労働者の生活に必要な賃金は地域によってほとんど変わらないことも分かっ
た。日本では地域ごとに最低賃金が異なり、最も低い鹿児島県では時給761円
だ。最低賃金の差は物価の違いなどと説明されることもあるが、生活に必要な
食品や日用品の価格は全国どこでもほとんど変わらない。都市部は家賃相場な
ど住居にかかる費用が高いが、一方で公共交通機関が発達していて車の所有が
必要なかったり、交通費が安価に済ませられたりする。こうした違いを考慮す
ると、生活に必要な費用は地域によってほとんど変わらないという。

 中澤准教授が想定する生活水準が高すぎるわけでもない。時給1500円で想定
しているのは、病気をせず、独身で子供のいない20代男性だ。地方在住で車を
持つ場合は、軽自動車を7年落ちの中古で購入し、6年以上使う設定とした。家
庭をもったり親の介護を補助したりする金銭的な余裕はない。

 実際に生活に必要な水準よりも最低賃金が低いということは、国の経済水準
に比べて過剰に安い労働力が存在するということだ。こうした状況では「本質
的に生産性を高める投資が抑えられてしまう」(中澤准教授)という。