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の続き

それはオープン戦最後の札幌遠征中のことだった。
3月23日の北海道日本ハム戦、打線が9回表に3点のビハインドをひっくり返しながらも、その裏に追いつかれて7対7の引き分け。
試合後のミーティングでは、宮本慎也ヘッドコーチから叱責の声が飛んだ。
お前がキャッチャーだったら勝てないーー。
それは正捕手である中村のリード、そして立ち振る舞いに対する、厳しいダメ出しだった。
「オープン戦でピッチャーが点を取られていたんで、『ピッチャーだけの責任じゃない』ってフォローしてあげようという気持ちもあったんですけどね。
中村はピッチャーが打たれた時に、それを責めるような仕草をするんですよ。打たれたら、それは自分の責任っていうのが見えない。
『ピッチャーが悪い』っていうふうに見えるし、それじゃ信頼関係は築けない。いいキャッチャーは、ピッチャーの責任を背負わないといけないんですよ」
宮本ヘッドコーチは、叱責の意図をそう話した。
捕手としての中村の成長を促すとともに、投手陣に対する配慮も含まれていたその「ダメ出し」は、翌日の中村の発言を経て、バッテリーの結束を強めることになる。
「確かにそうだなと思って、その日はずっと考えてて……こんなことしてちゃいけないなって。
その次の日も結果的には負けてしまったんですけど、やるべきことはしっかりやって2点に抑えたっていうことで、ミーティングで話をさせてもらったんです」(中村)
その場で、中村は自分の思いを切々と訴えた。
前日は投手の足を引っ張ってしまい、その借りを返そうと必死になってリードしたこと。
96敗という、去年の悔しい思いを常に持ち続けていること。
そして、投手陣に対してはシーズンに入って打たれることがあっても、次の登板で取り返す気持ちを忘れずにやろうということ。
「ムーチョもしっかりした芯を持ってるんで、やられたところを反省して、しっかりと試合をつくってくれて。
その中で、ミーティングで自分の意見を言ってくれて、僕らも熱く感じるというかグサッと(心に)刺さりました。
そこからムーチョもすごく変わったと思いますし、思いも伝わってくるんで、僕らもそれに応えられるようにしないと」(近藤)

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