研究チームは、生体内観察システムを使って高脂肪食を与えた野生型正常マウスの大腿動脈を注意深く 観察しました。
すると、動脈硬化モデルマウスのような白血球接着が投与2週間後から徐々に起こっていること を見いだしました。
この時点で高脂肪食を食べているマウスと通常食を食べているマウスの血液中のタンパク 質を網羅的に比較解析してみると
、高脂肪食マウスでは補体成分である C5a という分子が非常に高値である ことが分かりました。
補体は血液中に含まれ、感染症における病原菌排除や貪食能促進作用、
好中球活性化 作用など様々な炎症性疾患に関与していますが、高脂肪食や動脈硬化症との関連は知られていませんでした。
さらに、C5a が好中球に作用すると単球走化因子として知られる MCP-1 の産生が亢進することが分かりました。
これまで MCP-1 は脂肪細胞や単球で産生されることは知られていましたが、好中球で産生が亢進することは 知られていませんでした。
これらの結果における C5a の重要性を確認するため、
C5a 受容体拮抗薬をマウスに 投与し実験を行うと、大血管における白血球の接着は阻害され、血液中の MCP-1 の上昇も抑制されました。
さ らに、好中球のみが特異的に蛍光発色するマウスや好中球分画のみを特異的に除去する手技を用いてマウ スの実験を行うと、
高脂肪食負荷によって大血管に接着している細胞は好中球であることが明かになりまし た。