ブレーンワールド(その49)
舞台に行くまでの途中でねるは考え込んでいる。
ああ、迷うな。ひらがなのメンバーとはずっと一緒にいたいけど、彼女たち一人ひとりにスポットがより当たるためには私がいないほうがいいような気もするしなあ。
でも恐れはしない。どんなことよりも大きな決断をすでに私はしているのだから。

マイクの前にねるが立つ。欅のシンボルカラーである緑色のサイリウムが一斉に灯る。
ねるは五島の海の前に立っているような錯覚を起こす。
サイリウムの色がねる個人のシンボルカラーに一斉に変わる。
そこにねるは幻影を見る。ああこれが私の希望の光だったんだ。
ソロでの一曲目という大役を無事果たし、万雷の拍手が鳴り響く。
万感の思いがねるの脳裏に去来する。
私は長濱ねる、アイドルでありたい、ただそれだけ。(了)