トランプ大統領は中国の急所を突いてきたわけだが、中国には「隠し玉」がある。レアアース(希土類)だ。レアアースは世界的に産出量が少ないレアメタル(希少金属)の一種で、
ネオジムやジスプロシウムは電気自動車などを動かすモーターの効率化に使われる。スマホやパソコン、省エネ家電などの生産に欠かせない材料で「ハイテク産業のビタミン」とも呼ばれている。

中国はレアアースの産出量で世界8割を握る。改革開放を推し進めたケ小平がかつて「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」と言ったほど、
中国の経済発展の原動力となってきた資源だ。米中貿易戦争に詳しい金融ジャーナリストの小林佳樹氏が言う。

「米国が中国からの輸入品3000億ドル(約33兆円)に最大25%の制裁関税を課した〈第4弾〉で、レアアースは対象から除外されました。中国からの供給がなくなれば、困ることを、米国自ら“自白”しているようなものです。
今回のファーウェイへの部品禁輸に対抗して、中国がレアアースの輸出停止カードを切ってくる可能性は十分あります」

尖閣諸島を巡り日中関係が緊迫した2010年、中国は日本へのレアアース輸出を制限する報復措置を取った。米国第一主義のトランプに中国の象徴的企業をボロボロにされ、
メンツをつぶされた習近平国家主席がおとなしくしているだろうか。日本だって、対岸の火事ではいられない。

「これまでファーウェイに部品を供給してきた日本企業が米国の方針に歩調を合わせて、対中制裁に追従すれば、中国政府は日本に対して、レアアースの輸出制限、ないしは停止に踏み切るでしょう。
そうなれば、レアアースを使っている日本のハイテク産業全体の生産に支障をきたし、その影響は計り知れません」(前出の小林佳樹氏)