西田は岡村が自ら会頭を辞任することを期待したが、岡村にその気はなかった。岡村からすれば、
自分から西室が取り上げた次期社長の任命権で選ばれたのが西田である。「そんな男のために、誰が身を引くか」という気持ちだっただろう。
西田は西室に岡村説得を期待したが、西田が自分を差し置いて経団連会長になることに、「嫉妬の人」が喜ぶはずもない。結局、西田は外され、御手洗の次の経団連会長には住友化学会長の米倉弘昌が就任した。
次は、佐々木が社長在任中の13年に経済財政諮問会議の議員となり、経団連の副会長にも選ばれ、次期経団連会長候補と目されるようになる。
面白くないのは西田である。自分が選んだ後任が、自分を差し置いて経団連会長になろうというのだから。WHの経営がうまくいかなくなると、西田は手のひらを返して、佐々木を「単なる原子力バカ」とくさすようになった。
こうなると佐々木も面白くない。もともと部下を怒鳴りつける声で会議室の窓ガラスが震えたというパワハラ体質である。
鬱憤晴らしに西田の子飼いの役員を怒鳴りつけ、その役員は会長室の西田に言いつけに行く。会長と社長の関係はたちまち険悪になった。