碧巌録(へきがんろく)  第71則  百丈五峰に問う(ひゃくじょう ごほうにとう)

本則

百丈懐海 (えかい)また弟子の五峰に問う、「咽喉唇吻(いんこう しんぷん)を併却(へいきゃく、クチをふさがれた状態でモノを言う)して、そもさんか言わん?」。
峰云く、「和尚また須(すばか)らく併却すべし」。
丈云く、「人なきところに斫額(しゃくがく、額に手をかざして遠くを見る) して汝を望まん」。



斫額(しゃくがく):額に手をかざして遠くを見ること。

本則

百丈は五峰にイ山と同じ質問をした、「咽も口もふさいでどのように言うか?」。
五峰は云った、「和尚の方こそお黙り下さい」。
百丈は云った、「額に手をかざして人のいない処にお前さんを見よう」。


⇒ のどとくちを塞いで、無言で、伝えよ。では、和尚ものどとくちを塞いで、無言で言え。
  人無きところ、とは、手をかざして見ようとしても四方八方、何処にも人は在る。
  人無きところなど無いのだから、そこに居るおまえを見よう、とは、つまりは、空である。
  百丈と五峰は、師と弟子ではあるが、師と弟子ではない、この二人は、二人ではあるが、二人ではない。一の如しである。
  泥水に注がれたミルクである。見分ける事は、不可である。
  だが、禅のアヒルは、泥水に注がれたミルクだけを飲む、と言う、
  色即是空は、空即是色へと還(かえ)る。
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