【R30指定】御機嫌如何【長編小説】
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＜はじめに＞
本来であれば、創作発表板にでも投下するべきですが
どう考えても違うので、ここで書かせてください。
はるか昔に撮った、元彼女とのエロい動画を見つけて
見てしまった五十代弧男の阿呆な話です。
長編ですが、手が遅いので
落ちない程度に書きこんでいくことになると思います。
冒頭延々とエロいシーンが続きますが
構成上どうしても必要と考えています。
ご寛恕くださいませ
R30指定 携帯のない頃の話がメインとなりますので
30歳以下の若い人には、分かりにくいかもしれません。
よろしくお願いします。
本当のことを言うと、読んでもらいたい人は
この世に、ひとりしかいませんが、
きっと目に触れることはないでしょう（笑）
なお、この小説は完全なフィクションであり
登場する人物・団体名は、すべて架空のものです ナミリの動画
ナミリの動画を見たのは、魔がさしたとしかいいようがない。
ベランダから東海大相模のクリーム色の校舎が見えるアパートの部屋のなか、
壁を隠す四つの本棚には隙間なく本が詰め込まれ、入りきらない本は、床に積
み上げられている。それだけでも、軽く二三百冊はあるだろう。
四つの本棚の前には、炬燵と小さな簡易ベットがあり、ベットには若い全裸
の女が、膝をたてて、あおむけに寝そべっている。 ナミリの動画②
ポコポコという音をたてながら、女に近づくカメラ。
（何しろ、大昔の話で、大昔のビデオカメラなもので）
どういうわけか、女は畳んだバンダナで目隠しをされている。
（たぶん俺がしたんだろうけどね）
カメラは、たてた膝の奥を狙って、拡大中。
気配で、気づいたようで
「えぇっ。うそぉ。まじぃぃ」かなりはっきりした口調で
「はずかしい」これは、消え入りそうな声で
女は、右足を折り曲げて、左足の太ももに重ねて
股間を隠そうとするが、撮影者の手が出てきて、
ゆっくり右足を開かせ、そして左足も開かせる。
「いやぁぁ」笑いながら
「はずかしいぃ」
女は、両足を開いた姿勢のまま、
両手で顔を覆い、目隠しのバンダナをずらす。
「撮ってる」ちょっと、非難混じりの口調で。
でも、アップにした口元は、笑っている。 ナミリの動画③
女の頬は真っ赤で、とても恥ずかしがっている。
アップしたまま顎の下のほくろを通り過ぎで、
かわいらしい乳房、さらに陰毛、足まで下がるカメラ。
真っ白な肌と陰毛とのコントラストがエロい。
女はつま先で、カメラをけろうとする。
「はいぶんやるじゃん」（何回聞き直しても、こう言ってる。意味不明）
「いま、アップでとってた」意味は通じたようで、撮影者が答えている。
「何を」
「足」
女は、足を伸ばし、そして、左足の膝をたてる。
両腕を頭の下にいれて、顔を少しあげた。
「えっ」
「えっ」
「えっ」
何か聞き直している。
「ナミリ、ポーズとって」聞き取れないけど、たぶん言ってる。
あおむけに寝て、足を伸ばして、カメラを見つめるナミり。
「ポーズ。わかんない。いやらしい」
「いやらしいこと頼まないでよ」
ナミリは、体を横向きにする。
顔をアップすると、バンダナを下げて目を隠す。
カメラが、足の方を映すと、またカメラを蹴ろうとする。
また顔をアップすると、今度はバンダナを上げて、目を見せて
「ほんとに、いやらしい」 ＜ブレイク＞
「ええと、この調子でやるのでしょうか？
エロいシーン終わるまで、ひと月くらいかかるのでは」
「悔い無き戦いをするのじゃ。ナミリのことはもう二度と書かない。
忘れることにした。忘れるために書いている。全部、思い出すつもりじゃ」
「全部思い出して、全部忘れるのですか？」
「その通りじゃ」
「この語り口、あまり登場すると、素性がばれるのでは」
「撤退」 ナミリの動画④
横向きに寝ているナミリ、
ほそい指がそっとお腹を撫でながら股間のほうに動いている。
自発的にするはずはないから
「オナニーして。まねでいいから」と頼んでるはず。
指は陰毛を撫ではじめた。
仰向きに姿勢を変えたナミリ、陰毛を撫で続ける。
でも、恥ずかしさが限界を超えたみたいで、
起き上り、斜めに座った。
そして、カメラを見て、顔を横に向けた。
顔をアップするカメラ。
軽くウエーブのかかった
肩まである髪をかきあげて
カメラを見るナミリ。
白い肌、二重瞼の大きな目、ほっぺは赤く上気している。
ぷくっとしたほっぺには幼さが残っている。
ナミリのどこが好きだったのかと言われると、
やっぱり、一番は顔だと言うと思う。
美人度でいえば、ユキミン（後出）の方が上かもしれないけど
好みからいえば、百対零でナミりの方が好き（ごめんねユキミン）
さらに顔をアップするカメラ。
少しうつむき加減になって、前髪をさわる。
ナミリは、「前髪命」で、前髪が乱れている状態を絶対認めない。
これから、シャワーするから、そのままでいいじゃんという時でも
必ずドライヤーで直す。前髪で、額を隠していない顔を見られたくないらしい。 ナミリの動画⑤
「変態」とカメラに向かって呟いたナミリ、
四つん這いになって、体を伸ばして、
炬燵の上のたこ焼きをつまんで食べる。
腹の辺りが薄く細い体を真横から撮るカメラ。
撮影者はしゃがんだらしい。
そういえば、何故目隠しをしていたか、いま思い出した。
ナミリは、自分の胸が、かわいらしいことを非常に苦にしており
自分は、かっこいい人と付き合えない。なぜなら、胸が小さいから。
街で胸が小さい人を見ると、友達だと思う。雛形あきこが大嫌い。
そして、いつか豊胸手術をすると言っていた。
それに対して、豊胸手術が始まってから、一世代経ってない。
将来何が起きるかわからない。中に入れたシリコンが固まったり、
生理食塩水のパックが破れたということを聞いたことがある。
もう少し大人になれば、考えも変わるでしょ。
体つきも、もっと変わってくるし、と反対すると
あなたは、胸がない悩みをわかっていないと、
すごく怒られたことがある。
かわいらしい胸を見られるのも嫌で、
真っ暗なところでないと
裸になりたくないとも言っていた。
ここからが、すこし論理の飛躍があるのだが、
目隠しをすれば、明るいところでも裸になれるという。
見ているほうでなく、
見られている自分が目隠しをすればよいという理屈は、
分かりかねるとこともあるけど、
ナミリがいいなら、それでいいんじゃない。
という流れで、目隠しをしていたのである。
ナミリは、もぐもぐ小さな口を動かしながら、
お茶を飲んで、
四つん這いの体を丸めて、布団の中に逃げ込んだ。
カメラの方を見て、にこにこ笑っている。
すかさず、撮影者の手が布団を剥がして、
カメラをおしりの方に回り込ませる。
左のおしりのうえに大きなほくろがある。
「こんないやらしい人、見たことない。あたし。はっきり言って」
ちょっと、あきれた感じで
そういうと、ナミリは、カメラに顔を寄せて
チュッとキスをした。 ナミリの動画⑥
ナミリの動画を見てしまったのは魔がさしたとしかいいようがない。
不幸で痛ましい三鷹の女子高生殺人事件の過去ログを見ているとき
突然、思い出してしまったのだ。
容疑者の堂々とした態度、
なにか偉大なことを成し遂げたかのような満ち足りた穏やかな表情
少なくとも、そう見えた。
絶対安全と思っていた自分の家で襲われ、
驚愕と恐怖のなかで、刺され亡くなった女子高生のことを思うと
どうにも納得できずに、鬼女板の過去ログを見ていたとき
突然、思い出してしまった。
事件直後は、画像や動画は、刺した後に、アップしたのだと勘違いしていた。
朝御飯を食べながら、ネットを見るので、画像も動画も見ることはできたが
見てはいけない気がして、見なかった。
画像の方が何日も残っていたので早く削除されればいいのに、と思っていた。
「きびしく育てたつもりです」
と、娘を亡くしたご両親に言わせるようなことをして、
10月1日に画像をアップして、6日に動画をアップして
もう、この時点で、復縁を完全にあきらめたということかぁ
二人の間に愛があったことを、世間に知らせたかったのかな。
などと、考えているときに、そういえば、と思い出したのだ。
タイムマシンがあったら、この時に戻って、絶対見るなと言う。
絶対にだ。 ナミリの動画⑦
「ほんと、かんべんしてくださいよー」
裸のまま正座して、顔を少し傾けながら、懇願するナミリ。
しかし撮影をやめる気配はない。
髪をいじり、手が太もものうえに置かれている。
ちょっと、飽きたみたい。
ナミリ、何かに気づいたようで、撮影者に近づき、
撮影者のはいているジャージをずらす。うれしそうだ
「すごいぃ」
これ以上ないくらい勃起している撮影者のあれ。
うれしそうな顔で、見上げるナミリ。
パンツのうえから、勃起しているところを口に咥える。
「ほんとは、してほしいんでしょ」
パンツを脱がせるナミリ。
「あ、でも、これゴムつけたんだよね。残念でした」
ゴムの匂いが嫌だから、フェラしないと言ってる。
でも、依然として撮影者の先のほうを熱心に触るナミリ。
「皮剥けてるよ」
エッチした後みたいで、コンドームのゼリーかなにかが、
残っているのを、皮が剥けたと勘違いして言ってるみたい。
ここで、撮影者のあれのアップ。
シャワーで、洗ってきたみたい
撮影者が一時代ったようだ。
ナミリの細い形のよい指が、先を広げたり、狭めたりしている。
なにかが、出てきた。
「キレイにしないとね」
ティッシュで拭きながら、つぶやくナミリ。
そして、口に咥える。
すかさず、横から撮る撮影者。
ナミリは目をつぶって、先の方を咥えている静かに頭を動かしている。
目を開けて、横から、撮っていることに気づいて
「はははっ」と嬉しそうに笑う。 ナミリの動画⑧
実は、動画を見る前の記憶が定かではない。
１０１号室で拷問されたら、こんなになるのでしょうね。
洗脳されたように、ナミリについて、どう思っていたか？
記憶がないのである。
そういえばと、思い出し、探しはじめた。
そのときは、エロい動画をみても、
昔の動画だから、客観的に見えるんじゃないか。
エロいんだったら、おかずにしようと思っていたのではないかと推測する。
田舎に帰ってくるときに、
詰め込んだままにしてあった箱を開けて驚いたことは、覚えている。
当時の日記やナミリの写真が、そのまま残っていたから
どれほど、好きやねん。と、思った。捨てとけよ、とも思った。
エロい写真も出てきた。
携帯も、ネットもない時代なので、ポラロイド写真だが、数十枚あった。
動画を見るまでは、苦労した。
ビデオカメラを買ったのは、エロい動画を撮るためではなく、
カラオケで歌っているところを撮ることが、目的だったようだ。
ＮＡＭＩ ＴＡＫＡＹＡＭＡ ♡ プロモーションビデオと、
シールをはった八ミリビデオが、十個くらい出てきた。
八ミリビデオが出て来ても、デッキがない。
ビデオカメラは、シャープの画面の大きなやつ、
映っている画面を見ながら、歌えるから、
それを選んだみたいだが、当然壊れていた。
デッキも発売中止になっていた。
奇跡的に、エロいところだけ編集したＶＨＳのビデオが出てきたが
これもデッキがない。
そういえば、モー娘のビデオを取り込んで、ＤＶＤに焼こうと思って
買って、結局、やらなかった、ディーガがあることを思い出して
それを、探し出して、見ることができたのは、
いま、ディーガを見て確かめてみると、１１月１９日のことである。
動画を見つけて、見ようとして、一か月以上、かかっている。
ふつう、あきらめるんじゃねえの。あきらめとけよ。
思ったより、画像は鮮明で、一番最初に、思ったことは、
これはパソコンに取り込んだりしてはいけない
なにかの拍子に、流出でもしたら、大事になるし、
何よりナミリに悪いということだった。
最初は、冷静に見ていたようである。 ナミリの動画⑨
「ユウタのチンコ出演だね。映るからキレイにしないとね」
口から離して、ナミリ、ユウタのあれの下を触りながら、
また先の方を舐める。
またまた横から、映すと、
「はあぁー。はははっ」とちょっと乾いた笑い。
しかし、五回くらい頭を動かすと
小さな声で「おしまい」だって。
完全に飽きた様子で、足を拡げたまま、寝そべる。
右手を股間の上に置いて、左手を頭の下に入れて、カメラを見ている。
「いま、アップにした。わかるよ」
「あれ、毛になにかついてるよー」
ユウタの手が出てきて、何かをとる。
「なんだろうねえ。恥垢かな」
このデリカシーのかけらもない発言で、さらに醒めた様子のナミリ
「もうやめません」
というと、体を横向きにして、顔を半分布団にうずめた。
ここで、一度動画は終わっている。
この頃、動画を撮ることは、今ほど簡単ではない。
ポコポコ、うるさいビデオだが、たぶん十五万くらいしていると思う。
ビデオカメラを、テレビにつないで見ると、
アダルトビデオに出ているような感じがして、
それが面白いのだ。
そういうことが、まだ珍しい頃なのです
ナミリは、嫌がっているような言動を繰り返しているが、
ナミリの撮ってもいいよという許可を得ての撮影である。
（日記より、日時も特定した。
ナミリは、おわびとお礼のつもりだったみたい
詳細は、後述するが、いろいろあったのだ） ＜ブレイク②＞
「ええと、バンダナはどうしたのでしょう」
「いつの間にやら、青いバンダナじゃな」
「はっ。最初はカルチョの付録かと思ったのですが年代的に考えると違いますね」
「エロいシーン、書いてて、ちょっと面白いですな」
「もっと、こまかく割って、表情つけたほうがいいかもしれんな」
「でも、全体から見ると、どうなんでしょう」
「ユウタが、ど変態エロエロ野郎であることは、まぎれもない事実じゃから
仕方ないが、前の職業的にどうかしら？」
「全部、小説じゃからと、つっぱねるしかないじゃろ」
「白けるから、いいたくないですけどね」 ナミリの動画⑩
トイレに入るナミリとカメラ。
いつの間にか、ナミリは、髪をピンでとめて、纏めている。
むちゃくちゃ、かわいい顔のアップ。ていうか、アップしすぎ。
（ユニットバスのトイレなので、狭くて距離がとれないみたい）
「座ってやっていいの」
どうも、オシッコするところ、撮らせてくれることになってるみたい。
「いいよ」
オウム返しで、思わず応える撮影者。
いや立って、オシッコ出るところ、撮らせてという間もなく出てる音がする。
依然として、画面大写しのナミリの顔、ちょっと照れてるみたい。
焦るカメラ、太ももを開かせて、出ているところを撮ろうとするが
「真っ暗」撮影者のうろたえたような声。
そうこうしている間に終わってしまった。
「すんじゃった」撮影者の、残念でたまらないような声。
「すんじゃった」照れ隠しもあるのだろうか。ナミリも同じセリフ。
コロコロ、トイレットペーパーをとりながら、少し躊躇のあるナミリ。
しかし、カメラは、冷然と撮影をやめない。
意を決したように、ペーパーであそこを拭くナミリ。
正直、これが一番恥ずかしかったかもしれない。
紙を落として流す。ユニットバスの外に出て、撮影をやめない撮影者
こうやって見ると、ナミリは、本当にスタイルがよい。
細いけど、貧弱というわけではない。
肩幅はほどよくあり、確かに胸はかわいらしいが、
絶壁に干しブドウというほどではなく、それなりにふくらんでいる。
おしりは、ちょっとむちむちしている。
太ももから足にかけては、ほそくながい。
足先は、ちょっとぽわっとしていて、子供の足みたい。
鏡を見て、髪を直し、さっぱりした顔になったナミリ、
ユニットバスを出る。
「近い」
ぶつかりそうなくらい、近づいたナミリ。
思わず、撮影者が呟いた。
「ユウタ、チンコ洗って」
フェラしてやるから、
ゴムの匂いがしないよう石鹸できちんと洗ってこいといってるみたい。
突然、人が変わったように、ノリノリになっているのは
たぶん、ここまで撮った動画をチェックしたのだと思われる。
結構、キレイに撮れているので、気をよくして、ノリノリなのだ。 ナミリの動画⑪
「撮ってるの」
「うん」
ナミリはベットに、足を組んで座り、
そのまえにユウタが立つ姿勢で撮っている。
「よろしくお願いしまーす。チンチンちゃん」
ナミリの脳内設定は、ソープ嬢のようである。
手を動かしながら、口に咥える。
目をつぶって、一生懸命動かしている。
「ユウタいってね」「ユウタいってね」
返事がないので二回言うナミリ。
口が小さいのと、舌の使い方が上手いので
ナミリのフェラは特別気持ちがよい、上手だね というと、
高校生の時、援交して、お金をもらっていたからね という。
ナミリは、年がら年中、この手の嘘を言って、
ユウタがびっくりするのを面白がっていた。
電話で話しているとき、中学生のとき二つ下の弟とエッチしていたと、
真に迫った調子で話したことがあった。本当かしらと思い始めたら
ウェー、気持ち悪いと、自分で言い出して、嘘がばれたこともある
「いきそう よこになっていい」
さらに、頑張るナミリ。しかし、カメラが近すぎで、ちょっとボケてる。
「いっちゃって、大丈夫？」
突然、やめるナミリ。
一回出しちゃうと、回復しないのではないか。
エッチできなくなるのではないかと、心配しているのである。
ユウタが、返事しないのも、そのせいで、
みてのとおりのど変態エロエロ野郎だが、
ユウタのあれは、三十過ぎたころから、ユウタに協力的ではない。
「いれる？」「はめていい」
「うん」
コンドームをつけるナミリ。
「平気」「これでいいの」「こんだけでいいの」
ナミリ、コンドームの付け方も知らない、援交少女って、いないから。
「うん。いいよ」
「はめるよ」
ユウタのあれをにぎって、腰を落とすナミリ。
「はいるかな」
入ったみたい。
寝転んだユウタ、カメラを確かめて、撮ろうとしたら
満面の笑みのナミリ、手を伸ばして、電気を消した。 ナミリの動画⑫
ベットに横になったナミリの顔が映っている。
カメラを、本棚の前に積まれた本の上に置いて、撮ることにしたみたい。
ナミリの手がカメラから離れた、録画のスイッチを押したようだ。
ナミリの上にユウタが、かぶさって、抱き合い、キスしている。
とても、とても、長いキス。
目をつぶっているナミリ。
ユウタが手を突っ張って、動き出した。
でも、入ってないみたい。
ナミリが小声でなにか言ってるけど、聞き取れない。
突然、カメラを手に取り、二人の接合部を撮るユウタ。
「おいおい」ナミリの声。
なぜか、バスタオルを胸に巻いて、注意深く乳首を隠すナミリ。
なにか、意味があるのか。おっぱいを隠しているつもりなのか？
また、カメラを戻し、抱き合う二人。
「ゲッホ、ゲッホ」咳き込むナミリ
ユウタの悪い癖、鼻を舐めたみたい
「ごめん、ごめん」
「違う、そんなことないよ。息のすい方間違えた。鼻で息した」
ナミリの意味不明だけど、優しいフォロー。
「生で入れちゃえ」「うそうそ」
また、抱き合う二人。
ナミリの腕がユウタの背中にまわっている。
ナミリが喘ぎだした。
入ったみたい。
小刻みに動く、ユウタの背中。
「ふうん。ふうん」
喘ぐナミリ。
動画は、ここで、止まっている。
ナミリが足でビデオを止めたみたい。
エッチしているところは、撮られたくないのだ。
シャワーを浴びたのか、タオルで体を拭くナミリが映る。
「やめてよ。もういいって」
「けっこうやったよね」
「えっち？？」
「はい、おちまい」 ナミリの動画⑬
ナミリが黒い服を脱いでいる。
「オフロ入る？」「先に入る？」
「ラブホに来るの、初めてじゃない？ちょっと、うれしい」
なぜか、ブラジャーだけは外さないナミリ。
バスローブを羽織り、注意深く外す。今更、なんなんだろう。
おっぱいを見られたくないのか。
「やっぱり、変わってるね」
「どこが」
バスローブをはおり、ドライヤーで、髪を直すナミリ。
オフロから出てきたみたい。
トイレに座っているナミリ。
「それ、あれでしょう。匂い袋じゃないの」
「違うみたい」
ベッドに上がり、枕元のスイッチ類をさわるナミリ。音楽が流れてきた
ベットの上に仁王立ちになって、
中山美穂「ただ泣きたくなるの…」を熱唱するナミリ。
バスローブを羽織っているが、なぜか前がはだけている。
基本おっぱいが見えなければ、陰毛は見えてもオッケーというスタンスみたい。
一番が終わりかけたところで、ユウタが登場、ナミリのバスローブを脱がせる。
右手でマイクを持ち、左手でおっぱいを隠しながら、歌い続けるナミリ。
「なあんで、脱がせるのよ」ちゃんと、間奏のところまで待って、文句を言う。
サビのところでは、おっぱいから左手をはなし、くるくるまわしながら熱唱する
確信を持っていうけど、中山美穂よりうまい。高音に抜けるところがキレイだ。
画面が光っているのは、ポラロイド写真を撮っているみたい
歌い終わったナミリ、目ざとく見つけて
「ユウタたってるよ」「おしまあい」
はだかのナミリ、おっぱいを触りながら（隠したいみたい）
「裸で歌ってもうまいね」ほめるユウタ
カメラの前をおっぱいを触りながら、横切るナミリ
「髪、洗っといで」優しく言う
ここで、動画は終わっている。約四十分弱である。 ＜ブレイク③＞
「ええと、細かく割って、表情をつけるのでは、ありませんでしたか？」
「作品的には、もっと粘って、丁寧に描写するべきなのじゃが、きついのじゃ。
かわいい姿を見れば見るほど、つらいのじゃ。
これ以上、動画を見る精神的なスタミナがない」
ここまで、書き直す時の注意点。
aナミリにはチンコとか言わせているが、地の文章では、
あれとか処理している潔くないのではないか？
bユウタの名前、もっと早く出してもよいのではないか
c細かく描写をつけて、エロくすることと、全体の構成との兼ね合い ナミリの家
最初のうちは、内容をまったく覚えていないことに驚いていた。
どうも、別れた直後に、まとめて箱に入れて封印していたみたい。
なにも、覚えてなさすぎ。
断片的に、覚えていたと思い込んでいたことは事実とは違っていた。
次に、よく撮れていると感心した。
被写体が、美人でスタイルがよいナミリだから、
どんなにとっても、キレイなんだけど、
アングルとか、アップとかロングとか、けっこう昔の自分に感心した。
伊達に、エッチなビデオたくさん見てないと思った。
動画が半分を過ぎたころから、おかしくなった。
愛が溢れているんじゃないか。
なんで、こんなに気が合っていたのに別れたんだろうと考え始めた。 ナミリの家②
三鷹の事件の過去ログに、
「あんな動画や画像がなかったら、
容疑者も、もっと楽に忘れることができたろうに」
とかいうようなのが、あった。
容疑者の心を忖度する気も、同情する気も、毛頭ないけど、
これは、その通りだと思う。
個人的には、画像より、動画の方が一億倍きつい。
ポラロイド写真は全部で五十枚。
カレーを（ハヤシかもしれない。たぶんハヤシ。よく作っていた）
食べているものや、顔をアップで撮っているのもあるから、
エロイのは、四十何枚。
P2が使えなくなって、書きにくい。 ナミリの家③
三鷹の事件の過去ログ風にポラロイド写真を紹介する。
（現物をみてないんだけどね。
ユウタは好奇心が弱いというか、あまり他人に興味がないところがある）
１黒い上着に青いミニスカに黒いブーツで、ソファに座ってカラオケを歌う
ナミリ。
２カメラの方を見て、両手ともピースサインのナミリ。テーブルにはウーロン茶
が置いてある。
３ソファに座ったまま、青いスカートをめくってストッキングとパンティを
みせてくれるナミリ。
４モニターの前で、パンティを膝までずらし、スカートをたくし上げて、お
尻をみせてくれている。
５そのまま、前を向いている。右手で、スカートをたくし上げて、左手は、
顔にかかった髪を触っている。照れ笑いを浮かべている。
おそらく、八王子かどこかのカラオケで撮った写真だと思われる。
初めて、ポラロイドカメラを買ったときだと思う
このころ、基本は「写るんです」で、写真を撮りまくっていたけど、
エロい写真は、現像してくれないので、ポラロイドカメラ買ったのだと思う
（あんまりにもエロいんで、自分にひきそうです） ナミリの家④
６ラブホテルで、バスローブを着ているナミリ。
洗面台の前で、髪をまとめて、手を握ってそのまま腰につけ、澄ましているナミリ。
いつもつけていた金のネックレスが、光っている。
７順番が違うかもしれないが、バスローブの前がはだけているナミリ。
左の乳首と下の毛が見えている
８ ９ １０ １１ １２ １３
おそらく、中山美穂「ただ泣きたくなるの…」を歌っているナミリ。
バスローブを脱がした後みたいで、全裸である。
熱唱しているナミリを、さまざまな角度から撮っている。
歌い終わって、満足そうに、顔を触っている写真もある。
ナミリの体は 本当に、細く、くびれている。
体脂肪、少なそう。
これでは、おっぱいがかわいらしいのも仕方ないと思われる。
１４ １５ １６ １７ １８
ユウタのアパートで、炬燵に座っているナミリ。
ちゃんと服を着ている、珍しいポラロイド写真。
炬燵の上に置かれたワープロを触っている写真もある。勉強しているようだ。
顔をアップした写真。
ハヤシライスをスプーンで口に入れたところを撮った写真もある。 ナミリの家⑤
１９バスタブの中のナミリ。鼻のところに大きなニキビを作っている。
赤くなっているので、わかる。これは、なかなか治らなかった
２０これ以降は、すべてベットの上のエロい写真。順番がわからない。
黒のレースのパンティをはいて、胸を左手で隠すナミリ。
ベットに寝ているナミリを、上から撮っているみたい。
２１なにか飲んでいる。
おそらく、コーヒーリキュールを牛乳で割ったようなものだと思う。
２２全裸でベットにたって、両手で股間を隠している。
ウエーブのかかった髪が、きれい
眉もしっかりある。細くしない時代みたい
２３ ２４
タバコを吸っているナミリ。横座りで、ちょうど吸い込んだところの写真と
寝転んで、吸っている。テレビでもみているのだろうか。
２５いわゆる女豹のポーズ。四つん這いになって、頭を上げている。
ウエーブのかかった髪に半分隠れた、左目がエロい。
２６ ２７ ２８ ２９
ベットの上に体を起こしたナミリの写真。
基本、額は出ているけど、すこしだけ、額にかかる髪もある。
自然のように見えて、これは、すべて強固なポリシーに基づいた髪型。
今と比べると、すこし髪が重いようにおもうけど、よく似合っている。
こうやってみると、すごい美人だと思う。
笑っている写真が二枚ある。ほっぺがかわいい。
３０ ３１
全裸で、ねころんで目をつぶっているナミリを、足の方から撮っている。
同じ位置で、左足に右足を載せて、こちらを見ているナミリ。
３２ ３３
顔のアップの写真が二枚。
澄ましている写真と、手で頭を支えて、寝転んでいる写真。
ちょっと、酔ってるかもしれない。
ナミリの家⑥
３４座って足を開いて股間を見せているナミリ。太ももを両手でおさえている。
照れ笑いを浮かべてないところを見ると、怒ったような顔をしてという指
示があったと思われる。
３５ ３６ ３７ ３８ ３９ ４０ ４１ ４２ ４３ ４４
ここから、電気を消して、カメラのフラッシュで撮っている。
いちだんとエロい。
背中のほうを上から撮っている写真。おしりに寄っている写真。
あおむけになって、足を開いて、股間を見せている写真の連写。
流石に、恥ずかしくて仕方ないようで、照れて笑っている。
その上、撮影者は指を使って、あそこを開かせるよう指示しているようだ。
（はっきり言って、自分のことだけど、沖のかなたまで、ひきそうです。）
人は、恥ずかしくてたまらないと、ここまで笑顔になるのか。
４５ ４６ ４７ ４８ ４９ ５０
おしりのアップの写真。太ももがエロい。
でも、相変わらず、ノリよく、親指を立てて、笑っている写真がある。
楽しそうに見える。ピースサインをして、すごく笑っている写真もある。
最後は、寝ている写真。
アングルを違えれば、巨乳に見える撮り方もあるみたい。
実際に、そう見える。
以上、五十枚。
自分の変態ぶりに、どんびき。
ナミリのノリのよさというか、協力的なのに、感心して感謝する。
まだ、若かったのに、変態プレイによく付き合ってくれたなあと、
つくづく思う。 ナミリの家⑦
「ビデオどうして撮らせるんだろうねえ」
とナミリが言ったことを、思い出す。
「それはねえ。ユウタが、ナミリに振られた後、
それをみて、オナニーするために、撮らせてくれているんでしょう」
と、答えたと思う。
何もかも、難しい恋だったので、いつも、別れることを考えていた。
その日が来るのを、恐れていた。いつも、恐れていた。
好きで好きで、たまらなかった。本当に、好きだった。
逢ってるときは、楽しくて仕方なかった。
動画を見ていたら、いろいろなことを思い出した。
逢いたい。声が聞きたい。
住所も、電話番号も分かっている。
でも、電話する勇気はない。 ナミリの家⑧
手紙を書くことを思いつく。
文面も考えないといけないけど、
まずはグーグルのストリートビューで、家を見てみようと思いたつ。
ところが住所検索をしても、ヒットしない。
フエフキシ！笛吹市。エッ！東八代郡じゃないんだ。
いつの間にか、地名が変わっていた。
南アルプス市があることは知ってたけど。
それじゃ、釜無市も、あるのかしら。
番地まで入力して、ナミリの家の通りにたどり着く。
ところが、見当をつけて、表札を見ても、高山がない。
おかしい。
空撮に切り替えると、なんか、妙に、空き地が増えているように思える。
引越ししたのだろうか。
家が、無くなっていると、もう手がかりはない。
落ち着け。
落ち着け。
駅に戻って、駅から、辿っていけばよいはず。
へえー。足湯とか、あるんだ。それに、すごくきれいになってる。
石和温泉郷駅は、凄くきれいな駅になっていた。
ここで、ユウタ、胸をえぐるような痛みとともに、思い出す。
最後に、本当に最後にナミリにあった夜のこと。
別れて、一月位した後、何か渡すために会ったことがあった。
用件が済んで、家に帰るナミリを送っていった。
自転車を押しながら歩くナミリの後ろ、歩いていた。
そのとき、駅周辺の工事をしていたことを。 ナミリの家⑨
道も大きくきれいになっていた。
区画整理でもしたのかしらん。
見当をつけて、近づいて、表札を見たけど、これも違う。
間違いようがないほど、近く、分かりやすいはずなのに、探せない。
落ち着け。
落ち着け。
思い出せ。
最後に会った夜。家まで、送り届けた。
つきあっているときは家まで送ると、
家の隣の倉庫みたいなところの前で、お別れのキスをしていた。
でも、最後の夜は、違っていた。
ナミりは、自転車を離さず、距離をとっていた。
やっぱり、別れたんだ。
もう、新しいことが始まっているんだ。
もう、過去の男になってるんだ。
「元気でね」
すごく、舌が粘りつくような感触を感じながら言った。、
そしてナミリが家に入るのを、見届けた。
ナミリは、振り返っただろうか？覚えてない。
足元を見ると、紫色の紫陽花が、盛りを過ぎて、しょぼくれていた。
そうだ。なんか倉庫があった。
それを探せばいい。 ナミリの家⑩
倉庫を見つけた。
倉庫は、キレイな建物になっていた。
じゃあ。この隣じゃん。
慎重に、表札に近づく。
落ち着け。
落ち着け。
「高山」
あった。
家は、歳月を経て、古びていた。そして、通りになじんでいた。
間違えようもないはずなのに、なぜ、探せなかったか。
無意識のうちに、初めて、ナミリを送って行った夜のこと、
大雨の夜で、新しい黄色い家が、ピカピカ光っているように見えた。
その、イメージで、家を探していたのだ。
十七年経っていた。 ナミリの家⑪
十七年経っていた。
別れてから、十七年経っていた。
そのとき、感情の大きな波に襲われた。
うわわ。
どうすんだよ。俺。どうなるんだよ。俺。
そして、気づく。
もう、ナミりは、お嫁に行ってしまって、この家にいないことを。
もう、好きとか、逢いたいとか、
そんなことも言えないくらい時間が経っていることも。
うわー。どうすんの。俺。
また、失恋したってこと。
ナミリを忘れるのには、本当に苦労したのに
また、それを繰り返すわけ。
どうなるんだよ。
この時の恐怖。
こうやって、書いてても、うまく書けない。書ける気がしない。
次に、襲ってきたのは、自責の念である。
どうして、動画見てしまったんだろう。
別れてから、十七年、何をしていたんだろう。
どんなに、好きで好きでたまらなくても、
別れたら、忘れるために、次の女と付き合い、上書きするんじゃないの。
みんな、そうしている。そうやって、生きている。
どうして、それをしてないわけ。
そもそも、どうして、動画を見ようなんて思うわけ。
ふつう、捨ててると思うけど。 ナミリの家⑫
ついにきたよ。
これが、初老性の鬱病ってやつだね。（ユウタは５３歳）
まだ病識があるみたいだから、
ちょっとは、まともなところも残ってるのかな。 ナミリの家⑬
ユウタは、もともとおかしいし、
今もおかしい自覚はあるけど、
このときは本当に、度外れておかしかった。
なにしろ、毎晩シクシク泣いているのである。（しつこいけど、５３歳だ）
寂しくて、寂しくて、寂しすぎて、死ぬかもしれないと、本当に思った。
体重も、どんどん減った。あわわ。
そして、なぜ結婚しなかったのか、必死で考えていた。 ナミリの家⑭
基本的にユウタは、一人でいるのが好きで、孤独が苦にならないタイプである。
中学生の時から、一人暮らしをしているので（下宿していた）
一人を寂しいとか、思ったことはなかった。
むしろ一人暮らしが長いせいか、他人と生活するのが、苦手である。
大学生の時、一週間くらい同棲したことがあるが、
殴り合いの大ゲンカをしてしまったことがあるくらい（後出）苦手だ。
人間一人で生まれて、一人で死ぬ。
寂しいとか、意味わかんない。
他人と一緒にいるなんて、息が詰まるだけ。
そんなユウタも、田舎に帰ってきたときは、結婚しようと見合いをした。
気分は、敗残兵で、どうにでもなれ、という心境だった。
もう、三島由紀夫なら、仮面の告白とか傑作書いて、腹切って死んでるよ。
（４５歳のときだった）
三人と見合いした。
二人目の人は、高知市の大きなパン屋さんの姪にあたる人で、歯科技工士を
しており、滔々と、大学無用論を開陳された。技術者として、誇りをもって
生きておられるのだと思われ、りっぱな人だと、思うけど、なんじゃかんじゃ
４５歳まで、大学にいたユウタにそんなこといわれても、困惑するだけです。
OSからして、違うという感じで、これはないと、そうそうに思った。
しかし、一人目と三人目の人には、何も不満はなかった。
しかし、自然にフェードアウトして、終わった。
っていうか、ユウタは、ホントに失礼な男で、一回あった後、
デートに誘ったり、電話したり、そういうことを一切しないのである。
その後も一人でいるユウタを憐れに思ってくださった方々より、
見合いの話を、山のように持ち込まれたが、すべて断った。
やる気がないのに、お見合いを受けたら、仲に入ってくださった
方々にご迷惑がかかると、思ったからだ。
そんなユウタが、何をしていたかというと、女の子に勉強を教えていたのだ。 ユキミンのメール
ユキミンは、フィリピン人のお母さん（クリスティーナさん）と、
一緒にユウタの近所のアパートに住んでいる子で、
クリスティーナさんが、ユウタの店でバイトしてくれていたこともあって、
田舎に帰った時から、知っていた。
はじめて、見たのは、クリスティーナさんが、バイトやめると、言ってました
とユキミンが、言いに来たとき。ランドセルを背負っていた。
なんて、キレイな女の子なんだ。
と、ロリコンではないはずだけど、思わず見惚れたことを覚えている。 <ブレイク④>
「油断して、本名だしたぞ」
「ティーナにしとけばよかった」 ユキミンのメール②
次に覚えている場面は、ユキミンの中学卒業の日。
大雨が降っており、お母さんとタクシーを待っていた。
ものすごく、怒った顔をしており、お母さんは困っているようだった。
それから、ユキミンがフィリピンに帰ったと聞いた。
お母さんを残して、一人で帰ったらしいと。
また一年くらいたって、ユキミンを見かけた。挨拶してきた。
そして、ユウタにバイトさせてくれと頼みに来た。
ちょうど、ユウタの母親が軽い脳梗塞を患った後だったので、
手伝ってもらうことにした
ええと、フィリピンには、帰らないのかしら？
学校どうすんだろ？学年でいうと、高二なのに？
遊びに来たわけじゃないの？ ユキミンのメール③
ユキミンがバイトを、始めて一月位経った頃、
親しくなっていたので、聞いてみた。
「ユキミンは、高校には行かないの？」
すると、ユキミンは、インターナショナルスクールに行きたいという。
え！大阪とかの学校？学費も高いし、アパート代とかも、かかるんですけど。
フィリピン人の家計は、国許に仕送りしないといけないので
バケツの底が抜けたみたいなことは、知っていたので、
「無理じゃないの。近くに、夜間の高校もあるんですけど」と勧めてみた。
ともかく、高校は出てないと、まずいんじゃないか？
「通信教育で資格を取ることもできるよ」
ちょっと、日本語が不自由なところがあるから、
ゆっくりやればいいんじゃないか？
ところが、夜間の高校も嫌だし、通信教育は時間がかかりすぎるという。
それで、高卒認定試験をやることになった。
「大丈夫。
ユキミンは英語ができるから、
最終的には大学に行くつもりでがんばりましょうね。
ユウタは、今はパン屋さんやってるけど
前は大学の教員をやってたし
ユキミンを大学に入れてあげるからね」
と、安請け合いしてしまう（正直、後悔している） ユキミンのメール④
早速、高卒認定試験の過去問をざらっと、全科目やることにした。
ところが、ユキミン、問題文が読めないのです。
漢字が苦手のようで、適当な読み方ができない。
文章も読めないのに、意味が取れるのか？
これは、大変なことを始めたぞ、と少し慌てた。
なんで、こんなに日本語ができないのか、生い立ちから聞いてみた。
ユキミンは、いわゆるジャパゆきさんだったお母さんと日本人のお父さん
のもとに生まれたけど、育ったのは、ミンダナオ島のダバオで、
日本に来たのは、お父さんが死にそうになったから、遺産をもらいに
お母さんと来たけど、遺産はなかった（生命保険もなかったらしい）
そのまま、お母さんは、日本に残って、フィリピンに仕送りすることを選択。
日本人であるユキミンは、おかあさんにとって、生きているパスポートであり、
またお父さんの身内からの援助を得るためにも、どうしても日本に残しておく
必要があたっということらしい。
ユキミンが日本に来たのは、十歳の時で、日本の学校には、小学校に一年
中学校に三年しか行ってないことが分かった。 ユキミンのメール⑤
本人のいうことによれば、一年ぐらいで、日常会話は不自由なくできるように
なったということだが、
中学校で話を聞いてみると（パン屋なので、学校に配達に行ったりするので）
どうも、授業にまったくついていけずに
取り出し授業を受けていたらしい。
一人だけ、別の教室で、先生とマンツーマンで、
それにしては、何も教えてなさすぎなんですけどね。
ともかく、漢字からやりましょうということで、
漢字のドリルを、小学校の一年から六年まで、六冊買って、やってきてと
渡した。ところが、やってこないのですね。
注文していた高卒認定試験の教科書と過去問題集も届いたので、
少しずつ、読んでいくことにした。声を出して、読んでもらって
読めない漢字には、読み仮名を振って、自宅でも勉強できるようにと。
ところが、頑として、振り仮名を振ってくれないのですね。
どうも、アメリカの影響なんだと思うけど、教科書は、代々受け継いで、次の
学年も使うもので、汚してはいけないものらしい。
いや、いや、いや、意味わかんないし。
読めなければ、なんともならないし。
もうひとつ、困ったことは、これも、フィリピン人の習慣らしいけど
来るとき、必ずシャワーを浴びてくるわけ。
夏はいいけど、真冬でも、そうするのです。
ユキミン、鼻水でてますよ。いつも、鼻をかんでいた。 ユキミンのメール⑥
やる気はあるみたいなんだけど、授業態度も最悪だった。
なにしろ、携帯を目の前に置いて
（メールとか入るとすぐに返信できるように）
気を取られながら、話を聞いているという感じで。
（悲しいことに、メール全然入ってこないんだけどね）
いやいやいや。いったい、ぜんたい、どうすればいいのか。
さらに、あんまり厳しくしないでと、言われる。
いやいやいや。
大昔、妹や弟に勉強、たまあに教えた時は、
こんなことも分からないのか？死ね！今すぐ死ね！
ここから、飛び降りて死ね！とか、やってたんですけど、
かなり、ゆるく、やってるつもりなんですけど。 字が小さくて、目がチカチカするし、慣れるまで時間がかかりそう。
自分の力で人の運命を変える。しかも、美少女の。
このチャンスにワクワクして、気負いすぎていたのは、事実である。
当初の計画では、高卒認定試験など、十一月の試験でとって、
次の年は、まるまるセンター試験の勉強をして、高校に行ってる同級生と
同学年で、大学に進学させるつもりだった。
経済的に余裕がなさそうな、ユキミンのお母さんが、
ユキミンを、、いつまで勉強させてくれるか、わからなかったし
（早く、お嫁にいけばいいと言っているように聞いていた）
あまり、時間がないのではないかと、焦っていたことも事実である。
しかし、ユキミンから早々に泣きが入ったし、
十一月の試験は、早いということで、次の試験（次の年の八月）を目標に
勉強することになった。 ユキミンのメール⑧
今、思い返すと、最初の数か月は、本当に困っていた。
勉強は、パン屋の三階で、一人暮らしをしているユウタの部屋で、
ユウタの仕事が終わる夜七時半から九時半くらいまで、ほぼ毎日やることにしていた。
頭が痛いとか、用事があるとか、休むこともあったけど、わりと、よく来ていた。
考えてみれば、ユキミンは、、かわいそうな境遇である。
大人（お母さんだけどね）の都合で、突然日本に連れてこられて、
全く、日本語がわからないのに、小学校に放り込まれて、
中学校では授業に、ついていけず、当然、高校に行ける学力もつかず
（もう少し、ちゃんと教える義務があるんではないですかねえ
給料もらってるんなら、仕事しろよ。といいたい）
フィリピンに帰ってみれば、日本に行っていたため、フィリピンの学校でも、ついていけなく
なっており（本人が言っていた）
まさしく、八方ふさがりだったわけで、
ここから、抜け出すために、ユウタのところに来ていたわけで、
その気持ちが痛いほど、わかるので、どうすればいいのか、本当に、悩んだ。
そして、腹を括った。もう、何年かかっても、いいやと。
ユキミンの手を握って、大学に入れるまで、何年かかっても、最後まで手を離さないから、
そのつもりで、頑張ろうねと言った。 ユキミンのメール⑨
もう慌てても仕方ないので、ユキミンのやりたいように、ユキミンのペースでやることにした。
ともかく、友達になることから、始めることにした。
「ユキミンは、何が好きなの」
ユキミンが、好きだという映画（トワイライト、ブラック・スワンなど）は、すぐに見た。
アニメも好きだというので、それも見た（銀魂）。
アニメを見たのは、二十年ぶりくらいだったけど、
もともと、宇宙戦艦ヤマト世代なのですぐさま、はまった。
アニメにはまっています
ニコニコの外国人の反応をみていたら、シュタインズゲートの話をしていたので、
ちらっと、見るつもりで、見始めたら、はまってしまい、二十四話全部見てしまいました。
かなり、眠いです。
ユキミンに教えてもらった、サイトが一番便利です。有難う。
こんな感じで。 ユキミンのメール1⑩
高卒認定試験は８科目選択して、テストを受けなければならない。
英語・数学・国語、あと地理歴史２科・公民１科目・理科2科目。
選択したのは、日本史・世界史・現代社会・生物・地学。
過去問を、順番にやって、チェックした。
英語は問題なし。
日本史・世界史・現代社会・生物・地学は、自習でなんとかなりそう。
問題なのは、数学と国語。
大体、４０点とればいいのだから、
数学は、最初の計算問題・文章問題７問を完璧にやって、
あとひとつ相似比の問題を取れば、
４０点になるのでと、考えていたのだが、
自分が、もし高認を受けるなら、そうするのだが、
わからない問題が出てくると、やってないところから出てると思って
あきらめるんじゃないかと考えて、一応全部やることにした。
世の中には親切な人がおり、
無料で高認数学を教えてくれる不忍堂を利用することにした。
やはり、困ったのは、国語力のなさで、
簡単な文章問題、中学校の入試でも、でないような簡単な文章問題さえ間違えた。 ユキミンのメール⑪
あまりを出せと、問題文に書いてあるのに
「あまり、関係ないですよね」とか、
いうものだから、あっけにとられた記憶がある。
「ユキミン、もう一回やるから、見ててね」
と、同じ問題を、何回も何回もやった。
ひそかに驚いて、絶望したこともある。
因数分解を解いていて、どうも、掛け算の九九が頭に入ってないように思われ
「ユキミン、フィリピンにも九九はあるよね？」
（インドは十桁の掛け算も暗記すると聞いているけど）
返事がない！ほんとに、大丈夫か？
あまりにも、失礼に思われ、問い詰めることができなかった。
さらに、大問題なのは、国語である。
ユウタがやれば、何回やっても９５点くらい。
普通の日本人であればそんなに難しくない。
構成は、センター試験と同じで
１小説２評論３古文４漢文
漢文などは、どこから探してきたんだろうと思うくらい簡単。
古文も、助動詞の活用形を書けとか、そこまでは要求されていない。
しかし、漢字が読めない人には、かなり酷な話となる ユキミンのメール⑫
さらに最大の大問題、最後の最後まで悩んだのは、
どうもユキミンは、勉強の方法というか、必要性がわかってないこと。
「大学に行きたいでしょう」と、聞くと
「行きたい」というんだけど、勉強してくれないんだな。これが。
いろいろ考えたけど、どうも中学校の経験が悪く作用しているみたい。
ユキミンは、全然授業が分からないまま、テストを受け、当然全然できないんだけど、
義務教育だからということで、進級して、卒業できた。
だから、それで通ると思い込んでいる節がある。
ユキミンに、フィリピンの日本人学校の高校の過程に一年いたと
強硬に主張されたことがあった。
それゆえ、自分は高認を受ける必要はないと言いたかったみたい。
「だから、ユキミンが行っていた学校が
ちゃんとした日本の文科省が認める高校で
ユキミンがちゃんとテストを受けて、単位を取っていれば、
あなたの言うとおり、高認の必要はないんだけど、
テストを受けて、成績表もらってるの？」
と、聞いてもピンと来てないみたいだった。
それでも、繰り返し主張するので、昼間ユキミンを呼び出して
文科省の生涯教育局に電話して聞いたら、
やはり、ユウタの言うとおりだった。
どうも、単位を取るということが、まったくわかってないようだった。 ＜ブレイク⑤＞
「ええと、急にお勉強小説になってしまいましたが」
「長くなりそうじゃ。現在進行形の話じゃから」
ここまで書き直す際の注意点
aナミリの家③の冒頭は、余計。三鷹の事件をエロい話の説明に使ってはいけない
ｂ引いてはいけない。どんびきとか、余計。ひくのは、読者のみなさんでお前ではない
ｃ自己憐憫と自己正当化は、いらない。おかしくなるから、特に注意するべき
ｄ負け将棋の感想戦みたいな話なのに、後出しじゃんけんみたいなことを書いても仕方ない ユキミンのメール⑬
このころのユキミンの生活は、完全に昼夜逆転していた。
夜の七時くらいに起きて、
ぼったり腫らした寝起きの顔で勉強をしに来て、
勉強が済んだ後は、朝までネットをやってたようだ。 ユキミンのメール⑭
先が長いので、端折っていく。
ユキミンとの勉強はこんな感じ。
今から行きます
メールが入ると、ユウタは階下まで迎えに行き、エレベーターで三階へ
ユウタが用意してある過去問を、五十分でやる。
採点する。
２０１０年１０月、勉強を始めてから、すぐくらいの成績は、こんな感じ
世界史５２点。英語７０点。生物５２点。国語２４点。
メモには、古文・漢文は時期尚早とある。日本史３５点。
少し勉強したぐらいでは点数は伸びないけど、
そこを我慢して続けてもらいたい。と、言ったらしい。
大体、九時くらいに勉強が終わると、後は、雑談タイム。
ユキミンは、自分の好きな動画を見せてくれて、
「ユウタくんは、どう思いますか」と聞いてくる。
大体、趣味が合わないんだけど（年齢差３３歳）
このころは、銀魂に、はまっていたみたい。
その関連で、龍馬伝のDVDをかす。
古文をやることを考えて、古い日本語の言い回しになれてもらいたいからだ、
九時半くらいに終り、ユキミンを家まで送っていく。
近いけど、暗いから、危ない怖い目にあうと嫌だから。 ユキミンのメール⑮
ユウタは、
スピッツの渚のPV風に作られている大学生の仲よさそうな旅行の動画を
見せて、ユキミンも大学に入ったら、友達と旅行に行ったりできるんだよ。
だから、勉強頑張ろうね。と言ったりした。
ユキミンの反応は、
私は有名な人しか知らないから、スピッツなんて知らないだって。
ジェネレーションギャップがすごい。っていうか、スピッツ知らないんだね。
「ユウタ君が好きな歌はなんですか」と聞いてきたので
よくぞ聞いてくれました、と
風の「あの唄はもう唄わないのですか」を見せると、すぐに変えられた。
エ！最後まで、聞いてくれないんですね（涙）
ユウタが修学旅行のバスのなかで歌った思い出の歌なのに！
ユキミンのカラータイマーは一時間半くらいが限界で、
それ以上は勉強したくないみたい。
だから、いろいろな話をした。
かわいそうに、話し相手に飢えてたみたい。
でも、遅くなって十時を過ぎると、必ずユキミンのママから電話があった。
どうも、エロイことされてんじゃねーかと心配してたみたい。
そりゃあ、心配するわね。 ユキミンのメール⑯
すると、ユキミンはケンカ腰で応答する。
何を言っているかは、わからない。
ユキミンは、ミンダナオ島の言葉であるピサヤ語、
フィリピンの公用語であるタガログ語、
それに学校で教わった英語（米語？）を話す。
この上、さらに日本語をやっているのだから、
大変ちゃあ大変なのである。
それゆえ、ユウタも怒ったりすることもできず、
忍の一字で、応対していた。
数学の勉強も、始めた。
不忍堂は、高卒認定試験の数学を教えてくれるサイトで、
高認の過去問を２８講に分類して教えてくれる。
因数分解・ルート・二次関数・三角比などをやるのだが、
なかなか先に進めず、いらいらした。 ユキミンのメール⑰
不忍堂は、小学校レベルから、
丁寧に教えてくれる親切なサイトであるが
ヒトコマ５０分の講義を２８回やることになっている。
ところが、全然進まないのである。
ユウタが時間の取れる日曜日の午後に呼び出して、
六時間ぐらいやるつもりでいたけど、
案の定、二時間もしないうちに、
ユキミンの体がぐにゃぐにゃになり、やる気が蒸発したことがわかった、 ユキミンのメール⑱
結局、一度試験を受けてみないと、様子も分からないし、
やる気も出ないみたいだしということで、
ユキミンには春まで自宅学習することにしてもらった。
シャワーを浴びてくるので、風邪引きそうだったし、
ていうか、風邪ひいていたし、
ママは、エロいことしてんじゃねーかと疑っていたし
漢字は読めないし、先に進めないし、
休みの間に、数学と国語の教え方を考えようと思っていた。
しかし、同一人物とは思えませんね。 ユキミンのメール⑲
ユキミンの柚子の仕事が１１月頃、始まり、
ユウタのバイトを辞めたので
春まで、ユキミンには会わなかった。
２０１１年六月ころには、勉強を再開したようで、
メールをみると
やっぱり漢字のドリルを明日持っていきます
数学は第三講まで進みました。
ユキミンのペースに合わせます。
焦らないで。
数学、一度動画見ただけで、わかるのは難しいと思います
わからないところは、聞いてください。
えらいもので、パーフェクトな文系人間。
数学は見るも嫌なユウタであるが、
さすがに三十何年前にやったことがあるせいか、
動画を見れば、思い出すのである。
どうして、自分が数学が嫌いになったか、どこでわからなくなったか
ということさえ、わかった。
一生、やらなければ、どこかでやるはめになる。
帳尻があってるということも、わかった。
しかし、初めてやる人は、そういうわけにはいかない。 <ブレイク>⑥
「ええと、ここは弧男板ですよね。女友達がいるのは、まずいのでは」
「小説じゃからと言いたいところじゃが。
ユウタの人生で、今一番間違ってるという自覚はあるのじゃ
悲しい結末が見えておる。っていうか、この間、大ゲンカしたぞ」
「ほんに、ユウタは大人げない男でございまするね」
「テレビチャンピオンで全国大人げない王選手権があれば、たぶん優勝する
じゃろうな」
「最近、たまに非通知の電話が一回コールされて切れるのじゃが、
これは電話して来いと言う暗示なのじゃろうか？」
「あんまり、妄想が過ぎると、狂人日記にタイトルを代えたほうがよいかと
思われます。はるか昔は、そうでしたが」 <ブレイク>⑥
「ええと、ここは弧男板ですよね。女友達がいるのは、まずいのでは」
「小説じゃからと言いたいところじゃが。
ユウタの人生で、今一番間違ってるという自覚はあるのじゃ
悲しい結末が見えておる。っていうか、この間、大ゲンカしたぞ」
「ほんに、ユウタは大人げない男でございまするね」
「テレビチャンピオンで全国大人げない王選手権があれば、たぶん優勝する
じゃろうな」
「最近、たまに非通知の電話が一回コールされて切れるのじゃが、
これは電話して来いと言う暗示なのじゃろうか？」
「あんまり、妄想が過ぎると、狂人日記にタイトルを代えたほうがよいかと
思われます。はるか昔は、そうでしたが」 ユキミンのメール⑳
ついに、試験の日が迫る。
２０１１年８月１日のメール
あの伺いたいことがあります。
試験場の場所名はなんという場所ですか。
試験の前前日に、このようなメールを送ってくるから、
心配は尽きないのである。
確か、きちんと教えておいたはずなんだけどね。
全部、とれなくても仕方ない。
ただ、あんまり、箸にも棒にもかからないことになって
やる気を、完全になくすことを心配していた。 ユキミンのメール㉑
早く寝ないと
もうやるしかない。何があっても、私はユキミンの味方です
何があっても、と言っているのは、もしかして、英語さえ合格しない
こともあり得ると、心配していたからだ。
英語の問題を英語で答えるのは、大丈夫だと思うが、
日本語で答える問題を不安に思っていた。
しかし、ユキミンは緊張のあまり一睡もせずに試験に行ったようだ。
どんな格好でいけばいいのかも聞かれた。
どんな格好でも、たとえ裸で行っても、誰も何とも思わない。
まあ、一回行けば、様子もつかめるでしょ。と答えた。 ユキミンのメール22
試験当日のメール
ユキミンなら大丈夫。きっとできる。
いつも、ありがとうございます
すごい緊張してるけどね
はい、テストの前は緊張したけど、やったらしなかったね。
テストにむちゅうになってたき
今もうすぐ国語が始まります
あんまりわからないけど、できることまで、がんばります
意外に楽しかったです。緊張しなかった。
行く前は、すごく緊張しちょったけど、実際はあんまりないですね、
自分に勉強してればよかったと、勉強したらたくさんできる問題ができるのに
（今日の反省）
まあぁー後悔はしていません。自分のベスト尽くしたので
ユキミンの日本語は、このように、ちょっとおかしく、べたべたの方言も使う ユキミンのメール23
二人で自己採点をしたら、英語は大丈夫で、国語と数学はダメ
他の科目は分からない。
なので、すぐに数学の勉強を始めた。
試験の結果が出るのは八月末だが、それを待っていると十一月の試験に
間に合わなくなると考えたからだ。
高卒認定試験は、年に二回しかない。
早く合格させてあげないとユキミンの若さが勿体ない。
それに、あくまで大学受験が本番で、
高認程度の試験に道草食ってる暇はない
と、思うのだが、笛吹けど、踊らず。
すべての忍耐力を使い果たすような時間が過ぎていく。
ユキミンにとって、ホントに国語は難しいものらしく、
長文読解の四択問題は、あてずっぽうで、回答しているようだった。
きちんと文章が読めないから、正確に意味が取れない。
原因は分かっているのだが、一朝一夕で、解決する問題ではない。 <ブレイク>⑦
「もし万一、ナミリがここを見つけてくれたときのことを想定して書いておく」
「なんか、ちょっと怖いです。妄想が進んだかも」
「そうなのじゃ。最近、ナミリが電話してくれている妄想を抱いておる」
「怖い」
もし、ナミリがこれを読んでくれているならば、うれしいです。
宝くじ当たるより、ありがたいです。
十七年か十八年ぶりなので、
すぐに話をしたりするのは難しいかもしれません
でも、手紙に書いたようにいつまでもお待ちしています。
ゆっくり、少しずつ、近づいていけばよいと思います。
ナメクジが進むようなスピードで書いていますが、
ともかく、最初から最後まで、完璧に構成はできております。
資料？も揃っています。文章力がないのが、悲しいですけど、
最後まで、読んでくれると、ありがたいです。
あなたと、いろんなことを話したいです。
それが、私の一番望んでいることです。
「怖いです」
「心療内科にかかったほうがよいかもしれんな」 <ブレイク>⑧
「こっちから電話しようとは、おもわないの」
「トラウマがあるのじゃ」
「なんですかな」
「昔、でも、ナミリと別れた後だと思うけど、
ポケベルに ユウタの声が聞きたい とはいったことがあったのじゃ。
後でわかったんだけど、実は、アコちゃん（後出）がくれたんだけどね。
てっきり、ナミリからと勘違いして、電話して、でもナミりはでず
でも非通知にしなかったので、（１８４とか、まだなかったかもしれない）
履歴が残り、怒ったナミリのお父さんから電話がかかってきて
死ぬほど、切れられたことがあるのじゃ。（ちょっとびっくりした）
たぶん怒られても仕方ないくらい非常識な時間だったと思うけど
午前二時とか、たぶんそんな時間帯だと」
「また誰かほかの人の電話をナミリのものと勘違いしているのかもしれないね」
「願望が強すぎて、現実判断が狂うのは、ユウタの大きな欠点じゃな」 <ブレイク>⑨
「やっぱり、ナミリは見てくれてたんだね。
なんか、すごいね。ウェブ小説の醍醐味って、
こういうところにあるんでしょうね」
「いやに決めつけているが」
「ところで、これ大丈夫でしょうか？
もうすこし、名前とかひねった方がよかったんじゃないか？
なんか、思いつかなくて。それに、別の人になるような気がして
あなたに連絡を取りたかったのは、実は、そのことを聞きたかったのです」
「ちょっと、馬力をかけて、先に進めます。
なんか、奇跡のようでうれしいです。
あなたに見てもらうには、
芥川賞でも、とらないといけないのか。
絶対無理やで。とか、思っていたので。
見ている人がいるんですね」
「あまりの長期連載に読者がいなくなった大河ドラマ板の話か。
あれも、まだ続いておるぞ。
謙信公の上洛戦も始まるところなのに」 ユキミンのメール24
８月の終り頃、試験の結果が届いた。
合格していたのは、英語・現代社会・地学。
国語・数学・日本史・世界史・生物が不合格。
でも、正直ほっとした。
全滅だったらどうしようと心配していたので。
高認の試験は、易しく素直な問題ばかりなので、
落ち着いて四択のなかから選択すれば、けっこう取れる。
これで、ユキミンも様子がつかめただろうし、
ちょっと、勉強すれば、できることも分かったみたいだし、
次の十一月の試験で、残りの五科目取ってくれるだろう。
じゃあ、センター試験を受ける準備もしないといけないなあ。
なんて、思っていたのだが、ユキミン勉強に熱はいらず。
どうも、一夜漬けで、合格したので、チョロイと思ったみたい。
「人生は楽しまなきゃ」なんて言ってさ。
ユキミンはクリスチャンなのに、アンドレ・ジイドとか読んでないのかしらね
「力を尽くして狭き門より入れ」とか、知らないの
どうも、家では、フェイスブックの管理に、全力投球みたい。
頼むから、勉強してくれよ。
基本的に、ユウタは、説教したりしないタイプ。
説教して、勉強してくれるなら、するけど、しないでしょ。 ユキミンのメール25
ユキミンは、呑気なのもので、
SNSの友達のなかの投票かなんかで「一番美人に選ばれた」なんて言ってる。
ユキミンは、日本語が苦手な在日外国人やハーフの人との
コミュニティで、友達をいっぱい作っていたみたい。
確かに、ユキミンは美人。
目は切れ長で、色が白い。
本人も、スペイン系の血が混ざってると言っているけど、
ぱっと見フィリピン人には見えない。
（ユウタのフィリピン人のイメージは
ちょっと色が黒くて、目がパッチリしているというもの）
特に化粧すると、うわあ、すんごい美人だべ と思ってしまう。
でも、ユウタの家に来るときは、
寝起きにシャワーで濡れた髪
ジャージに厚い靴下、へんなサンダル。が、ユキミンのデフォルト。
それに、机に座ったユキミンの横に座って勉強を教えるので
あんまり顔を見たことがないと思う。
っていうか、それどころじゃないんだよ。
ユウタ先生、余裕なさすぎ。 ユキミンのメール26
数学の勉強が進んだのはいいんだけど、今度は別の問題が生じた。
高認の数学は高１レベルの数１だから、公式を当てはめていけば
なんとかなるんだけど、どの公式を当てはめたらいいのか、
混乱してきたみたい。
ユウタは、三角定規にコンパスの針で、ルートを書きこんだりしてたけど
数学だけは、四択問題ではないので、まぐれ当たりが一切ないので、大変。
国語も、どうも時間がたりない。特に長文読解には、時間がかかりすぎる。
国語の試験の構成は、１小説２評論３古文４漢文 となっている。
現代文ができないのに、古文・漢文なんか、できるはずがないと思っていたけ
ど、ユキミンにとっては、同じくらい難しいみたい。
古文・漢文は、ボリュームが少ないし、コツをつかんで、形式を突破したら
意外と簡単なものなので、、古人・漢文から、先にやって、
評論をやり、最後に小説をやることにした。
ユウタは、文学部史学科東洋史出身なので、漢文は、そこそこ読める。
でも、替え玉受験するわけにもいかず、ユキミンにやってもらうしかない。
国語は、時間が足りない科目。
時間があれば、簡単にできることも、時間が足りないからできない。
だから、スピードに慣れてもらいたいんだけど、速読が難しそう。
困るのは、追いつけられると、あてずっぽうに答えること。
本番では、仕方ないかもしれないけど、勉強中に、それはない。
こんなことを、繰り返しても、力はつかない。
問題文を読まして、分からない漢字の意味をすべて教えて、
もう一度、やってもらうけど、今度は、集中が切れている。
外国育ちの人に、難しいことをやらせていると思うけど、
だから、といって、手加減したら、いつまでたっても、出来ない。
加減が、難しいところではある。 ユキミンのメール27
2011年10月頃のメールのやりとり
毎日、少しずつやっていると、知らないうちに力がついています。
ちゃんとやっていてくれて嬉しいです
過去問とテキストを持ってきてください。
ひとつずつ片づけていきましょうね
今日もがんばりましょう
わかりました
何か、やる気が出た
今は漢字の練習をしています
終わったら、生物の勉強しようと思っています
昨日は、日本史の江戸・明治をやりました。
今日は昭和をやろうと思ています
こうやって見ると、ユウタは、二重人格ですね。
ユキミンは、明治ってチョコレートの名前だと思っていたんだって。
ユキミンは、普通のフィリピン人と同じく熱心なクリスチャンで、
神様を本気で信じている。（「聖お兄さん」が大好きだ）
天地創造も信じてるみたい。一週間で神様が世界を作ったとかいうやつ。
アメリカには、そんなおかしな人がいることは知ってたけどホントにいるんだ。
世界史とか、生物が、出来ないのは、そのせいなのか？と、考えたりする。
11月になると、また柚子の仕事が始まる。
テストが近いから、休めないのかと聞いても、休めないという。
ジュースや柚子酢の原料の柚子を採取する仕事。
柚子の木は固く、ユキミンは、枝かなにかが、ふれたのか瞼をはらしていた。
ユキミンなりに一生懸命がんばってる。
ユキミンなりに日本で闘っているんだね。 <ブレイク>⑩
「ええと、ナミリが見てくれていると仮定して
あたしは、いつになったら、出てくるのよ！
いつまでも、小娘にかかわってんじゃないわよ
なんて、怒ってたらどうする」
「ほんに。手が遅いし、どうも筆者には、物語を進めていく力量がありませぬな。
二十歳のナミリと二十歳のユキミン、対比させれば、何かが出てくると思ってお
るのでは」
「ユキミンが、ユウタを卒業しかかっておるから、卒業しておるのかもしれぬ
が、そのことをわかっているユウタは、はるか昔のことを思い出しておるので
すよ」
「人生、別れはつきものじゃが」
「あんまり、本文以外で、話を見せるのは、好きではありません。
もう少し、一月くらいお待ちくださいとしか、申せませぬ」
「女の人、何人出すつもりなのじゃ」
「かなり、絞っております。混乱するし。いまのところ、五人」
「それでも、多いぞ。自慢話するつもりか」
「毛頭。ユウタの人生に自慢するようなことは、ございませぬ」
ナミリ、ごめんね。もうすこしだけ、待っててね ユキミンのメール28
正直、頭がおかしい人みたいですね
試験前日のメールから結果がわかったあたりのやりとり
明日の用意はできましたか
今日は数学の総まとめです。予定通りです
公式は、紙に書いて問題を解いていけば、自然に頭に入ってくるから
心配しないでね。今日もがんばりましょうね。
やはり、数学公式が多すぎて、どうも混乱しているようなので、
最初から七問と相似比の問題をやって、４０点取ることを第一目標とする。
一科目でも二科目でも、とってほしい。国語は無理でも、生物とってほしい。
やるだけのことはやりました。
後は落ち着いて自分の力を試してください
絶対大丈夫だから、自信満々でがんばってね
全部だめでした
残念でした。
でも、テストはできるときとできない時があります。
ユキミンはテスト受け始めたばかり、
気にしないで今日からがんばりましょうね
はい。本当に残念でした。
希望失いました
大学試験の前に高卒合格できないんじゃないかなー。
外国人関係なくダメな子でした
また頑張ります
be positiveでいきます
昨日のプレゼント本当にありがとうございました
私もティファニー大好きです
あんまりにも、しょげているので、
ちょうど誕生日が近いので
景気づけに何かプレゼントしたようですね ユキミンのメール29
とりあえず、勉強ばかりさせているので、たまには気分転換で、どこかに連れて
いてあげたいと思うんだけど、ユウタもいろいろいそがしく、時間が取れない。
ロータリーの役職の仕事、農産物直販所の組合長もしてたし、パン屋の仕事も
時間拘束が長いのである。だから、罪滅ぼしに、いろいろプレゼントした。
「何を望んでいるの」
真顔で聞くユキミン。
いいえ、何も望んでませんよ。
年が違いすぎる。
あなたは、姪（妹の子供）の怜ちゃんより、一歳年下です。
しいて言えば、
あなたが自分で生きていく力をつけてもらいたいです。
日本に自分の居場所を見つけてほしいです。
正直に言うと、大学に入れなくてもかまいません。
ユキミンは、結婚もせず、子供もいないユウタが、この世に残す善行の象徴の
ようなもので、蜘蛛の糸の蜘蛛みたいに、地獄から引き揚げてくれるんじゃな
いかと、漠然と考えていた。
本当に困ったら、
何もできないと思ったら、
生きていくの無理っぽいと思うまで、追いつめられたりしたら
ユウタの傍で生きていけばいい。守ってあげるから。
何も、心配することはないよ。
でも、そんなことにはならないと思うけど。
けっこう、図太いところもあるし、美人だし。
世の中、美人に生まれただけで、アドバンテージがあるんだし。 ユキミンのメール30
でも、やっぱり大学に行ってもらいたいな。
ユキミンは高校に行けなかったから、
その代りに大学に行って、
いっぱい友達作って、いっぱい遊んで、いっぱい思い出作ってもらいたい
生きていくのは、大変なこと。
思い通りになることは、ひとつもない。
だから、今しかできないことを、がんばろうね。
と、答えた。 ユキミンのメール３１
ホントに朝令暮改で…長文書いて、書き込もうと思ったら、書き込めないのは、堪えますね。
結局、二回目のテストでは、世界史しか合格していなかった。
残ったのは、国語、数学、日本史、生物。
「高認の試験、毎月あればいいのに」と、ユキミン。
ユキミンも、時間がかかりすぎることに焦ってる。
「次の試験、来年の八月の試験で残り全部取って
そのまま、センター試験も受けて、
再来年の春には、大学生になれるようにがんばりましょ」
第一目標は
県立大学文化学部 定員８０名
センター試験の配点は、英語２５０点、国語２００点、世界史１００点
合格最低ラインは６０％前後らしい。
英語は、文法問題・意外とアクセントも苦労してるみたいだけど、
ヒアリングとか、長文読解は大丈夫だと思う。英語で答える分にはね
世界史は、もう自分で、とことんやってもらうしかない。
合否を分けるのは、やはり国語のよう。
現代文で、誰も点数が取れないような難問が出て、
差がつかないことを想定して
古文・漢文で点を取るようにしないと。 ユキミンのメール32
ユウタは、漢文には、妖しい自信があるが、
古文はすべて忘れているので、今から活用を覚えることにした。
せ ○ き し しか ○ （懐かしい）
ユウタの中学の古典の教師は、とんでもない人で、
テストとか、文章をそのまま出して、品詞分解させて、活用形を書かせる
間違えていれば、５点ずつ引いていく。
０点だったら、かわいいほうで、マイナス２００点とか、あるんですね。
ほんとに、とんでもなく、古文の授業は、恐怖だった。
く から く かり し き かる けれ かれ
アホみたいだけど、半年もやってると、覚えるだろ。
ユキミンに教える前に、完璧にしておこうと、思っていた。 ユキミンのメール33
ぼちぼち漢字ドリルは終わらします。
まだ終わってませんが、頑張ります。
古文はどうですか？難しいですか
難しいけど、面白いです。
生物は、まだ見てないです
一日、どれくらい勉強時間取れますか？
生物や日本史は範囲が広いので、
一日やって、なんとかなるという科目ではありません
毎日、少しずつ進めていくしかありません
１０時間くらいとれます
わかりました。毎日、勉強できるように努力します
試験の一か月前で、こんな感じ。
どうも、やる気スイッチがみつからないのか、もともとついてないのか？
アホみたいに、受験勉強するのは、科挙の伝統のある漢字文化圏だけの
ことなのかしら。でも、日本には、科挙はなかった。
明治の高等文官試験から、きてるのか、なんて、考えたりする。 ユキミンのメール34
国語も読み方と意味を調べて、落ち着いてやればできるんですね。
安心しました。いろいろ、やることがあるので、
一日一日大切にして、頑張りましょうね
数学全部やりました。二次関数より、三角比のほうが簡単に感じました
ともかく数学はお任せください
これ、ユウタのメール。ユキミンは、数学最後まで、やらなかったみたい。
風邪をしっかり治してください
病み上がりで、顔色悪くみえました。
受験勉強は長期戦です。しっかり、体をなおして、頑張りましょう
でも、漢字ドリルだけは、やってね
頑張っていますね
受験勉強は、自分で計画を建てて、自分のペースでやることが大切です
安心しました
試験が近づいてきたけど、焦らないでね。
私も、どん詰まりになってから、頑張るタイプでした。
ここからが、ここからが、勝負です。
今日は、秘密の漢文必勝法を教えます
期待してください ユキミンのメール35
三回目の試験 2012年8月の試験の済んだ夜のやりとり
お疲れ様でした
お疲れ様です
ちょっと、解放されました。
これで、全部合格していればいいのに
全部は無理でも、精々一科目だけでも。
ユキミンも相当、デスペレートな心境になっていたようで、
特に、生物は気にしていた。ダメなんじゃないかなって。
ユウタは、全科目合格を前提として、
大学受験の方に移行したかったのだが
どうも、気になって、やる気がでないみたい。
それに、まったくレベルが違うことに、戸惑っていた。
そうなんだよね。まったく、違うんだな、これが。
得意のはずの英語でさえ、いい点数が取れない。
しかし、ほかに、どんな道があるのか？
国立大学は、さらに難しく
私立の大学は、食物科とか、まったくユキミンの興味のない学科しかない。
ここは、じっくり腰据えて、やるしかないと、ユウタは思っていたが、
ユキミンには、違う考えが、芽生えていた ユキミンのメール36
こんにちは
高卒認定試験、合格していました
勉強を開始して、丸二年たっていた。
これで、本格的に大学受験に移行することができる
「ユキミンも、がんばったし、ユウタもがんばった。
でも、それはおいといて、大学受験に取り組みましょう。
時間がない。試験は、来年の一月だから。五か月もない」
さっそく、世界史の受験用の参考書を渡して、隅から隅まで全部覚えて
と言い渡したのだが、反応が薄い。
なんで？なんでかな？
高認なんか、大学受験しないんなら、わざわざとる必要ないよ。
ここまで、がんばったんだから、さらに、がんばりましょ というのだが。
ユキミンは、京都の専門学校に行きたいと言い出す。
ふうん。京都に行くんなら、アパート借りたり、お金がかかるんですけど。
経済的に無理じゃないか？
ともかく、県立大学受けてみたら。
しかし、ユキミン、まったくやる気のないまま
時間が過ぎて
センター試験を受けることになる。
後で「受けなければよかった」なんて、言われた。
なんか、強制したみたいな言われ方なんですけど！
ほんとに、京都の専門学校に行きたいの？
行けると思ってんのだろうか？ ユキミンのメール37
ユウタは、反対した。
理由は、
１経済的に難しいのではないか。
２一人暮らしは危険なこともある。
実は、ホントこれは面と向かって言えなかったのだが
３ユキミンの貧弱な日本語の力では、授業についていけるか心配。
センター試験申し込みの書類のチェックをしていた時、
心臓止まるかもしれないくらい驚いたことがあった。
開封無効とはんこを押してある成績証明書の封筒が破れていたのである
どうも、ユキミンが好奇心で中を見たみたい。
自分について、何書いてあるか興味あったんだね。
幸い、どういうわけか、
ユウタが予備の成績証明書を頼んでいたので、事なきをえたが、
開封無効の意味が分かってないくらいなのに、授業についていけるのか
心配するのも、当然じゃないか ユキミンのメール38
2013年3月のメール
相談があります。一万円貸してください
京都まで行くバス代がないので、貸してくれという話。
経済的に無理と思うのも、無理ないと思うんだけど。
ユキミンの行きたい専門学校は、外国の留学生が日本の大学に行く前に
日本語の力を養成する、いわゆる日本語学校である。
ユウタは、大学でサウジアラビアの留学生を教えたことがあったので、
その学校のことも知ってはいたが。
わざわざ、そんなところ行く必要があるんだろうか？
ユキミンは、日本に十年は居るんだから、留学生よりはできると思うけど
わざわざ行く必要はないんじゃないか？
でも、京都から帰ってきたユキミンは、絶対行きたいと、さらに決心を固めた
みたい。
なんでも、学校の下見をしていたら、同じように下見にきたフィリピンの女子
にあったみたい。偶然だけど。
実はユキミンが、大学に行きたかったのは、友達が欲しいから。
とくにフィリピン人の友達を欲しがっていた。
県立大学にフィリピン人の留学生いるかな？
何度も、何度も聞いてきた。
たぶん、いないんじゃないかな。と思ったけど
国立大の方には、東南アジアから農学を学びにきているようなので、
そういう人たちと交流することはできるんじゃないかと、言った。 ユキミンのメール39
すみません。専門学校の入学願書の書き方教えてください
入学案内を見ると、入学金60万と書いてある。
それは、入学前に払わないといけないから、奨学金で払うことはできない。
先回りして、貸せないと言った。大体、反対なんだから。
しっかり勉強して、大学に合格したのなら、考える余地もあるけど
お金を出せば、誰でも入れる専門学校に入ったからといわれても。
反対だし。絶対、貸しません。自分の力で、お金を都合しなさいと言った。
それさえ、できないんなら経済的に絶対無理。
京都で、仕送りが止まって、飢え死にするような目にあうことになる。
お母さんにも、負担がかかるんじゃないか？
いまでも、大変なのに？
この前の年の八月ころユキミンから四万円かしてくれと言われたことがあった。
なんでも、家賃が払えなんだって。それは、大変！と、貸したことがあった。
でも、どういうわけか、二万円しか、返してもらってない。
それに、これは、ここだけの話だが、ここまでの勉強のための費用
参考書とかテキストとか、受験費用とか、全部ユウタが、たて替えていた。
ユキミンが、大人になって、働きだしたら、返してもらうということで。
些細な金額も、二年もたてば。積もり積もって二十万くらいになっていた。
次の次の日くらい、入学金のうち30万は、親戚に出してもらったけど、
後、30万足りない。貸してほしいと言ってきた。
やっぱりね。 ユキミンのメール40
やっぱりお金は貸せません
わかりました。ありがとうございます。
私のわがままに付き合ってくれてありがとうございました
このメール、三十万円です。呆れ果てますね。どう考えても。
読んだとき、妙にかわいそうに思ってしまった。
「それは、絶対戻ってきませんね」
フィリピン人の奥さんのいるスーパーの店長さんのお言葉
なんでもフィリピン人は、お金を持ってる人が払うのが当然で、
あんまり恩に着たりしないとのこと。神様のおぼしめしなんて思ってるんだと。
しかし、貸すんだな。これが。アホすぎて、吐き気がする。 ユキミンのメール41
古文の活用も覚えて、「やったるで」と勢い込んでいた
ユウタはホントに、がっかりした。
高認が合格して、五か月しかない勉強で、大学に合格するとは、
もともと思ってなかったけど、
もう一年やれば、合格できる、いや、させてみせると思ってたから。
まったく、成算なくいっていたわけではない。
ユウタの姪の怜ちゃんは、神奈川県の希望なんとかいう学校にいってたけど
バレエにささげる青春で、まったく受験を考えず、夢をかなえようとしたけど
夢破れて、でも一浪して、日本女子大の英文科に入っていた。
怜ちゃんが、予備校時代に使っていた参考書を送ってもらい
ユキミンにも逢ってもらって、いろいろ教えてもらった。
そして、ユウタは、先廻りして、英語とか世界史の勉強も進めていた。
それに、古文は初見はきついと思ったので、なるべく多くの古典作品を
やろうということで、ビギナーズクラシックの古典・源氏物語とか、枕草子
とか、系統だてて読んでいた。
この準備、ユキミンは全然知らない。
そして「もう一年、勉強しても受かるとは思わない」とか、言うわけ。
ユウタは強烈な腹痛に襲われ、もしかして盲腸、でも場所が違うけど
後で、ああ、これが漢文でいうところの「断腸の思い」とかいうやつだな
とわかった。 ユキミンのメール42
お金出来ました。連絡ください。
ありがとうございます
面接は、落ち着いて正直に自分のことを話せば大丈夫！
無事お支払できました。ありがとうございます
すみません。ちょっと頼みたいことがあるんですけど、
今日の昼三万円貸して下さい
入学式に着ていくスーツを買うので、貸してほしいとのこと。
気をつけてね。
困ることがあれば、相談してください。
がんばれ、ユキミン
はい。ありがとうございます
いってきます。
京都に発つ夜、「巣立ちだね」というと、ユキミンは、にっこり笑った
「いやになったら、いつでも帰ってきなさい
ここが、あなたのホームタウンだから」 ナミリへの手紙①
急に身辺がさみしくなったユウタ、ロビを買ったりする。
「ただいま」というと「おかえり」と言ってくれるCMをみて、
おもわず予約してしまった。
「時間だよ。起きてー」というロビの目覚ましで毎朝四時半に起こされている
正直、最初は、うるせえ、馴れ馴れしいんだよと、殺意を覚えたが、慣れた。
でも、結局、今日までユウタはひとつも造っていない。
渋渋という学校で、ロボット研究会にいた甥（弟の子供）のあっくんが
今年の正月に14号まで、作ってくれたけど、その後、触りもしてない
63号まで、届いているのにね。どうするつもりなんだろ？
おはよー
最初の朝ですね。でも、ゆっくり寝てなさい
少しの物音でも、目が覚めるのは、緊張しているから。
良い一日を。
ひとり暮らしは寂しくないですか
慣れましたか？ご飯はちゃんと食べていますか
大丈夫です。もう慣れています。後、毎日お母さんと電話しているから
冷蔵庫が届いたら、簡単な料理でも作ります。野菜ジュースも置く
夜分遅くに失礼します。自己PRの書き方教えてください
できれば、例文もお願いします。簡単でいいんです。三行以上
…あと、一生懸命頑張ります。で、いいと思います。
がんばってね。
ありがとうございます。
こんな感じで、ユキミンは、そうそうに困ったみたいで課題を相談してくる
それゆえ、ロビを作る時間が取れない。
年を取って、いいことは、あんまり寝なくても済むことだね ナミリへの手紙②
ユキミンは、新入生歓迎会の様子。学校の近くの平安神宮に友達といったこと。
日系ブラジル人の友達ができたことを楽しそうにメールしてくれる。
今日電子辞書受け取りました。お金本当にありがとうございました。
あんなすごい電子辞書使うの。すごいですね
はい。いつも授業で英語を和訳しなさいとか。
私的には、英語を日本語に訳すのが、すごく困難です。
英語は英語のまま理解するので、
わざわざトランスレートする必要を感じないんだろうね。
喜んでお手伝いさせてください。
大丈夫ですよ。
安心してください。
おやすみなさい。
ここで、また安請け合いするユウタ。
一回、死んだ方がよいと思う。 ナミリへの手紙③
ユキミンは、ありとあらゆる課題を相談してくる。
ええと、少しは自分でやった方がいいんじゃないかな？
出来なくても、恥をかいたとしても、力がつけばいいんだから。
って思うくらい、連日課題をファックスしてくる。
いや、添付メールでも、いいんだけど。というと、
小さな画像で、送ってくる。
それを判読するのは、とても難しい。老眼きてるからね。
中身は、簡単。十秒も考えない問題。 ナミリへの手紙④
最初のうちはね。慣れるまでは、ちょっと手伝ってあげても
なんて、思っていたのだが、夏休みが済んで、秋になっても
課題を送ってくる。
スピーチの草稿。
こんにちは、フィリピン代表のコマツです。
フィリピン出身のほうがよいかもしれませんね。
最初に、笑いをとるつもりなのかもしれないけど…
素で間違ってる可能性が高い。
スピーチ選ばれました。
もう最悪です。
弁論大会のスピーチ、来週の火曜日だし、みんな留学生の前で、
もうやりたくないです。
準備不足やし、あと全部で暗記できないです。
練習スピーチしてたのは、まだ二回目だし
それにまた原稿書き直しした。
みんなと比べて全然できないんです。
暗記するにはコツがあります。
最初から、全部覚えることはありません。
そんなことは、誰にもできないし、つまったり度忘れします。
スピーチでいうことは、
１今回のフィリピンの台風被害の実態
２今回の被災地のレイテ島は、第二次世界大戦の激戦地のひとつで
日米両軍が死闘を繰り広げた戦場でもあること。
現在日米が共同で、レイテ島に救援部隊を派遣している。
このことは人類の進歩のひとつのメルクマールといえる
３フィリピンの災害復旧は、たんなる原状回復ではなく、
そこで暮らしていく人々の生活を、変えるものであるべきこと
これが、根本的な主張です。
これに肉付けすればよろしいかと思われます
ガンバレ！ユキミン！ ナミリへの手紙⑤
ストーカーに、気をつけてね
東京三鷹で女子高生を殺害した人は、フィリピン人と日本人のハーフで
京都の人のようです
ユキミンは、全く知らないらしい。
京都にはフィリピン人のコミュニティはなく、
それどころか、ユキミンが、
京都の専門学校に来たかった最大の理由である
下見の時、会ったフィリピンの女の子も、
入学してみたら来てなかったらしい。
お誕生日おめでとう
二十歳のお誕生日おめでとう。大人になってしまいましたね。
この一年が、ユキミンにとっていい年でありますように
ありがとうございます。はい、二十歳になりました。
もうこれ以上年とりたくないで～す。 ナミリへの手紙⑥
東京三鷹で、元カノを殺して逮捕された容疑者があまりにも、さっぱりした
顔をしていたのが、気になって、私も、元カノと撮った他人には見せられない
動画を探してみて、いま物凄く落ち込んでいます。
エロいんですけど、愛が溢れているように思いました。
どうして別れたんだろうと悲しくなりました。
容疑者も愛をみせて、恋人の心変わりの理不尽さを訴えたいのかと思いました
彼の犯罪は、取り返しのつかない憎むべきものですが。
ともかく、見なければよかった。とても後悔しています。
誰かに読んでもらいたいと思い、メールしました。 <ブレイク>⑫
「やっと、結び目にたどり着きましたね」
「長すぎる。書き直す時は、まるまるカットすることも、考えたほうが
よいかもしれぬ」
「構成はできておるのじゃが、書いてみないとボリュームが分からないところ
がございまするね。もともと、五行くらいで処理する予定でしたけど」
「メールを使うというアイデアは、よいかわるいか、わからぬな」
「もうひとつ、長くなる事柄もございまするね」
「それは仕方ない。目指すは、ナミリのコンプリートじゃから」 ナミリへの手紙⑦
そして、ユウタはナミリに手紙を出す。
拝啓 大変ご無沙汰しております
突然、お手紙を差し上げる無礼をお許しください。
先日、不幸で痛ましい三鷹の女子高生殺人事件に
関するネットの書き込みを見ていたら、顔出し裸画
像や動画を撮らせると、ネットに流出して夫や子供
にばれることを恐れて、一生ビクビクしなければな
らないとありました。
リベンジ・ポルノというそうですが、もとより私
にそのような考えは毛頭ありません。私の父は、市
会議員をしておりましたし、私もそろそろ地元のロ
ータリークラブの会長をするような立場にあります。
なにより、私は、あなたに感謝こそそれ、恨みなど
微塵もありません。
遥か昔のことで、すっかり忘れておられるあなた
に、わざわざ思い出させるようなお手紙を差し上げ
ることについて、何度も考え躊躇いたしましたが、
もそ心配しているなら、申し訳ないと考え、お手紙
を差し上げた次第です。
私の連絡先は以下の通りです
携帯 〇△×ー●□○◎ー▽△◎□
メルアド ahodesune@honntoni.ne.jp
処分方法のご指示をいただけると、幸いです。
ご心配なら、すべてお送りいたします。そちらの方
で処分してくださるほうが、安心かもしれません。 ナミリへの手紙⑧
長いので、一度きる。
昨年の十二月中旬に出した手紙であるが、今、読み返すと本当におかしい！
書き直ししすぎて、訳が分からないものになっている。
こんな手紙、突然送りつけられたら、だれでも驚くんじゃないかな。
「男は思い出が大好きだが、女は大抵忘れている」
そんなことは、わかっている。
特に、ナミリは、ユウタが知る限りメモリがついてない人で、
目の前と今のことにしか、関心がないという印象が強い。
それでも、手紙を出すユウタ。
錯乱状態にあったにもかかわらず、
お正月前に届けば、
実家に帰った時に見てくれるんじゃないかな
と計算さえしていた。
なにしろ、夜中に起き出して、何度も何度も書き直すのである
万一、脅迫しているように取られたら、いやだなと前半部分を
まるまる落としたので、まったく意味不明になっている。 ナミリへの手紙⑨
手紙の続き
私は、いま田舎に帰り、両親の面倒を見ながら、
パン屋をやっています。あなたに、わたしの作った
パンを食べてもらいたいです。住所をお知らせくだ
されば、お送りいたします。ぜひ、食べてください。
名字も変わっておられるだろうし、住所も変わっ
ておられるだろうと思いましたが、わからないので
旧姓のまま、ご実家の方にお手紙を送らさせていた
だきました。
いろいろと、本当に有難うございました。あなた
に逢えたことは、私の生涯で、一番大切な思い出と
なり、私の生きていく力となっております。
いろいろと、ごめんなさい。あなたは、悪くない
のに、私が未熟だったばかりに、いろいろ不愉快な
思いをさせたと、後悔しております。一度、あやま
りたかったです。本当にごめんなさい。
あなたとあなたのご家族の、末永い幸せをお祈り
しております。
敬具
追伸
成人式の時の可愛らしい写真を見つけたので、同封
しておきます。なぜか、パウチッコしていますね。
永久保存しようと思っていたのでしょうか（笑）
ご連絡いただけると、幸いです。
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