清掃騎兵二トムズ
回るローラー 、こびり付くゴミ
こわばった指が、汚れたテープを剥がす。
汚れたテープがローラーから離れ、虚しい音を立てた時、
皮肉にも、ミシン目を外れビリッと破いた切れ目を作る。
コロコロ、この危険な遊戯が、これこそがこの汚部屋に相応しいのか。
次回『掃除』 コロコロが回れば、能率が上がる。
二トムズ
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ボトムズweb
ttp//www.votoms.net/ 今年こそは汚染部屋から決別するんだよショルダー野郎! 掃除したいけど雪かきあるんだよ!
ダウンバーストかよ!
毎年だよ!
雪かきのない世界に(ネット >>106
しかし、雪かきしたとしても、その先がパラダイスであるはずがない。 アストラギウス暦7214年3月
冷たい風の吹く夜、キリコはバカラシティに着いた。
「曹長、やっぱり来てしまった。でも俺は……掃除をするためじゃない。」
街の一角にある工場。ムーザ・メリメは、コロコロのテープ部分を本体に装着する
作業を行っていた。その傍らでバイマン・ハガードがエレクトロラックスの掃除機
「エルゴスピード」(エルドスピーネではない)を使い、適当に掃除を行っていた。
バイマン「見てくれはまあまあだが、さて、吸引力はどうかな。」
ムーザ「転がしてみろ、バイマン。北欧デザインとか言ってねえでよ。」
バイマン「とんと掃除にはご無沙汰でな。お前みてぇに小汚い換気扇掃除何ぞで
苦労したくはねぇからな。」
ムーザ「何だと……」
グレゴルー「ムーザ、いちいち奴の軽口の相手に、なるなよ。お前らを探すのにえらく苦労したんだ。これから一仕事しようってのに、内輪揉めは御免だぜ。」
「俺がやろう」3人が振り向くと、そこにはキリコの姿があった。
グレゴルー「キリコ!やっぱり来てくれたなぁ!」 グレゴルー・ガロッシュの歓迎に対し、キリコは無言のまま工場のテーブルに向かった。
そして、テーブルに置いてあるコロコロを手に取りテーブルの上の掃除を始めた。
しかし、キリコは僅か十数秒で掃除の手を止めた。
ムーザ「まるで使い物にならねぇ。もっとましなコロコロは集まらねぇのか!」
グレゴルー「どうだ。」
キリコ「スパイクドットが冴えないな。それに粘着力も低下している。」
グレゴルー「こいつも交換するしかねぇか。フンッ!」
行動に取り掛かる前に自分の顔を叩くグレゴルーのいつもの癖だった。 大量のテープから適当なコロコロを選別するグレゴルーの手を
ムーザが止める。
「待った。カーペット用の方だ……曹長、この中から4つ作るのは
無理だぜ。」
グレゴルー「無理は承知さ。嫌なら降りてもいいんだぜ、
ムーザ。」
ムーザ「……やるさ、やってやる。」 バイマン「お前も地獄の底を見たクチのようだな。」
キリコ「ああ」
バイマン「グレゴルーの部屋は害虫だらけになっちまった。見ろ、顔も酷いが
部屋まで酷くなっちまった。もっと哀れなのはムーザだ。家に帰ったら家族に
逃げられていた。ムーザの部屋の汚部屋っぷりに愛想を尽かしちまったらしい。」
キリコ「そう言うお前は。」
グレゴルー「キリコ、スペアのコロコロを取ってくれ。」
キリコがスペアのコロコロを取りに行ったことにより、二人の会話はここで途絶えた。
グレゴルー「PB品か。これじゃ粘着力が足りないわけだ。」
ムーザ「バイマン。コロコロをくれ。」
バイマン「だからどのコロコロだ。カーペット用か!」
ムーザ「何だと!」
バイマン「冗談じゃねぇ!」
コロコロのテープをシャフト部分に装着しながらキリコはあの作戦を思い出していた。
突然の転属命令。味方の営業所への謎の出張清掃。「あの女」との出会い。
百年清掃は終わった。だが、キリコの戦いはそこから始まったのだ。
作業はようやく終わった。完成したのは、コロコロのテープ部分の両端に
推進器が装着され、更にその推進器にタブレット用のiコロコロが装着された
掃除用品としては過剰ともいえる性能を備えたものだった。
コロコロターボカスタム。メルキア軍特殊戦略清掃兵団100-100。レッドショルダーが
使用していたものだった。そして、彼らの過去の愛機であった。
グレゴルー「終わったな……まだ気に入らねえのか?」
ムーザ「あてにならねぇ部品がざっと50ほどある。」
キリコ、バイマン「(部品なんか50もねぇよ)」
グレゴルー「きりがねぇさ。万一奴らに出くわしたとしてもだ、これほどチューンされた
コロコロは持っていまい。」
バイマン「ムーザ、心配は程々にしろ。レッドショルダーは清掃終了と同時に
解散させられたんだ。」
ムーザ「そう発表されただけだ。」
バイマン「フンッ、レッドショルダーの亡霊がいるとするならば、俺達のことかも
しれねぇな。」
完成したばかりのコロコロターボカスタムを見て、バイマンは皮肉交じりに語った。
「こいつの取っ手は赤く塗らねぇのか」
グレゴルー「貴様ッ!塗りたいのか!」
バイマン「ヘッ、冗談だよ。」
。 グレゴルーが顔を叩き気合を入れた。「そろそろ、行くか‼」
キリコたち4人はコロコロターボカスタムを軽1ボックスに積み込み、工場を後にした。目指すはヨラン・ペールゼンが仕切るデライダ営業所だ。
グレゴルー「バイマン、マップは?」
バイマン「上々よ。情報省に手を回しておいたから、衛星写真がバッチリある。」
グレゴルー「よ〜し、首を洗って待ってろよ。ヨラン・ペールゼン‼」
バイマン「早くお目にかかりたいってね、ヘッ‼」
忘れたはずの過去に向かって俺は走り出した。
そう、ヨラン・ペールゼン。メルキア清掃兵団に史上最強の清掃部隊を作り上げた男。
奴は間違いなく俺の運命を変えた男だ。あの秘密組織と結び付いているはずなのだ。
そう信じるからこそ、俺は昔の仲間の誘いに乗った。
フィアナ、お前に会うには、これしかないらしい。あのおぞましい過去に帰るしか。
そう心の中でつぶやきながら、キリコはデライダへと向かった。
夜が明けて、朝日が差していた。その日差しは新たなる戦いの運命に自分自身を
誘っているようにキリコには見えたのだった。 一方、レッドショルダーデライダ営業所では、新人かつPS
(パーフェクトソウジャー)のイプシロンが配属された。
イプシロンが従業員控室に入ると、そこには、長い髪の女性がいた。
フィアナ「私の名はフィ……プロトワン。いらっしゃい。あなたに
掃除の仕方を教えてあげる。」
フィアナはイプシロンを連れて掃除用品が置かれている倉庫へと
向かった。その時、イプシロンの前をルンバが横切った。
イプシロン「わあぁぁっっっ!あああああっっっっ!」
フィアナ「イプシロン!? 何でもないの。あれはルンバよ。ほら、
もう行ってしまった。」
そうフィアナに言われイプシロンは安堵の表情を浮かべた。
倉庫からハンディモップを取り出し、手取り足取りイプシロンに
掃除の仕方を教えるフィアナ。
フィアナ「ほら、ホコリがよく取れるでしょ。これはハンディモップというの。(モップに付いたホコリをつまんで手のひらに乗せ)
それから、これがホコリよ。」
フィアナの手のひらに乗ったホコリにイプシロンは顔を近づけた。
その結果、イプシロンの鼻先にホコリが付いた。
フィアナ「クスッ、フフフ、アハハハハハハ」
フィアナは思わず笑わずにはいられなくなった。イプシロンも
そんなフィアナを見て微笑むのであった。
新人の指導は上手くいっているようだ。遠くから二人を見ていた
ヨラン・ペールゼンは確信した。 ムーザ「ここか……?デライダ営業所は」
ムーザがやや信じられない表情で地図を見ながら言った。
バイマン「そうさ、ここが正真正銘デライダ営業所さ。」
グレゴルー「周りは畑しかない、正真正銘のド田舎だ。人口も
減って、年寄りの農家が数世帯しか住んでない、限界集落と
化した場所で、いつ閉鎖してもおかしくない営業所だ。
そんな場所に何を好き好んで営業所を維持するんだ。」
バイマン「そこさ、腑に落ちねぇのは。しかもペールゼンは清掃
終了と同時に軍を辞めているんだ。居座ってりゃ元帥にも国防相
にもなれた身だぜ。」
キリコ「そんなものこそ、奴は興味あるまい。考えたことが
あるか。ペールゼンが俺たちを始末しようとしたのかを…………。
不適格だったからだ。俺達は、レッドショルダーとしては欠陥が
あったらしい。
バイマン「確かにな。どいつもこいつも、癖の悪い奴ばっかりだ」
キリコ「不良品を始末したいことに、奴は真剣だった。清掃が
終わったくらいで、手塩にかけた部隊を手放すはずはない。」
グレゴルー「なるほどな。」
ムーザ「奴が軍を辞めたのは、解散させられたレッドショルダーを
自分の所に集めるためか。」
キリコ「そこに奴がいるなら、レッドショルダーも必ずいる。」
軽トラの車内は、重々しい物に変わっていった。 重々しい雰囲気の中、ムーザは地図を読み、デライダ営業所を探していた。
キリコ「見せてくれ。」
ムーザはキリコにもう1枚ある地図を渡し、再びデライダ営業所を探し始めた。
ムーザ「どれくらいだろう。」
グレゴルー「何が?」
ムーザ「残ったレッドショルダーの数さ。5分の4は転職したという報告だった
が…。」
グレゴルー「34〜5は残っているだろう」
ムーザ「一人で8人相手にする…。」
バイマン「どうだ、怖じ気づいたか。」
ムーザ「俺はな、何が何でもペールゼンをギャフンと言わせると誓ったんだ!
そのためには、わずかでも無理は支度ねぇ!」
グレゴルー「バイマン、奴の家族のことは話したはずだ。」
バイマン「フンッ!奴のこうも思い詰めた顔を見るとムカムカするんだ。
その辺で野垂れ死にしても泣いてくる身内もいねえのに、余計な心配
しやがって。」
ムーザ「クッ!」
グレゴルー「もうやめろって!! 俺達はな、動き出してるんだ‼」
バイマンに殴りかかろうとするムーザを見て、グレゴルーは止めに入った。
ムーザは殴りかかるのをやめ、苛立ちを隠せぬままシートに座った。
バイマン「ヘンッ!」 車内で起こる諍いに目もくれず、キリコはデライダ営業所の場所を探していた。
そして、キリコは一つ、気になるものを発見した。
キリコ「デライダ営業所は、限界集落と言ったな。赤外バンドで見ると、
どうも違う所があるようだ。」
グレゴルー「ああ?」
キリコはグレゴルーに地図を見せた。
キリコ「その黄色い部分だ。その部分だけが熱の吸収率が高い。」
グレゴルー「どういうことだ?」
キリコ「つまり、まとまった数の人間が存在するということだ。」
バイマン「へッ、隠居の道楽に蘭の栽培でもやってるってか。」
キリコ「(もっと恐ろしいものを栽培しているかもしれない。)」 フィアナはイプシロンの教育を続けていた。
フィアナはテカテカと黒光りした虫を見つけると、指を指した。
「イプシロン。これが、ゴキブリよ。」
「ゴキ…ブリ…。」イプシロンがゴキブリに近づくと、ゴキブリはカサカサと
音を立てて逃げ出した。
「わっ!」一瞬驚いたのも束の間、イプシロンは近くにあったスリッパを手に取り、
ゴキブリに向かっていった。
「うおおっ、くああっ!」イプシロンは渾身の力でゴキブリを叩きつけた。
一撃でゴキブリは内臓を露出するほどのダメージを受け、その生命力ゆえに
意味なく脚を動かすだけの存在と成り果てた。
「えいっ!ふん!ふん!ふん!」執拗にゴキブリを攻撃するイプシロンはさっきまでの
温和な印象はどこにもなかった。本能的、かつ攻撃的な表情を剥き出しにした
イプシロンを見ることに、フィアナは耐えることができなかった。
フィアナ「やめて……やめてイプシロン!何故、何故そんなことを…。」
イプシロン「(えっ!?何でって…。)」イプシロンは攻撃の手を止めた。
フィアナ「ゴキブリは…、ゴキブリはあなたが嫌いだから
カサカサいったんじゃないの。ただ…身を守る為にあんなことをしたのよ。」
イプシロン「(ゴキブリって見つけたら普通退治するもんじゃ……。)」
フィアナ「ああ……どう言えばいいの?……ご覧なさい、
ゴキブリは死んでしまった……。」
イプシロン「死ん…だ。」
フィアナ「もうカサカサいわない……もう二度と……。」
人類が絶滅しても生き延びるとまで言われる生命力も尽き果て、もはや骸と化した
ゴキブリを見て涙を浮かべるフィアナを見てイプシロンは思った。
「不思議な人だな。」 アロン「やったね、イプシロンの戦闘衝動がこれで確認出来た。」
グラン「うん。やっと確認出来た。」
営業所内の防災センターのモニターは、二人の行動の一部始終が映し出されていた。
ボロー「しかし、ゴキブリの死に涙するようなのに、新人の教育を任せるのは
いかがなものか」
グラン「お言葉ですがボロー殿、プロトワンがどうであろうと、イプシロンの
完全なる掃除人としての機能は損なわれません。」
キリィ「いいではないか、ボロー。イプシロンの教育は、プログラムインプットに
おいても行われる。それも、もうすぐだ。」
ボロー「それにしても、彼女には情緒反応が多すぎる。掃除というのは、時に
捨てるのが惜しいものでも、捨てる決断をしなければならないものなのだ。
キリィ閣下、こうまでしてイプシロンをプロトワンがマンツーマンで指導することは
よくありません。」
キリィ「私にはそういうPS(パーフェクトソウジャー)についての技術的なことはよく
わからん」
アロン「ボロー閣下、イプシロンには清掃衝動が、完璧に仕込まれています。つまり、
何があろうと、イプシロンは環境が良くないと見れば掃除せずにはいられないの
です。」
誕生前に見た者の為に、プロトワンはPSとして不完全な存在と化してしまった。
PSとして不必要な情緒反応。イプシロンにまでそれが植えつけられたら、またしても
失敗作が出来てしまう。清掃業界において他社に差をつけるためには、PS開発は
是が非でも成功させなければならない。そうすればこそ、
「夫婦で家事分担!? しかもそれがきつい!? バカじゃねーの!? 家事なんて家事代行サービスに任せりゃいいじゃん。何ムダなことしてんだよ。」などと簡単にのたまう
某ツイ○ター芸人とそのフォロワー達を、我が社の顧客とすることが出来るのだ。
そう考えるからこそ、ボローはプロトワンの新人教育に不安を覚えるのだ。
ボロー「今からプロトワンの新人教育の任務を解く。私の口から直接言う。」 フィアナのイプシロンに対する新人教育は続いていた。
フィアナ「イプシロン、フローリングの板の目に入り込んだゴミは竹串を使って
かき出すのよ。」
フィアナがイプシロンに説明しつつ自ら手本を見せ、イプシロンも見よう見まねで
板の目のゴミをかき出した。その最中、数人の足音が聞こえてきた。
ボロー、アロン、グランの3人だった。
ボロー「プロトワン、イプシロンから離れろ。本日をもって新人教育の任務を
解くこととする。」
イプシロンがボローを睨みつける。そして、睨みつけるや否やボロー達に向かって
走り出した。
イプシロン「うあああああっ!」イプシロンがアロンを殴りつける。
アロン「ぶべらっ⁈」ドシャァァァァァッッッッッ‼
イプシロンに殴られ、吹っ飛ばされるアロンを目の当たりにしたボローは、
焦燥しきった顔でフィアナの元に駆け寄った。
ボロー「何故だっ!何故止めんプロトワン!」
動揺するボローを見たイプシロンが、今度はボローに対してその牙を向けた。
イプシロン「うあああああっ!」イプシロンはフィアナの元に駆け寄り、
ボローからフィアナを守るべく、ボローの前に立ちはだかった。
ボロー「プロトワン!止めさせるんだ!」
イプシロン「うあああああっ!」ボローを突き倒し、その胸ぐらを掴みイプシロンは
ボローに対しマウントの態勢を取った。そして、イプシロンがその拳をボローに振り上げた瞬間、フィアナは叫んだ。「止めなさい‼」
その瞬間、イプシロンの拳がボローの顔面の寸前で止まった。
イプシロンはフィアナの叫びにより、その冷静さを取り戻した。だが、次の瞬間、
イプシロンの顔に、後ろから何かが押し当てられた。
床にこぼした牛乳を拭いた後のから雑巾だった。アロンがイプシロンの顔に押し当てた
それは、その異臭によりイプシロンの意識を失わせるには充分だった。
アロンの目論見通り、イプシロンは目を虚ろにしながらボローに重なるように
倒れ込んだ。そして、ボローはグランの介抱を受けつつ立ち上がりフィアナに伝えた。
「今後、イプシロンに対する新人教育は、プログラムインプットのみにおいて行う
こととする。プロトワン、二度とイプシロンに近寄ってはならんぞ!」
「待ちたまえ」ボロー達が振り向くと、そこには1人のサングラスをかけ、杖をついた
白髪の男が立っていた。
ヨラン・ペールゼン。地上最強のお掃除部隊「レッドショルダー」を作り上げた男だ。
百年清掃終結後に定年を迎え、嘱託社員となるも、その身分でありながら
デライダ営業所所長として君臨する男である。
ボロー「これは、ペールゼン所長。」
ペールゼン「彼女は必要だ。」
ボロー「しかし…。」
ペールゼン「安易に道を選ぶべきではない。」
ボロー「所長。技術的な問題に関しては、私にも意見がございます。
その事については、後ほど是非…」
フィアナ「所長。質問がございます。」
ペールゼンの顔を見据え、フィアナはペールゼンに自らの意思を伝えるのであった。 「こんまり」こと近藤麻里恵がTIME誌の「世界に影響を与える100人」に選ばれたそうだな。
だが、異能清掃体キリコに比べれば、彼女はまだまだPS(パーフェクトソウジャー)止まりでしかないのだよ。 数々の表彰状。数々の従業員達との記念写真。
これらは全てレッドショルダーが達成したトップの営業成績、社内お掃除技術コンテスト優勝を記念したものだ。
ペールゼンの使用する所長室にはこれらの品々が所狭しと飾られ、過去の栄光と実績を伝えていた。
このような社内の大物と一対一で会話するのは
フィアナ自身が望んだこととはいえ緊張が走る。所長室の椅子に座ったペールゼンを見ると、フィアナは更にそう感じざるを得なかった。
ペールゼン「さて、聞きたいこととは何かね。」
フィアナ「イプシロンのことです。これでいいのでしょうか。」 フィアナ「純粋な掃除人として生まれたPSに人間らしい感情を育てようとする、
あなたの考えは素晴らしいと思いました。でも……。」
ペールゼン「考えが変わったのかね?」
フィアナ「今のイプシロンを見て感じました。掃除人として生まれたのなら、
このままでいた方が幸せなのかと……。私のように、ゴキブリに情を持ってしまう
ようになってしまうよりは……。」
ペールゼン「では、悩んでるのかね?誕生前に、キリコとその後ろでカサカサいってる
ゴキブリを見たことを。」
フィアナ「いっそ、会わなければ、こんなことにならなかったでしょう。」
ペールゼン「自分に嘘をついてはいけない。君は愛しているのだ。」
図星だった。ペールゼンに核心を突かれたフィアナは、ただ下を向くしかなかった。 ペールゼン「私は知りたい。感情というままならない機能を持ちながら、掃除人が掃除人以上の存在になれるのかをな。」
表彰状、記念写真、トロフィー、盾……。
レッドショルダーの、そして自分自身の栄光の
数々を見つめつつ、現役時代に思いをはせながらペールゼンは続けた。
「私は会社人生の半分をレッドショルダーというお掃除集団を作り上げることに費やした。PSとまでは行かないが、充実した訓練や研修によって、それに匹敵する最強の掃除人を創造したかったんだ。しかし、完成した最も優秀な掃除人は、私の考えとは違っていた。」
フィアナ「キリコ……ですね。」
ペールゼン「私の創造したシステムにとって、彼は明らかに適性を欠いていた。全てに疑いを持ち、反抗的で支配されることを拒んだ。幼稚と言える、あまりに人間的な弱さを持ちながら、にもかかわらず、彼の力は抜きん出ていた。
私は憎んだ。何人かの適性を欠いた人間と共に私は定年直前に、彼を殺そうと試みた。」
驚きを隠せないフィアナ。だが、ペールゼンは何事もなかったように続ける。
「だが、周到な準備にもかかわらず、彼は生き延びた!耐え難いことだが。」
ペールゼンは立ち上がり、やや前よりも感情を出しつつ語り続ける。
「通常の人間からは、理想の掃除人は生まれない。これは私の結論だ。PSであるイプシロンが
君によって例え後天的にせよ、衝動ではなく、判断によって掃除するようになれば、キリコ以上の掃除人が誕生することになるのだ。」
フィアナ「でも何故です!……何のためにそんなものがいるんです!」
ペールゼン「まだわからんのかね?……。」
ペールゼンはフィアナの方を向き、不敵な笑みを浮かべ言い放った。
「二人にお掃除対決をさせたいのだよ!」
フィアナ「ああっ!……あああ……」
驚き、絶望、不安、様々な感情が交錯し、フィアナは両の手で頭を抱えながら横に振った。
ペールゼン「無論、まだその時期ではないがな。キリコは機械ではなく、人間の手で殺さねばならない。」
「(ああ………キリコ……。)」心の中でフィアナはキリコの行く末を案じた。そして彼女の出来ることは今はこれだけしかなかったのだった。フィアナは何も出来ない自分を嘆き、天を仰いだ。 地方のコンビニは車社会ゆえに、店舗の面積に比して駐車場が広い。
キリコ達4人は乗っていた軽1BOXの脇に車座になって腹ごしらえをしていた。
だが、ムーザの食が一向に進まない。消費税UPのあおりを受けて前よりも味、量共にレベルダウンした唐揚げ弁当に視線を置いたまま、押し黙る一方だ。
バイマン「………何ふてくされるんだか。」
グレゴルー「どうしたムーザ。ガッツリハンバーグ弁当が売られなくなったのがそんなに不満なのか?」
ムーザ「俺は………降りる……。」
グレゴルー「何だと!」
ムーザ「奴と一緒じゃ、戦えねぇ……。」
グレゴルー「ムーザ!」
ムーザ「何も、同情してもらおうなんて思っちゃいねぇ。ただ、他人の痛みがわからない野郎と戦うのはごめんだ。」
グレゴルー「落ち着けムーザ。1人欠けてもこの作戦は勝ち目はないんだぞ。」
ムーザ「そんなことはねぇ。奴が抜けるなら上手くいくさ。」
バイマン「俺は抜けるもんか。自分の臆病風を他人のせいにするとは呆れた野郎だな。」
ムーザ「じゃあ……その場で殺してやる!」
言い終わるや否や2人は立ち上がり、瞬間、喧嘩が始まった。先制したのはムーザだった。
ムーザの放った拳がバイマンの顔を捉え、バイマンはその場に倒れ込んだ。
怒りと興奮で呼吸が荒いムーザに対し、バイマンは口から出る血を拭い応じた。
「面白ぇ……。泣きっ面を見せられるよりは、ずっといいぜ!」
再び立ち上がるバイマン。だが間もなくムーザに殴られる。
次々とムーザの拳がバイマンの全身にヒットする。だが何故かバイマンは一向に反撃する気配がなく、一方的にムーザの攻撃を受けるサンドバッグ状態と化していた。
ムーザのアッパーでバイマンが再び倒れ込んだ時、グレゴルーがムーザを止めに入った。
「もうよせ!」
ムーザ「離せ!立ち上がれバイマン!どういうことだ!何で殴らねぇ!」
「ムーザ、奴が殴らない訳を教えてやる」
キリコは横たわるバイマンに近づき、バイマンの右手にはめられた手袋を外した。
その瞬間、グレゴルーとムーザは驚きを隠さなかった。
グレゴルー「バイマン、その手は……」
バイマンの右手には、お掃除手袋(ニトムズ製)がはめられていたのだ。
ミトン状の手袋の上下に付いたひだでホコリを取る、部屋掃除の便利アイテムのお掃除手袋。
百年清掃の苛酷さは、彼を四六時中お掃除手袋をはめさせる程の掃除好きにさせたのだろうか。もっとも、手袋の上に手袋をはめるという行為には謎が残るが。
グレゴルー「馬鹿野郎!何故隠してやがったんだ!」
バイマン「見せびらかすようなもんじゃねぇからな。」
キリコ「痩せ我慢はよせ。度が過ぎるのは、見ていて辛い。」
ムーザ「そうか……しかし、バイマン。これで上手くコロコロを扱えるのか?」
バイマン「大丈夫だよ……ほうら……ペールゼンの野郎を絞め殺すには不足はねえさ。」
お掃除手袋をはめた右手を動かしながらバイマンは語った。
バイマン「じゃ、寝るぜ」
だが、バイマンの右手につき、3人には疑問が残った。
「(そんなもんはめてどうやって絞め殺すんだ?)」 最近このスレを読み始めたので、ラストレッドショルダーを観なおした。 4人がデライダ営業所近辺まで来た頃には、時計の針は翌朝の9時30分を回っていた。
作戦では、従業員が注文先に出向いてガラガラになったときを狙って営業所に侵入し、ペールゼンを倒すということになっている。
決行の時刻は10時。あと30分でその時がやって来る。
早朝から悪かった空模様はここにきてより悪化し、どす黒い雲が空を覆ったかと思うと、激しい雷雨を発生させた。
「ムーザ、散々絡んで……済まなかったな。」
ムーザに一瞥もせず、遠くのデライダ営業所を見据えながらバイマンが呟いた。
ムーザ「よせ。」
バイマン「白状すると、俺は……俺は、」
グレゴルー「そこでやめとけ。話したいことは全部胸の内にしまったおくんだ。無事に帰った時のためにな。」
キリコ「いたぞ!」
キリコが双眼鏡越しに発見したのは、見たこともない代物だった。全身黒塗りで、右肩が赤く塗られたその物体が動いている。そして、物体の胸の部分に付いている「タブレット」には
『ブラッドサッカー』という文字が表示されていた。
グレゴルー「何だあれは。レッドショルダーか!?しかし、あれは人間なのか!?」
キリコ「8人、いや9人。だが、人間がルンバの上に乗って移動するのか?」
グレゴルー「潰すか!」
ムーザ「よし!いくぞ!」
10時00分。軽1BOXを走らせ、デライダ営業所の前にと停車すると同時に、4人はコロコロターボカスタムを持って車の中から飛び出し、営業所の入口に向かって走り出した。
「アレ、ナンデスカ。モウシゴトカラモドッテキタンデスカ。マサカ、サボッテルンジャナイダロウナ」
バキッ!グレゴルーがその物体に蹴りを入れると根元から折れた。
「ウワッ、ナニヲスル。ショチョウニイイツケテヤル」
ムーザ「うるせぇ!」
ムーザがその物体の頭を蹴ると、機能が止まり、言葉を発しなくなった。
Pepperだった。かって、家庭用人型ロボットとして、某携帯電話キャリアが発表したものだったが、例によってうやむやになったあげく発売されることなく終わった。
それが、ここで全身黒塗りとなり、肩を赤く塗られ、下にルンバを装着してお掃除ロボットとして余生を送っていたとは。もっとも、Pepperとルンバはガムテープで固定されているだけなのだが。
バイマン「最初からこの組み合わせならよかったんだけどな。」
グレゴルー「バイマン。そんなガラクタに構うな。いくぞ!」
4人はデライダ営業所の入口のドアを開け、突入した。そして、上半身を失ったルンバは所在なさげに動き回るだけの存在となった。 営業所内の異変を瞬時に感じたのは二人がPSだったからなのか。イプシロンが従業員控室から出ようとした瞬間、フィアナはイプシロンを制止した。
「イプシロン、行ってはだめ!ここでじっとしているのよ。」
イプシロン「これは……。あれは……。」
フィアナ「いつか知ることになる……。でも、その前に、あなたには知っておかなけらばならないことがあるの……。愛すること、ゴキブリやクマネズミを愛することを……!」
イプシロン「………わからない……。」
しばらく逡巡した後、イプシロンはフィアナを振り切り控室を後にした。
フィアナ「イプシロン!………ここに戻って!」
走り去るイプシロンを見てフィアナは叫んだ。
だが、清掃衝動に駆られたイプシロンにその叫びは
届かなかった。 暗闇の中を4人が進む。
営業所の経費削減のため、所長室へ向かう廊下は照明が消されている。
ここからは各自ゴーグルを装着して前を進む。
防犯用に設置された赤外線センサーがの赤い光線が行く手を阻む。
ムーザ「畜生!こんなの裸の間抜けにしか効きやしねえ!」
グレゴルー「落ち着け。奴らはどこから出てくるかわかりゃしねえ。」
「フンッ!」いつものように、顔を叩いて気合をいつ入れるグレゴルー。
程なく暗闇を抜けると、さっきのガラクタが2,3機
廊下を掃除していた。
体当たり。投げ飛ばし。思い思いの方法で突破した。 「所長、何事です。あれはあなたの部下ではないのですか?」内線電話の受話器からボローがまくしたてる。
ペールゼン「いや、わたしの部下だった可能性はある。」防災センターにつながっている机のパソコンを見つつペールゼンが答える。
ボロー「キリコ、キリコです。奴に違いない!」 キリィ「しかし、奴はウドで死んだはずでは。」
ボロー「お言葉ですが、奴はPSにも劣らない掃除人だ。」
キリィ「とすれば、全力で阻止していただきたい。」「部下達は既に行動を起こしておる。」防災センターからの内線電話にペールゼンが答える。
ボロー「万が一ということもあります。二人を連れ戻せ!」
アロン「それが………発見出来ません。」
ボロー「探せ!見つけ次第二人を所長室へ連れて来るのだ!」
アロン・グラン「はっ!」
アロン、グラン、ボローは二人を探しに向かった。
他の防災センター要員も、モニターを食い入るように見つめ、一気に防災センターは慌ただしくなった。 営業所の部屋という部屋の机を掃除する4人。
コロコロターボカスタムが両脇のスラスターを噴射させ、あり得ないスピードで机上の埃を吸着させ、新品同様の美しさを蘇らせた。そのスピードに唖然としている営業所の従業員をよそに4人は部屋を出た。
キリコ「まずい、挟まれてる。」
廊下の前後を黒塗りのポンコツ掃除ロボット、いや、
ロボット付きタブレット「ブラッドサッカー(Pepper
)」が行く手を阻む。タブレットに赤い文字で「ブラッドサッカー」と表記されたポンコツがざっと前後合わせて30体ほどか。こんなものに関わっている暇などはない。
「ここは俺が引き受ける。お前らは散れ!」
バイマンが3人に呼びかける。
ムーザ「頼んだぞ!バイマン!」
単騎でポンコツ達に戦いを挑むバイマンを背に3人はペールゼンのいる所長室へと向かった。2回、3回とブラッドサッカーが破壊される音をキリコは聞いた。
その音は兵士達を高揚させる行進曲とも、或いは厳粛にさせる葬送曲にも聞こえた。
では、どちらが正解なのか?そんな先のことはわからない。 片っ端から営業所内の部屋を片付け、1階の部屋でまだ掃除していないのは会議室だけとなった。グレゴルー、ムーザ、キリコは会議室へと向かう。そこを片付けれた後で2階の所長室に向かい、ペールゼンの首級を戴くという腹積もりだ。
会議室の扉をグレゴルーが開け、3人がなだれ込む。
その瞬間3人が見たものは、あり得ないスピードで窓拭きを行う金髪の男だった。
キリコ「(あの動きは……!)」
「野郎っ!」
先に動いたのはムーザだった。広い会議室の中心にある大型の机を掃除し始めた。
グレゴルー「やめろムーザ、そいつはただ者じゃねえ!」
ムーザ「そっちこそ早く逃げろ!」
コロコロターボカスタムのスラスターを全開にすれば大型の机でも1分で掃除し終わる。だが、机掃除を終えたムーザが見た物は、一瞬で窓掃除を終えて床掃除に取りかかるイプシロンの姿だった。
ムーザ「バカな!!」
異常なほどのスピードで床掃除を行うイプシロンに対すべく、ムーザは椅子の掃除に取りかかった。
ムーザ「曹長……早く行け!」
全力を使って掃除をするも、PSのスピードにムーザがついていく術はなかった。ムーザの体力は限界を迎えた。
ムーザ「うわあああぁぁぁっっっ!!!」ガクッ
ムーザは疲労困憊の末に気絶した。 みんなー!キリコのパーフェクトおそうじ教室始まるよー
アタイみたいな異能掃除体目指して頑張っていってねー 赤いのが最高の剥がし性能だった
青いのは最低の剥がし性能だった
同じメーカーの同じ切り込みでもここまで違うとは…
思わず電話してしまったぜ
やっぱ世の中金らしい 【超悪質!盗聴盗撮・つきまとい嫌がらせ犯罪者の実名と住所を公開】
●清水(東京都葛飾区青と6−23−19)
※低学歴脱糞老女:清水婆婆 ☆☆低学歴脱糞老女・清水婆婆は高学歴家系を一方的に憎悪している☆☆
清水婆婆はコンプレックスの塊でとにかく底意地が悪い/醜悪な形相で嫌がらせを楽しんでいるまさに悪魔のような老婆である
見栄っ張りで人一倍強い学歴コンプレックスを持つ清水母は自らの勉強嫌い低学歴ぶりを棚に上げ息子には高学歴になってほしいという
身の程知らずの身勝手な願いを持ち親譲りの頭の出来の悪い息子の成績の悪さを詰り尻を叩いて勉強するようにしつこく強要してきたが
案の定うまく行かず結局自らと同じく低学歴に終わったことを世間に顔向けできないほどの恥だと思い、近所の人間と世間話をするとき
には学歴や出身学校といった話題になることを意識的に避けるように心がけている
低学歴の清水の息子はエロ動画を見ているところをアナル激烈加齢腐敗臭のする低学歴の母親に見つかってしまった過去がある 【超悪質!盗聴盗撮・つきまとい嫌がらせ犯罪者の実名と住所を公開】
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