弥生時代の生業におけるコメの役割は,現代日本人の起源を考える上でも重要 な問題である。すなわち,
鈴木尚らが唱えた「小進化説・連続説」では縄文時代人から弥 生時代人への明らかな顔面形態の変化を,コメを中心とした食生活の変化に起因するもの と想定し,大陸からの大規模な人口移入が無くてもそれを説明できるとしている(Suzuki, 1969)。
それに対し,埴原和郎(1991)は山ロ・北九州から出土した弥生時代人の渡来系の 顔面形態を重視して,朝鮮半島や大陸から数百万人規模の大規模な人口流入があったと想 定している。
今日,遺伝学的な調査などから人類学者の多くは後者を指示しているが,移 住集団の規模については,移住後の人口増加率の相違を勘案すると必ずしも大きくない可 能性があるとの見解もある。
このような議論の中で,弥生時代のコメの役割を明らかにす ることができれば,小進化説の妥当性を議論することが可能となり,現代日本人の起源に 関してより具体的な議論が可能になると期待される。