三島由紀夫研究会ニュースレター (令和2年3月25日)
                      通算第114号
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♪三浦小太郎「ドストエフスキーと三島由紀夫」
   (令和2年2月27日開催公開講座講演録)
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はじめに 
本日はコロナウイルスの騒動が続く中、私如きものの講演会にこんなにたくさんの方に
ご参集いただき誠にありがとうございます。本日は、三島由紀夫研究会という伝統ある場に
相応しいかどうかはわかりませんが、主としてドストエフスキー、特に彼の政治思想という
あまり論じられない面について、私なりのお話をさせていただければと思います。
ドストエフスキーが多くの偉大な文学作品を生み出したことはここで紹介する必要もないと
思いますが、同時に彼は、『作家の日記』と題する個人雑誌を発行し、そこに膨大なエッセイ、
というより政治評論をその晩年に書き続けてきました。個人雑誌と言っても、当時のロシア帝国に
おいては数千部の購読者層を持ち、かなりの愛読者がいたことも確実です。『作家の日記』全体の分量は、
かの『カラマーゾフの兄弟』の二倍を超えるものであり、ドストエフスキーの政治的立場が赤裸々に表れて
いるのですが、これまで、ごく一部の評者を除けば、きちんと論じられることはまことに少ないものでした。