イエスの富者に対する憎悪と人間差別はすざましい。「富者は、天国に行けない」。
まさにマルクスの思想である。キリスト教は、ユダヤ教に対する憎悪から始まった。
富者がいるからこそ、貧者も潤う。貧者だけなら争いと共倒れしかない。イエスも
マルクスも、それを理解できなかった。そして、両者とも、結局は、巨大な人間格差を
作り上げた。憎悪と殺戮とを中心とする営み。こんな営みが人間界の他のどこに
あるか。その原因は、愛とは、生存共同体の最も身近な者に対してから始まると
いう、創造主が与えた愛を変容したからである。

ニーチェがイエスを個人批判しなかったのは、ニーチェの人間愛による。しかし、彼の
痛烈なキリスト教批判は、そのままイエス批判に繋がると解するのが道理である。