批判があった食事管理にしても、白米を玄米に、牛乳を豆乳にとなれば、むしろ時代を先取りしていたとも言える。日本ハムとのプレーオフ前に行った徹底したバント練習もそうだ。
 広岡監督はベテランにも徹底的にやらせた。「プロだからバントなんか練習しなくてもできる」と思っていた選手に「だったらやってみろ」と練習させ、できなければできるようになるまで繰り返させた。
 そして実際、プレーオフでそれを武器に相手の守護神・江夏豊を攻略し、リーグ優勝を手にする。こうなれば、選手はついていくしかない。

 何より広岡監督のすごいところは、自分が常に正しいことを言っているという自信を一点の曇りもなく持っていることだ。
 だから選手に嫌われることをまったく恐れなかった。日本社会は、みな一緒に進まなければならないという同調圧力が強いが、この人には関係ない。それは88歳となった今も、週べのコラムのタイトルに『「やれ」と言える信念』を選んだことでも分かる。