ネットビジネスは従来型産業とは大きく異なり、成長に必要な限界コストが圧倒的に安く、業績が急拡大しやすい構造になっている。しかも、サービスを利用する人が増えれば増えるほど、
その価値が高まるというネットワーク外部性という効果もあり、一定のシェアを超えると加速度的に利用者が増加する。

サービスを利用するのが人間である以上、経済圏における人口以上に事業を拡大させることはできない。
あらゆるサービスをネット化することで、リアルなビジネスから顧客を奪ってくることは可能だが、それにも限界がある。インターネットの黎明れいめい期、
試着が重視されるファッションの分野は、ネット・シフトが進みにくいと指摘されていたが、ゾゾの躍進を見れば、そのフェーズもすでに過ぎ去ったことが分かる。
つまり、2000年前後に本格化したネットビジネスはいよいよ成長の限界を迎えており、近い将来、完全にパイを奪い合う市場に移行する可能性が高い。もしそうだとすると、ゆっくりと事業規模を拡大している暇はなく、
シナジーが見込める企業は片っ端から買収して市場シェアを高め、来たるべき寡占化時代に備える必要がある。
ヤフーとLINEは経営統合の理由として「GAFAに対する危機感」を挙げているが、これも同じ文脈で理解してよいだろう。GAFA各社はネットビジネスにおける成長の限界を超えるため、
1兆円単位の金額を次世代の成長エンジンである人工知能などに費やしている。
だがヤフーとLINEの2社を合わせた研究開発費はわずか200億円しかなく、GAFAとはケタがあまりにも違い過ぎる