広島県在住の日本人7,334人とハワイ在住の日系米国人3,367人に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)行ってインスリン分泌量を比較したところ、日系米国人の空腹時および負荷後30分、60分、
120分のインスリン濃度が広島の日本人の約2倍以上でし
日系米国人では、広島の日本人に比べて、インスリンの基礎分泌と追加分泌がともにアメリカ人並みに高かったのです。
広島県人の空腹時インスリン濃度(基礎分泌の指標)は10μU/ml以下でしたが、日系米国人では20μU/mlにもなっていました。
2)原 均.日本人2型糖尿病の不均一性 − インスリン分泌不全と抵抗性 − . 糖尿病 41 (Supplement 2), A21-A25, 1998.
このことは、一定の耐糖能(血糖処理能力)を維持するために
、日系米国人は一般の日本人比べて、多量(約2倍)のインスリンを分泌していることを意味します。
日本人は、食生活がアメリカ型の高蛋白脂肪食(低炭水化物食)に移行すると、
短期間で(ハワイ移民が始まったのは約150年前)、
たくさんのインスリンを分泌しなければ生きていけないようになってしまったのです(インスリン抵抗性)。
さらに、40歳以上の広島県在住日本人(1,144人)と日系米国人(1,566人)の追跡調査から
、広島の糖尿病発症率が5.2%であったのに対してハワイでは10.8%と、
アメリカ型の食生活を受け入れた日系米国人には糖尿病が高率に発症することもわかりました。遺伝的にインスリン分泌能力の低い日本人は、欧米型の炭水化物の少ない食事に移行すると、
糖尿病になりやすくなります。低炭水化物食が膵臓にストレスを与え続けるからです。

インスリンの分泌が多くなると困ったことが起こります。
1990年頃、肥満、糖尿病、脂質異常、
高血圧が重なると心筋梗塞(動脈硬化)をおこしやすいという「死の四重奏」
「シンドロームX」「メタボリックシンドローム」「
インスリン抵抗性症候群」というアメリカ発の考え方が紹介されて話題になりました。
その根底に高インスリン血症(インスリン抵抗性)が存在しています。
デフロンゾ教授が「インスリン抵抗性症候群」の提唱者3)であることは先に述べました。インスリンの高い状態が続いていると、血管の内膜が肥厚し、血管平滑筋細胞が増殖して動脈硬化を起こすと言われています。