4)王侯なり政府は身の丈に合わない野心のため、富裕層からファイナンスを受け、無茶な事業をたくさんする。贅沢な宮殿を作ったり、あんまりメリットがない冒険的な戦争をしたりする。当然、たくさんお金が必要になる。そこで税金を増やす必要がでてくるが、
何しろ富裕層からお金を借りているし、往々にして血縁だったり腹心だったりするので、そこからは取れない。かくして、資産所得で生きる富者は免税のまま、労働所得で生きる貧者に対しては重税を課すことになる。当然のことながら、貧富の差が拡大する。

(5)社会は分裂したまま、抜本的な解決策がとれなくなる。さまざまな改善アイデアが献策されるも、富裕層の利害をおもねるあまり、それらは概ね無視される。社会はバラバラのまま、方向性を欠いた状態でただ浮遊する。
(6)王侯貴族や政府はついにデフォルトし、そこに貸していた富裕層も共倒れする。対外戦争にも敗北し、賠償金の支払いを押し付けられる。こうして、かつての強国は立ち上がるエネルギーを失って、
衰亡した過去の国として、自信も活力も注目も失ってしまう。
現在の世界でも上記プロセスが、そっくり繰り返されているのは、わかるだろう。現代日本に引き直すと、(1)アジア諸国の発展と日本製造業の退潮、
アジアの国際貿易ハブの地位喪失、(2)工場の海外移転と国内空洞化、TPPに至る貿易協定、金融機関の国債保有拡大、
株式市場と不動産市場の隆盛、(3)首都圏在住の高学歴者による世論支配、秀才の医学部傾斜、公務員人気、財界の保守化、政界の世襲化・右傾化、電通・キー局・大芸能事務所など
寡占勢力による大衆文化主導、(4)オリンピックや防衛支出拡大等のポトラッチ型政策への注ぎ込み、大企業の政商化、企業や富裕層への減税・免税、貧困層への増税、
株主資本主義、タックスヘイブン。経済活性化と銘打った逆進的な財政再分配、そして貧富の格差拡大。ピッタリと外さずに辿っている。

では(6)国家デフォルトや対外戦争敗北はいつ来るだろうか。もちろんわからないが、着々と近づいていると思う。これからますます、パイが小さくなり続け、富裕層は経営改善とかバリューアップとかコーポレート・ガバナンスとか法人減税とか財政難とか消費増税とか
雇用規制緩和とか福祉削減とか言いながら、自分の取り分を貧困層からどんどん奪っていく。なけなしの財政資金は、身の丈に合わないギャンブル的野心を反映させた政策のために使っていく。人も活力もなく、ダラダラ下がり続けたあと、さてどうなることか。