2014年、H3正式開発開始時期の記事
http://tokyoexpress.info/2014/05/19/jaxa%E3%83%BB%E4%B8%89%E8%8F%B1%E3%81%AE%E6%AC%A1%E6%9C%9F%E5%9F%BA%E5%B9%B9%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88h-x%E3%82%92-2021%E5%B9%B4%E3%81%AB%E6%89%93%E4%B8%8A%E3%81%92/

JAXA、MHI、それにロケットのターボポンプ担当のIHIが、
最も力を入れているのがLE–X(LE-9と改称)と呼ばれるエンジン(推力145㌧)で、2006年から開発が始まっている。
現在各種要素試験を進めている段階で、これを基に180㌧推力のLE-9エンジンの完成を目指す。

LE-9およびLE-11に使われる「エキスパンダー・ブリード・サイクル(expander bleed cycle)」は、
推進剤を熱交換器でガス化し、これで直接タービンを駆動、燃料・酸化剤ポンプを回す方式。
プレバーナー(副燃焼室)がないのでタービン駆動用ガスの温度は600℃程度におさまり構造が簡単。
推力を増やすにはノズルを大きくし燃料への熱交換量を増やす。
ノズルの表面積は直径の二乗に比例する。しかし加熱すべき燃料の体積は3乗に比例して増やす必要がある。
このため大出力を得難いが、これまでの検討では推力200㌧程度までは可能と判った。

[MB-XX]は[MB-60]とも呼ばれている。
一般にロケットは燃焼室スロートでガスを超音速にし、それを末広ノズルで増速し推力を得る。
この両者の面積比(膨張比)を大きくして性能(ISP)を向上させている。
この目的でスロート面積を絞り膨張比を増加させたエンジンが[MB-XX]で、
燃焼圧を]LE-5B]の3.6MPa(メガパスカル)から14MPaに上げてある。
[MB-XX]は三菱と米国P&W社が共同開発したエンジンで、所定の推力と性能を得て実験を完了した。
第2段用の[LE-11]は、当然ながら推力は[LE-9]の目標180㌧に比べ小さく、20-30㌧程度になる見込みだ。

図:(三菱重工)[LE-9]エンジンの完成モックアップ。[LE-7A]に比べ外観はずっと簡単。
燃焼室部分がこれまでに比べ長いのが特徴。[LE-9]の燃焼室高さは1.2m、重量は約600kg、
[LE-7A]の高さ0.6m、重量200kgより大きいが、推力増は4割に止まる。燃焼圧は[LE-7A]と同じ12.1MPa(1,780psi)。
これからの課題はIHI担当の推進剤ポンプ駆動用タービンの効率向上だ。
タービン効率を上げれば、駆動用ガス量が少なくて済み、熱交換器用の面積が少なくなり、ノズルを含む全体を軽くできる

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やけに具体的な数値が出てる記事だな。他では見たこともない数値が載ってる
・当初のLE-9の推力目標は180トンf
・物理的には200トンf程度までは可能
・タービン駆動用膨張水素ガスの温度は600℃

・MB-XXの燃焼室圧力は14MPa(LE-5Bの4倍。なおLE-9は10MPa)
・LE-11の推力は20~30トンf

・LE-9の燃焼室の高さは1.2m・質量は600kgで、LE-7Aの高さの2倍・質量では3倍。ただし推力は1.4倍止まり
・当初のLE-9の燃焼室圧力の目標は12MPa
・IHIが担当するターボポンプのタービンの効率向上が課題となるだろう
・熱交換量を増やせば推力が上がる。なのでノズルを大型化するとよい
 (↑ 実際にはチャンバーエキスパンダー方式を採用、下部ノズルでの熱交換は無し、熱交換面積は大幅に縮小)

これ、(LE-5A同様の)ノズルエキスパンダー方式を採用していれば、推力180トンfくらいまで行けたかもね?
あるいは、余裕をタービンの耐久性の強化に割振り、不正振動や亀裂に悩まされること無しに完成してたかも?