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艦 娘 短 篇
(あなた)
提督と共に

私は「大和」。
戦艦「大和」。

大和型戦艦一番艦――それが、私。

来襲する戦艦を基幹とした敵主力艦隊に勝利する、
そのための艦隊決戦の切り札として極秘建造されました。

最新造艦技術の粋を結集して建造された、
数ではなく質で敵を凌駕するための、
大砲巨艦思想を具現化したこの体。

装備する主砲は四十六センチ三連装三基九門。その水上打撃力と射程は、
文字通り圧倒的。火力、防御、艤装面でも
世界最高レベルの質的優位を誇る、
私は最強最精鋭の戦艦として生まれました。

そして、妹の武蔵と共に連合艦隊の中核戦力を担います。
いえ、そのはずでした。

でも――時代は常に移り変わっていきます。
よく私たちは、「前の戦争の準備」を
一生懸命していると云われます。
時代は航空主兵へと移行していきました。

赤城、加賀などの精鋭機動部隊。
その初戦の課題活躍と、ミッドウェーでの壊滅。

続く、ソロモン本面での消耗戦。
ガダルカナル島を巡る攻防、数多く繰り返された
夜戦や殴り込みでも、私は結局投入されることはありませんでした。

そして、比叡、霧島。戦艦の喪失。
私は後方のトラック泊地で、待機していました。
そういつでも出撃できるように――。