昭和六十年に旭川地方裁判所が無罪を言い渡した、旭川日通営業所長殺し事件では、警察はたいした根拠もないのに、中年の会社員に嫌疑をかけ、二十数日間、 連日長時間にわたって被疑者を取調べました。その時間ですが、一日三時間以上八時間未満が四日、一日八時間以上が五日、十時間以上が五日、十二時間以上が二日、十三時間以上が四日、十四時間以上十六時間未満が二日、十六時間以上が一日です。

しかも、取調室から怒声などが洩れないようにするため、窓やドアの内側に合板を張りつけ、取調官は頭を小突く手で胸をたたくなどの暴行を加えた疑いが強いと見られました。そのため、被疑者は胃腸障害をおこして、からあげ(胃の中味を出さない嘔吐)、下痢、腹痛を訴えていました。

このような自白調書のほかに被疑者の犯行を証明するものは皆無でした。それで検察官はこの人を起訴しました。もちろん裁判所は自白調書はすべて任意性がないと判断し、ほかに有罪証拠がないので、昭和六十年三月二十日無罪判決を言い渡しました。