宇宙飛行士の命を救ったロシア「緊急救助システム」とは
http://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/c1810_2.html

まず、先端の緊急脱出ロケットが働いたのか、という点について。
「今回は緊急脱出用ロケットは使われていません。
トラブルが起こった時は既に緊急脱出用ロケットは分離された後だからです。
フェアリングについている4本の小さなエンジンが作動して、
宇宙飛行士が乗る宇宙船を切り離したのです」(菊地さん)

「ソユーズロケットの緊急救助システムは、(先端の)緊急脱出用ロケットだけでなく
打ち上げ前から軌道投入まで、それぞれの段階で離脱できるようになっている全体のシステムを指します。
非常に複雑でよく練られたシステムです」(菊地さん)

「事故は第一段ロケット分離の際に起きた。第一段ロケットの4本のブースターのうち1本について、
届くはずのシグナルが届かず、自動で分離するコマンドが出なかった。
その結果、通常通りの分離ができず、第二段ロケット下部に衝突。
ロケットが軌道を外れたため、自動的に緊急事態のモードに入った」。

驚くのはこれら緊急救助システムがほぼ自動で動くことだ。
「飛行士が気を失っても生きていられる。自動システムが機能しない場合に人間が関与してオペレートするんです。
その前提には、人間にも機械にも失敗はありうるという考え方がある。
失敗しても補いようがあるという『優しさをもったシステム作り』がロシア宇宙開発の好きなところです」。

この緊急救助システムは「数十年にわたり失敗しては設計し直して、
修正を繰り返しながら作り上げてきた完成度の高いシステム」だという。

菊地さんの話を聞き、どんな時も確実に命を救うロシアの緊急救助システムには学ぶところが多いと実感した。
その技術を現場の若い方々に継承し、二人の宇宙飛行士が再び宇宙に向けてなるべく早く打ち上げられることを心から願う。
と同時に、「宇宙への足」を一つの宇宙船に頼る現状の危うさが露呈したとも言える。