日本の港湾がアジアの三流にまで落ち込んだのは製造業の海外移転による経済の凋落(ちょ
うらく)にも一因があるとするのは言い逃れに過ぎない。ちょうど日航が経営破綻(はたん)
したのは地方空港のネットワーク維持のために経営負担を強いられたと言い募るのと同じだ。
あってもその要素は何十分の一ではないか。もしそうなら競合する純粋に民間資本で苦闘して
きた全日空はもっと先に経営破綻していなければ勘定が合わない。放漫経営に1兆円規模の
公的資金を投入するのでは事実上2社体制の航空業界で公平な市場原理は働かない。ナショナ
ル・フラッグ・キャリアーの救済という情緒的な理屈に日本のつぎはぎ資本主義が垣間見えて
くる。

 子ども手当と高速道無料、高校授業料無料、農家所得補償で日本は再生するか。国民に
マネーを移転して経済成長させようとするのは一輪車に「分配」という重い政策を載せるよう
なものだ。いずれ自ら転倒するにちがいない。

 ミッテラン社会党時代のフランスがこれに似ていた。80年代の世界的な民営化の潮流に
背を向け、銀行の再国営化とばらまきを公約して選挙に勝った。だが子供の数は少し増えたが
経済力は縮小し大国の地位は揺らいだ。

 もちろん経済規模だけで国の豊かさを見るという時代ではない。経済だけでなく、文化の
繁栄、社会の安定、国民の安心、人権の尊重を総合的に測る時代だ。それを数字で示そうと
したのが「国家ブランド」という考え方である。ブランド力調査「アンホルト・GMI」
(09年)によると、幸いまだ日本は欧米先進国に交じって5位までのランクを死守している
。隣国のアジアでは経済的な爆走を続ける中国は22位、韓国は31位だ。