6月30日、東京都内で行われた日本ラグビー協会の評議員会。出席者の1人から、こんな問いかけがあったという。

 「ラグビーでもボールを後ろに蹴り出して試合を終わらせることがある。あれはフェアプレーとは言えないのではないか」

 さすがに賛同を得ることはなかったというが、サッカーW杯で日本代表がポーランド戦の最終盤に行った消極的な試合運びは、この国の隅々にまで議論を呼んでいる。
ちなみに15年W杯のサモア戦、日本代表はFB五郎丸歩がボールを自陣のインゴール裏へと蹴り出し、26―5で勝利を収めている。

 私もサッカー取材については門外漢だが、自分なりに考察した。数多の識者やトップアスリート、ファンによる賛否両論を読んだり、
直接聞いたりしたが、あの10分間を見た第一印象、すなわち「嫌悪感」は払しょくできそうにない。

 より上位を目指す、究極的には優勝を目指すという日本代表の目的意識は正しい。
ただしそれは、たとえ勝ち点制のリーグ戦であっても、1つの試合に勝ちに行くということを大前提としなければならない。
リード、あるいは同点の状況でボール回しするなら否定しない。今回はリードを許している状況で、同組のコロンビア―セネガル戦の結果頼みの「負け逃げ」だった。
この点において、勝ち逃げ行為とは全く異質であり、「勝利を目指す」という全てのスポーツの普遍性、根幹を否定する行為だった。