この新しい定量的な食性復元の試みでは,動物考古学 との連携が強調されるが,
遺物として残りにくい植物の 評価については今後の課題である。
ネアンデルタール人 やクロマニョン人ではタンパク質源として動物質が圧倒 的に重要であり,動物骨の同位体比と直接的な比較が可 能だったが,
現生人の場合は栽培植物を含めて植物資源 の直接的な利用を無視することはできない。
スロヴェニ ア内陸部の新石器時代の集団に関する研究では,遺跡か ら出土した人骨,動物骨とあわせて炭化した植物遺存体
(コムギ,オオムギ,マメ類)で同位体比が測定されてい る(Ogrinc and Budja, 2005)。
また,トルクメニスタンの 鉄器時代と歴史時代の研究では,ブタの骨コラーゲンの 同位体比からヒトが利用した植物の同位体比を推定して いる(Newsome et al., 2004