私たちは、起きていることが不快な場合は、嫌悪が生じるため、それをそのまま受け入れ
ようとしません。あって欲しい状態へ変えようとします。そして解決方法を探そうとする
のです。カバットジンのMBSRや派生のMBCTでは、この心の状態のことを「することモード
(doing mode)」と言います。これは無意識のうちに自動的に発動するもので、現実的な
課題や問題解決に取り組む際には有効に働きます。ところが、この「することモード」は
思考や感情に対しても同様に作動するため、問題が生じることになります。思考や感情は
自分の思い通りにはないからです。否定したり、取り除こうとしたり、回避しようとして
煩悶することになります。一向に解決することがないまま、不快を再生産していくので、
言わば無限ループに陥って、苦しみ続けることになるのです。

「することモード」の反対は「あることモード(being mode)」です。これは現実に起き
ていることをありのまままに捉えて、受け入れることです。たとえ不快による嫌悪が生じ
ても、起きていることを変えようとはしません。思考や感情を否定したり、取り除こうと
したり、回避しようとしません。逆に積極的に近寄ることになるので、現実をよりはっき
りと見たり、より広い視野で捉えることができるようになります。その結果、不快な思考
の信憑性を疑う余裕が生まれたり、その先の行動の選択肢も増えることになります。より
賢明な選択が可能になるということです。ただし、この「あることモード」は自動的には
発動しないので、意識的に自分で発動させる必要があります。マインドフルネスの実践と
は、この「あることモードへシフトする」ことなのです。