アトピーに「サクラン」有効 スイゼンジノリから抽出

 福岡県朝倉市の黄金(こがね)川だけに自生する絶滅危惧種スイゼンジノリから抽出される新物質「サクラン」が、
アトピー性皮膚炎の予防と治療に有効であることを高知大学の弘田量二助教(環境医学)らのグループが突き止めた。
マウス実験では、かゆみによるひっかき行動が10分の1以下に激減。
アレルギー反応を引き起こす同皮膚炎の原因のIgE抗体も、ほとんど検出されないレベルに低下したという。
天然由来のため副作用はほぼないとしている。臨床試験を経て医薬品としての実用化を目指す。

 サクランは、北陸先端科学技術大学院大学の金子達雄准教授(有機合成化学)らが2006年にスイゼンジノリから発見した多糖類。
1グラムで水6リットルの高い吸水性があるほか、レアメタル(希少金属)やレアアース(希土類元素)を吸着する性質もあり、企業や研究者の注目を集めている。

 弘田助教によると、人工的にアトピー性皮膚炎を起こしやすくしたマウスの耳に10日間連続で、かゆみを起こす物質とサクランを塗布。
かゆみ物質を塗りサクランを塗らないマウスと、ひっかき回数や皮膚の炎症の度合いを比較した。

 その結果、サクランを塗布したマウスは、ひっかき回数やIgE抗体量が大幅に低下。
皮膚の炎症度合いを示すタンパク質TNFアルファの量も5分の1に減少したという。

 弘田助教は実験結果を「サクランには優れた保湿作用と抗かゆみ作用がある。
皮膚表面の角質層を保護することでアトピー性皮膚炎を悪化させる肌のかゆみと炎症反応が
抑えられ、アレルギーの指標となるIgE抗体も減少した」と分析する。

 今回の実験で、アトピー性皮膚炎の治療に広く使われている抗炎症薬のステロイド剤に匹敵する効果が認められたといい、
研究成果を近く米国の学術誌に論文発表する。今後は、年内に有効成分を特定し、3年後の臨床試験を目指すという。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/225705
絶滅危惧種のスイゼンジノリ(手前)が自生する黄金川=福岡県朝倉市
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/fukuoka/20110209/201102090015_000.jpg