>>114
嘗て蓮實重彦が「或るTVドラマの演出家が小津調をやろうとして真似てセットを作ったが
どうも上手く撮れない。小津のセットの空間そのものが歪んでいるからでした」とか言ってた。
確かこれ、鴨下信一の失敗談じゃなかったかな?

小津はセットは独特、撮影も演出も独特。全てが小津の脳内で作られた異空間。
成瀬は基本がリアリズムだが、小津の空間の作り方はファンタジー。

戦後にいわゆる「小津調」を確立して以降の小津映画はいっけん淡々としているが、実は
劇中の人間関係・ドラマそのものは動いている。その「動き」「シナリオの構造」に気づ
かないと面白くない。
だから逆に年輩の映画など大して知らない人が観て無意識に自分の長年の人生経験に照
らし合わせて「分かる」「面白い」「泣ける」といった現象が起こる。