退院した。

さすがに「また病院に戻りたい」とは思えない。
控えめに言って、地獄だった。
自分もそうだったから仕方ないけど、重傷者の病室だった。
飯食ってる隣で、うんこをほじくり出してもらってる患者がいた。強烈な匂いだった。何度もあった。
24時間、痰の音が盛大にしている患者がいた。吸った痰は病室内の洗面台に流される。
俺の許された行動範囲は病室内の洗面台までだったので、その洗面台で洗顔と歯磨きをした。

そのくせ、どの患者もなぜか食欲は旺盛で、まるでホラー映画のように
ズルっ、ぺちゃっ、ズルズルっ、ゴボゴボっという音が大音量で(どこにそのエネルギーが?)していた。
食べるのは遅いのでそれが1時間半続くのだった。
そして売店で買ってきた食べ物でさらにそれが延長されるのだった。

同室じゃなかったが精神に変調をきたしている患者もいて、
数時間おきに「おーい! おーい! 出してくれ!」と大声で叫び、謎の自己主張の演説を大声でしていた。
近くの談話室で起床から消灯まで大声で電話をしているじいさんもいた。

そんな地獄だったが、看護師さんたちにだけはまた会いたい。
あの地獄の中で、ちょっとでも救いがあると思えたのは、看護師さんたちのおかげだ。