花嫁の父「お前たちのために自白した」 日野町事件、死後再審の扉は 2024/3/21 9:00朝日新聞
「やってへん」 検証・日野町事件

 カセットテープに録音された男性の声は、少しかすれていた。
 「わしも娘がかわいい。それまでなんぼ拷問受けても、そればっかりはしてないさかいに……。娘のこと言われたときには、もうそれに応じなしゃあないと」

 録音場所は警察署の接見室。アクリル板を挟み、男性と2人の弁護士が向き合っていた。
「うそでも言うた限りは…」 隠し録音に残るやりとり
 男性は弁護士に対し、やってもいない強盗殺人を娘のために認めたと説明した。弁護士は到底、納得できない。

 弁護士「しかしやぞ、強盗殺人やぞ。『自分が真犯人です』と言うたら、娘の立場はどうなるんや」
 男性「うそでも言うた限りは、そのように私はしていかなしゃあないと」

 弁護士が隠し録音したテープには、25分間のやりとりが残る。とつとつと語る男性は阪原弘(ひろむ)元被告。その後の裁判で、無期懲役が確定した。

 裁判のやり直し(再審)を求めたが、この接見から23年後の2011年、無期懲役囚のまま亡くなった。75歳だった。
続く