデコピンと言うやつだ。
「簡単な事さ。君自身が胸を張れる生き方が出来るかどうかさ。私は殺し屋ですと言って、君は胸を張れるのか?」
「だから、僕は殺し屋じゃない!」
「だったら……冷静になれ。一時の感情に流されるな」
「でも……」
言いかけた言葉を腹へと押し戻したように、平手友梨奈が呟いた。
「でも……だって……。君がそうやって言い訳を考えている間に、君の大切な人が命を落とすんだ。それでいいのか?それさえも世間や誰かのせいにするつもりか?」
辛辣な鳴滝の言葉に、平手友梨奈の瞳があの金色へと変わっていた。 なーこがメッセで教会の中での写真を
載せてたけど、この小説の冒頭シーンみたいでちょっとワクワクした(^_^) 相変わらず貢献できずすまんですm(_ _)m
最近は地下板のみならずSTU板まで足を延ばしてまして(笑)
ところで最近はやはりスレ放置6日〜7日でdat落ちのペースみたいです
保守には協力できると思いますので >>325
いつもありがとうございます。
私もそっちに行ってみようかな。 渡邉理佐から10日ぶりにメッセ
忙しかったからなぁ(´Д` ) >>327
理佐ちゃんのメッセは焦らしプレーも楽しみのひとつですからねw >>328
4月に入ってからメッセ取ったので、
まだ良く知らないのですが、
焦らしプレイってww
庭さんってMですよね? >>329
庭先生の読者になって1年ちょっとのド新規の者ですが
たぶん理佐ちゃんに対してとそれ以外に対しては180度逆な気がします(笑) >>330
( ´Д`)y━・~~なるほど……つまり……
d( ̄  ̄)良い意味でのど変態だと……
そう仰りたいわけですね
分かります。 基本ドSなんですがチワンさんの指摘どおり好きになると相手を神の如く崇拝してしまい全てを受け入れるドMと化してしまうんです
理佐ちゃんは初めて見た卒アル回のただただ睨む理佐ちゃんの衝撃だけで生涯何をしても許される存在になってますね
子供が赤ちゃんから三歳までに見せてくれる可愛さで将来ヤンキーになろうがヤクザになろうが親にとっては生涯可愛い存在になるのと一緒なんだと思います >>332
当たってたのか(笑)
>>326
STU板も行ってみると予想以上に殺伐としてて、ここより居心地良いわけでもないですけどね(笑)
でもあちらはまだメンバー内はみんな仲良しみたいだから…おや?誰か来たようだ >>332
そこまで夢中になれるのは正直羨ましい……
ところで理佐スレで、理佐のブラの紐になりたいと書き込んでいた庭さんて、庭さんですか?
>>333
私はアイドル板はここしか知らないので、まぁ、こんなものぐらいにしか思ってなかったのですが。
乃木坂板見に行った事ないのでとりあえず見てこよう。STUはメンバー知らないと、どこ見ていいかわからないだろうし。 >>334
意外かも知れませんがブラ紐は俺ですw
ちなみにゆいぽんのスレではスカートの中の詩人と呼ばれてましたw >>335
((((;゚Д゚)))))))うわぁぁああああ 誕生日祝いの気持ちを込めてプロの絵にマウスで挑むという無謀なチャレンジをしました(笑)
https://o.5ch.net/14u9h.png >>337
マウスでこれだけ描けるとか
逆に凄い…… >>338
さすがに1時間かかりました(笑)
やはりプロは違うなと改めて実感(笑)
なーこちゃんスレにも貼ってみたけど叩かれなくてよかった >>339
これだけ上手ければ誰も叩きませんて(笑)
マウスで一時間は凄い集中力ですよね >>341
志田はこのまま居なくなりそうですよね
根が真面目な理佐ちゃんが距離を置き始めたの見て嫌な予感はしてたんですけど・・・
メンタル弱い俺は今日は理佐ちゃんとの恋愛妄想は自粛ですw この前まで
欅坂を単なるアイドルと一緒にするなアーチストで表現者なんだからうんたらかんたら
って言ってた人達が今度は志田叩きねる叩きしてるのかと思うと
率直に言って、意味が分かりません(笑)
まあ、ここぞとばかりにお客様がたくさん流入してるのかな(笑)
とにかく大事なことは、これでスレ落ちのスピードが早まる可能性もあるので注意ってことですね(笑) みんなここに集合してたのかw
>>341
それにしても文章って形に残りますよね
って書こうと思ったんですけど、
ニャンコ先生の作品は、【2冊目】に限るともなちゃんは出演してないんすねw
>>342
で、庭さんの一途な愛はこういう時に勇敢な印象をうけますね
>>343
アイドルオタクなんてそんなもんですよ
短いスパンに閉じ込められた女の子を、移ろいやすい心で推していくわけですから、当然不安定な感情にもなりますよ >>344
なるほどね…
そういうヲタたちの心にも振り回されるアイドルの仕事って本当に大変なんですね…
なんか今度は志田の相手の男性の素性がヤバそうだとか言う話にも広がってるみたいですけど
自分に言わせれば運営スタッフのほうが遥かにヤバそうな…おや?誰か来たようだ >>345
志田ちゃん結構好意的に見てたんだけどな・・・
理佐ちゃんを墨入れてるようなチンピラに会わせる危険のある女はアウトですねw 予想通りスレ落ちのスピードが上がりはじめたみたい
最終書き込みから3日経たないスレが落ちはじめた
ご用心ご用心 皆さん、保守コメントありがとうございます!
志田問題を静観していましたが、今ひとつ核心に迫るものが無くてモヤモヤしています。
ただ、渡邉理佐さんが単に尾関LOVEだけでなく、今回の件を予測していて志田愛佳と距離を置いていたとしたら私の中での渡邉理佐の株はストップ高です。 でも、欅坂46全体として見るとマイナスしかありませんよね。生誕祭で沸いていた長沢菜々香さんの話題は吹っ飛ぶし、ブログ更新ストップしていた守屋茜さんの更新や、他のメンバーのメッセさえ痛々しく感じてしまいます。 >>348
今回の件を理佐ちゃんが知ってたかは謎ですが・・・
それほど賢くもなく幼稚なとこが多分にある理佐ちゃんだけに一歩間違えたらねるちゃんみたいになってたかもw
もっとも理佐ちゃんはねるちゃんほど根性据わってないから絶対に新潟には行かないと思うけど
アイドルやってて今回の志田ちゃんみたいな行動出来るのは自然にルール破ることにガキの頃から馴れてないと出来ませんからね
そういうのは日頃の些細な言動にも出るから理佐ちゃんみたいに常識的な子からしたら志田ちゃんにはヤバイ気配は感じてたんじゃないかな
それで一緒に居ることに違和感を感じて自然と距離が出来たんじゃないかと予想しとります
理佐ちゃんにはルール破ってメンバーやスタッフやオタに迷惑かける腹の太さは無さそうですから
人間としては簡単にルール破れる志田ちゃんの方が圧倒的に面白いんですけどねw
でも金輪際理佐ちゃんには近づかないで欲しいですね
理佐ちゃん至上主義者の俺としては理佐ちゃんには人生ひたすら良い思いだけして楽勝モードに生きて欲しいんでw
しかし、欅坂は色々ありすぎて保たないかもしれませんね
狂信的なオタが湯水の如くお金を注ぎ込むからナンとかなってるけど
あの運営には普通の企業みたいに組織を効率的に機能させるマニュアルが無いみたいですからね
本当ヤクザな商売してますよw 理佐ちゃんを心配するあまり長文を書いてしまい
ニャンコ先生のスレを志田問題の討論スレみたいにしてしまい申し訳ないですm(__)m >>350
>>351
いえいえ、ここは隠れ家として使って下さいw
なかなか更新出来ないので
なるほどです。
何だかんだ言っても、渡邉理佐って人は
優しさと常識を兼ね備えていると思います。 今現在メッセを取っているのは
長沢菜々香、尾関梨香、守屋茜、渡邉理佐、
今泉佑唯の五人ですが、今泉佑唯だけは通常営業のような気もする……何気に峯岸みなみの名前出して来るところとか応援なのか、抗議なのかと深読みしてしまう。 >>352
見た目は世界一美人と言っても言い足りないぐらいの理佐ちゃんなのに中身が意外と平凡なぐらい常識人な所に惹かれてしまうんですよね
口悪いのにビビりだったりたまにぽんこつだったり素敵過ぎますわ
>>353
5人も取ってるなんてニャンコ先生浮気者体質ですなぁw >>356
酔って書いている途中で更新したみたいで
記憶がないんですよ( ̄◇ ̄;)びっくり >>355
箱推しの方がリスクヘッジ出来ていいですよね
志田ちゃんの事件以来怒りと悲しみの行ったり来たりで身に染みました・・・ >>358
箱推しと言うのも、今は言い訳の様に思えます。 「言ってる側からまたそれか」
威嚇するかのように睨みつける平手友梨奈に、鳴滝は呆れたように首を傾げた。
「違うよ、探偵さん……後ろを見て」
彼女のその言葉に振り向いた鳴滝は、そこに立つ男の姿を見て硬直した。
黒いロングコートの下に、司祭の様なローマン・カラーの黒いシャツと黒のズボン。面長な顔の額から後方に流れる長い黒髪を後頭部でひとつにまとめ、細い黒縁の丸眼鏡の奥にある目は鳴滝一人へと視線を注いでいる。
「お久しぶりですね。鳴滝君」
背後で手を組んだ直立不動の姿勢のまま、その男は懐かしむかの様な笑顔で鳴滝へと語りかけた。
「貴様……」
対する鳴滝の顔は怒を露わにしている。
「彼女は……若月さんは、今も鳴滝君の中で笑っていますか?」
歪んだ笑顔で謎の男が鳴滝へと再び問いかけた。その問いが終わるのとほぼ同時に、男へと踏み込んだ鳴滝は彼の顔を目掛けて拳を振り抜く。だが、その拳は虚しく宙を切るだけだった。
「怒りに我を忘れるとは……君はあの頃と少しも変わっていませんね」
男は嘲笑と共に鳴滝を見据える。その男の瞳の中で、鳴滝もまた笑みを浮かべていた。
「分かってるさ。ここにいる貴様が幻影だって事ぐらい」
「正確に言えば、幻影では無く精神体です。まぁ、それを理解したところで、今の鳴滝君にはなす術も無いのでしょうけれど」
尚も嘲笑する笑みの奥で、男は鳴滝を挑発していた。
「貴様が生きていたって事だけで、俺にとっては朗報だ」
「それは良かった。喜んで頂けたのでしたら何よりです」
「貴様だけは許さない。俺の手で地獄へ叩き落としてやる」
「許さないとは若月さんの件でしょうか?
あれは不幸な事故でした」
丸眼鏡の縁を右手の中指で押し上げながら、男はゆっくりと目を閉じた。
「事故だと?」
「ええ。しかも防げた事故でした。君があの時に正しい判断をしていれば、彼女は命を堕とす事も無かったのです」
男のその言葉に、鳴滝は顔を歪めた。
「人間とは何と愚かなのか。失って初めてその存在の意味を知るのですから」
再び目を開いた男は、鳴滝の背後に立つ平手友梨奈へと目を向けた。
「同じ過ちを繰り返す前に、今回の件から身を引いてもらえませんか、鳴滝君」
「貴様の狙いは何だ?」
「四○四号。それだけですよ」
そう言った男は、平手友梨奈へと向けて歩き出していた。それを阻止しようとした鳴滝の腕をすり抜けて。 「お嬢さん……平手友梨奈さんでしたか?貴女の持っている例の物を私にお譲り頂けませんか。無論、それなりの代金はご用意致しますので」
「嫌だ。これは誰にも渡さない」
近付いて来る男に対し、平手は拳を突き出して身構えた。
「これは?では、やはりその左手の中指にあるそれが四○四号なのですね……」
その時、男の瞳は平手友梨奈と同様に金色へと変わっていた。
「マテリアライズ……」
互いの息が感じられる距離まで互いが接近したその時、男の腕を掴んだ平手友梨奈の口から謎の言葉が漏れ出した。
「何ですか……これは……」
「これが僕に与えられた能力だよ」
そう語った平手友梨奈の視線は、謎の男にではなく鳴滝へと向けられていた。
「マテリアライズ……実体化……」
その驚愕の声と共に、謎の男の顔が歪む。それまで人の形を成しながらも半透明だった男の身体が現実味を帯び始めていた。
「探偵さん!今だよ!」
その平手友梨奈の呼びかけに、鳴滝は本能で応えていた。
「消え失せろ!」
突き出された鳴滝の右拳が謎の男の背中を貫いた。その拳に確かな感触を捉えた鳴滝の目の前で、謎の男の顔が苦痛に歪んだ。
「厄介なお嬢さんだ……折角の機会を棒に振るとは。愚かなり!」
苦痛から怒りに変わった男の顔は鬼そのものだった。
「ならば力を以って奪い取るのみ。命を賭して守り抜いて下さい。多くの犠牲を厭わないのであれば」
「よく喋る幽霊だな」
彼の身体を貫いた鳴滝の腕が振り上げられた。それに伴い、謎の男の身体が煙の様に霧散して行く。彼の頭のみを残して。
「尾関梨香……でしたか?あの娘は実に面白い。生田絵梨花?いえ、若月佑美……彼女にそっくりです」
頭部のみとなった謎の男は尚も語り続ける。
「鳴滝君。君の心の穴を塞ぐ存在としてと言う意味ですが」
「あいつに手を出すな」
「そこまで守りたい存在なら、是非とも壊して差し上げたい」
「間楠……壊れるのは貴様だ」
宙に漂う謎の男のこめかみを鳴滝の拳が貫いた。霧散した男の頭部の後に残ったのは、青空を照らし出す島の光に浮かぶ鳴滝の拳のみだった。 更新とともに番組チェックまで乙でありますm(__)m >>364
保守ありがとうございます!
少しテンション下がってます…… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています