続き
六月五日に売春防止法違反容疑で現行犯逮捕されたB子が同じ房内に入ってきた。この晩はB子が被害に遭った。翌朝、B子はSにワイセツ行為をされたとA子に告げた。「あなたも?」二人は話し合って弁護士を呼ぶことにした。警察も慌てて動き出した。 Sの取り調べを始めA子とB子に事情聴取した。二人は警察から詫びの言葉一つ聞かされないまま、朝から夕方まで連日五日間にわたって事情聴取を受けた。 A子は拘置所に身柄を移されていたが、怒りと屈辱のあまりストッキングで首つり自殺を図った。Sは懲戒免職処分となり、六月二十八日に特別公務員陵虐罪で起訴された。

二人の訴えは概ね認められていたが、A子に対する強姦だけがぼやかされていた。告訴状では「同女の陰部に勃起した自己の陰茎を挿入し、姦淫行為をなした」とある。これも、起訴状には「陰部に自己の陰茎を押し当てるなどし」と書かれている。検察庁はA子の訴えより、Sの言い分を信用したことになる。Sの裁判は静岡地裁沼津支部で行われ、十月七日には判決が言い渡された。懲役二年六月の実刑。Sは控訴せず、判決は確定した。