>>961
>ただ、ニセ鍼のグループと大きな差が無く、鍼治療はプラシーボによる効果が大きいという内容です
プラシーボをご存知ということはある程度は二重盲検法とかはお分かりかと思うます。

まず、基本的に現代薬での治験を考えます。例えば100人、実験に参加する人を集めるとします。それをランダムに二つの群に分け、Aには真の薬をBには偽の薬を投与します。
それである程度の時間や日数を経過し、身体の変化などを紙に書きます(評価する人がどちらのグループか分からないようにする、という意味で評価者もブラインド化される、と表現されることもある)。
お薬の場合は、ここで処方する医師も処方される実験の患者さんも真の薬か偽の薬かは分かりません。

これは処方する医師が「この人は偽の薬」などと分かってしまうと、無意識に態度や表情などに出て真の薬の群と偽の薬の群とで条件が変わってしまうのを防ぐ為です。
当然、処方される側の患者役の人はどちらが処方されるか分かりません。

処方する方と、処方される方と、二者が分からない、ブラインド化されランダムに振り分けられているので二重盲検法によるランダム化比較試験(RCT)などと呼ばれます。

ここで比較しているものは
A.真の薬=真の効果+(正or負の)プラシーボ
B.偽の薬=無の効果+(正or負の)プラシーボ
ということになります。(正or負の)プラシーボと書いたのは、プラシーボ、思い込み効果でも、薬の作用が出ることもあれば、逆に副作用だけ出る負のプラシーボ(ノセボとも呼ばれる)こともあるからです。当然、何も出ない場合もあります。

そして出た結果を統計学で比較して、効果の有る無しを調べます。これが大まかな流れです。
で、これを鍼でやる場合を考えます。鍼の場合は手で鍼を刺すという動作が入るのでちょっとややこしいです。
同様に患者さんをランダムに2群に分けます(ランダム化)。片方のA群には真の鍼、B群には偽の鍼をすることにします。
ここで問題になるのが偽の鍼です。
様々な方法がありますが、例えば、ツボを定位と言って寸法で決める場合は真のツボから2p離れた場所に刺鍼する、あるいは真の鍼では2〜3センチ刺入するのに対して切皮、4,5o程度しか刺入しない、などの方法が取られることが多いです。

円皮鍼、パイオネックスの場合は、鍼先がないパイオネックスZEROというのがあるので皮膚に刺さるパイオネックスと刺さらないパイオネックスZEROで比較はしやすいです。
そして比較します。ここで比較するのは
A.真の鍼=真の鍼治療+(正or負の)プラシーボ
B.偽の鍼=偽の鍼治療+(正or負の)プラシーボ
となります。両方とも鍼治療のしぐさは同じにしてるので、施術者が患部に触れるとか刺さってるので効きそうな気がするというのは同じになります。
さらにランダム化されているので人によってその感じ方が違っても平均化されます。
で、ここで難しいのがお薬と違って、偽の鍼の扱いです。
偽の鍼と言っても、真のツボから2p離れているとは言っても数センチ刺入されている、浅いと言っても数ミリ刺入されている、というとこれは本当に偽の鍼と言えるのかどうか。
専門的ですが、日本の鍼灸では教科書で寸法で決められたツボから反応を取って2pくらい離れた場所に刺鍼することもあります。
また、鍼の響きに敏感な人は切皮、4、5oでも効果が出ることがあります。

それと、2群に分けられた患者さんは真の治療か偽の治療かは分かりませんが、施術する側は真の鍼をするか偽の鍼をするか技術的に分けなければいけないので片側しかブラインド化されていない、一重盲検法というものになります。

それと、あまりここは指摘されていませんが、飲み薬の場合、どの医者が処方しても効果にさほど違いはない(態度には現れるなどはあるが服薬自体は自宅など)ですが鍼の場合は施術者が誰か?という問題も出てきます。
技術の良しあし、響きがあったとか無かったとかも結果を左右します。
これらの差を少なくする為には実験する患者数(いわゆるn数)を大きくして均質化することも必要で、これも鍼灸でRCTが難しい点の1つです。

また、プラシーボ自体も色々研究されていて、飲み薬の現代薬でも、これは偽のプラセボ薬だと分かっていて飲んでも正のプラセボ効果が出るなど、まだまだ不明な点もあります。