低すぎる最低賃金が人手不足の真の原因
広田 望
日経ビジネス記者
2019年3月28日

パーソルグループのパーソル総合研究所と中央大学は2018年10月、「20年の日本
の人手不足数は384万人」と推計した。一方、リクルート研究所によれば、会社に
籍を置きながら事業活動に活用されていない人材である「雇用保蔵者」が約400万
人いるという。日本の人手不足が深刻化しているのは、企業が本当の意味で生産性
を高めていないからではないか――。日経ビジネス3月25日号「凄い人材確保」で
は、そんな人手不足の真実を研究した。

生活費を考慮しない最低賃金

 「低い最低賃金が人手不足を助長している」。静岡県立大学の中澤秀一准教
授はそう主張する。生産性を高めるための企業努力よりも、安い人件費の労働
者を活用する方が利益を得やすいため、多くの人材を浪費する非効率な仕事が
減らないのだという。

 法律によれば、最低賃金は「労働者の生活費」「類似の労働者の賃金」「通
常の事業者の賃金支払能力」3つの要素を考慮して決めなければならないとあ
る。だが、「実際には1つ目の労働者の生活費はほとんど考慮されていないよう
だ」と中澤准教授は話す。その証拠に、労働組合から依頼を受けて中澤准教授
が調査したところ、各地の労働者が生活に必要な費用は最低賃金と大きく乖離
していたのだ。