「Another Girl」におけるポールのプレイはいわばそれをさらに発展させた奏法に思えます。
おそらく細い弦での自由闊達なチョーキングにこだわり、どの指でも全音までのチョーキングプレイを可能にし、あのようなフワフワ、
フラフラした不安定なニュアンスを、深いヴィブラートも併用することによって出していると思われます。音程をわざと不安定に
するようなプレイ、とも言えると思います。この音程をわざと不安定にするプレイというのはジェフ・ベック等が得意とする奏法でもあります。

ポイントは人差し指のチョーキングによるC→D→Cの音の動き(3弦5フレット)であり、たまたまキーが同じ「Ticket To Ride」
のエンディングにおけるプレイも同様のテクニックを使っております。

単音中心のプレイであり、これは当時ロンドンを中心に神と呼ばれ始めたクラプトンがB.B,キング、フレディ・キング、マディ・ウォーターズ、
バディ・ガイ等のブルースギタリストから取り入れたスタイルです。
もちろんチャックベリーのようなダブルストップのスタイルも使っております。例えば1:17あたりからはチャックベリーのダブルストップの
フレーズと人差し指のチョーキングによる音の動きをミックスさせたテクニックになっています。

クラプトンは自分の一番好きなミュージシャンの一人なので、彼の音楽的な足跡はしっかり把握しているつもりです。
そもそも私はポールのプレイのそれがクラプトンの影響であると断定はしておらず、その時代にロンドンで活躍し始めたクラプトンを
始めとしたブルースに影響を受けたギタリスト達のプレイからインスパイアされたのではないか、という可能性を示唆しただけです。

以下に私が示した「Another Girl」におけるポールのテクニックの特徴がよく表れている箇所を記します。
00:01〜、00:32〜、00:44〜、1:50〜

1:06〜やエンディングなどのフレーズでは、チャックベリーにはあまり見られない深いサスティーンの効いたヴィブラートが聴けます。
ブリティッシュのブルース、ロックギタリストが多用し始めたテクニックの一つです。