2000年代に入ると西側からカネが中国に流入。直接投資とその結果としての貿易黒字が年間で最大30兆円以上に上り、中国経済の高度成長のエンジンとなった。アジアは、後進性の代名詞から輝く未来の星へと一変した。

しかし中国は、まだ西側にカネや技術を依存していることを忘れて世界で我を通し始める。他者から得た強さを自力と勘違いした者が滅びる話は昔話に数多い。多くの国は中国への警戒心を高め、
トランプ政権による報復関税は中国経済の柱だった対米輸出を激減させた。中国はもはや輸出の製造拠点として安全ではなくなり、中国企業ですらベトナムなどへ流出し始めている。
中国の成長率は高齢化社会のツケを支払えないほどの水準に落ち、政府や地方自治体、企業の債務は増える一方だ。「一帯一路」の掛け声で発足した
アジアインフラ投資銀行(AIIB)も、この頃は音沙汰を聞かない。中央アジアを横切り欧州に通ずる鉄道を数本造ると豪語していたが、新路線は1つもできていない。中国に代わるべきインド経済も勢いを失っている。

皮肉なことに、インドの誇る民主主義や私的所有権への保護の強さが、法制度の乱れや土地・不動産の買収を困難にする問題を起こし、かつての中国のような外資の大量流入を妨げているのだ。
一方、ASEAN諸国の多くは「経済発展が民主主義をもたらす」という期待を裏切っている。王政の権威主義や地主−小作制に由来する根深い格差と利権闘争という構造を打ち破れていないことが、その原因だ