碧巌録(へきがんろく)  第91則   塩官(えんかん)犀牛(さいぎゅう)   

本則

塩官、一日、侍者をよぶ。「我がために犀牛の扇子をもち来たれ」。
侍者云く、「扇子破れぬ」。
官云く、「扇子すでに破れなば、我に犀牛児を還えし来たれ」。
侍者対なし。
投子云く、「もち出さんことを辞せず、恐らくは頭角全からざらんことを」。
雪竇拈じて云く、「我は全からざる底の頭角を要す」。
石霜云く、「もし和尚にかえさば、即ちなからん」。
雪竇拈じて云く、「犀牛児なおあり」。
資福一円相を画し、中において一の牛の字を書す。
雪竇拈じて云く、「適来なんとしてかもち出さざる」。
保福云く、「和尚年尊、別に人を請せば好し」。
雪竇拈じて云く、「惜しむべし、労して功なきことを」。
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注:
塩官:塩官斉安(?〜842)。馬祖道一の法嗣。 法系:六祖慧能→南嶽懐譲→馬祖道一 →塩官斉安   
投子(とうす):投子大同禅師(819〜914)。翠微無学禅師の法嗣。
石霜(せきそう):石霜慶諸(807〜888)。  
資福(しふく):資福如宝。イ仰宗の仰山慧寂の孫弟子。
保福(ほふく):保福従展。雪峰義存の法嗣。