国民投票は、5月25日金曜日に実施されました。
事前の世論調査では、約20%が賛成・反対の立場を決めかねていると回答していたことから、
立場を決めきれない人々が現状維持に流れ、反対票を投じるのではないか、
その結果、中絶が容認されるとしても僅差ではないかと予想されていました。
が、ふたを開けてみると投票率は64%、
憲法条項の削除支持(中絶容認)が66.4%、
反対が33.6%で賛成派が2対1で圧勝しました。

中絶という概念自体に個人的には否定的であっても、
女性が中絶を選択する権利が認められず、
中絶が犯罪化されている現状は改められるべし、
との考えが共有されていたものと考えられます。

ヴァラッカー首相やコーヴニー副首相兼外相自身も、
最初は反中絶であったのが、女性の話や専門家の様々な意見を聞くうちに、
中絶を容認する方向に意見が変わっていったことを明らかにしています。

 教会を中心とする反中絶派のキャンペーンは、
カトリック教会の教義を盾に全ての命はかけがえのないもので中絶は殺人である、
という論法を繰り返しつつ、街頭のポスターには生々しい胎児の写真を掲げ、
テレビの論争でも中絶容認派を激しく非難する等見るに堪えない場面もありましたが、
国外(主に英国(北アイルランド以外では合法))に渡航し
中絶手術を受けるアイルランド人女性が年間3000件を超え、
また国内で適切な医療処置が行われず死亡する例も散見されるなどの現実を通して、
人々の気持ちは、女性の健康や権利の尊重、
そして中絶合法化を求める動きへとつながっていったのでした。